突入
「それじゃあ思いっきりやっちゃっていいのかな」
相馬がやる気のない口調で言う。
「ええ。地下への穴を開けて」
楓が言う。
巨大な駐車場の端に、突入部隊と捕縛部隊が集まっていた。
相馬は空を飛び、銃を構える。
その瞬間、銃の口径が巨大になった。その中心にエネルギーが集まり、巨大な光が地下へと走った。
私は悪寒を覚え、相馬を抱えてその場から離れた。
地面から、巨大な光が跳ね返されたように空へと走っていった。
「反射結界?」
楓が、戸惑うように言う。
「今のは危なかった。ありがとな、ソウルキャッチャー」
「いえいえそれほどでも」
「どうする? 裏口を探すか?」
言ったのは、特務隊のリーダー格だ。
「大丈夫。私に考えがあります」
楓はそう言うと、相馬に向かって手を上げた。
「相馬ー。反射されたのは地下何メートルぐらい?」
相馬は、しばし考え込んだ。
「三百メートルってとこかな」
「なら、余裕ね」
そう言うと、楓は地面に手を触れた。
ただでさえ低い周囲の気温が下がっていく。
そして、穴は氷で埋まった。
「もう一回、撃ってみて」
「一日五発が限度だ。無駄撃ちはできんぞ」
「大丈夫。突破できる。私と私のアーティファクトを信じて」
相馬はしばらく考え込んでいたが、諦めたように溜息を吐いた。
「嬢ちゃん。また俺を抱えて移動してくれるか?」
「お安い御用です」
私はそう言って胸を叩く。
私は相馬の背後に回って、その両腰に手を添えた。
相馬は銃を構える。
近い分よくわかる。物凄いエネルギーが銃口に集まっている。
そして、光は発射された。
私は慌てて、相馬の体を引いて移動する。
光は、反射されなかった。
「突入部隊、各自飛行能力者の支援を受けて突入! 一人たりとも逃すな!」
楓が言って、各々突入を開始した。
「どういうマジックだ?」
相馬は戸惑うように言う。
「相馬さんが知らないものを私が知ってるわけないですよ」
そう言って私は苦笑した。
(恵梨香。待ってて……)
突入は順調に進みつつあった。
第四話 完
次回『役割分担』
本日の更新はここまでとなります。
第二十章は九話構成になります。




