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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十章 物部恵梨香奪還作戦(第四部最終章)
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恵梨香奪還作戦

「今回の作戦は茨城県警の特務隊との共同作業になります」


 楓が地元の面子に説明する。

 六人の戦士が、楓の背後にいた。


 対する楓組は、私、楓、相馬、恭司、シンシア、アラタ、大輝の七人。

 アラタの視線の先には、一人の女性がいた。

 若い女性だ。二十代前半だろうか。腰に西洋の剣を帯びている。


 その手が剣に向かい、楓目掛けて振り抜かれようとした。

 私は慌てて楓を抱え、空を飛ぶ。

 アラタは抜刀しかけて、動きを止めた。


 女性は、そもそも剣を掴んでなどいなかった。ただ、持ち手に手を添えただけだ。


「やりやがったな、吹雪」


 特務隊の一人が苦い顔で言う。


「勘がいいのがどれだけいるかなって思ったんですよ」


 そう言って、女性は鈴を転がしたように笑う。


「尋常じゃない殺気がしましたけど」


 楓がしかめっ面で言う。


「すいません、こいつの癖なんです。相手を試すというかなんというか……」


 特務隊のリーダー格らしき男が申し訳なさげに言う。


「今の殺気、尋常なものじゃない」


 そう言って、アラタは鞘に収めた日本刀の持ち手に手を乗せる。


「一手、ご教授願おうか」


「面白い子ですね。殺気を感じてさらに戦いたいなんて子珍しいですよ」


「やめやめやめ!」


 二人の間に、私の腕から飛び降りた楓が入る。


「決戦前に無駄な消耗はやめましょう。行きましょう。敵のアジトへ」


 十三人が頷いた。

 そして、私は思う。

 彼らはエリーを奪還した。

 ならば私は、恵梨香を奪還するまでだ。



+++



 まだ幼い剛が穴を掘っている。

 恵梨香の泣き声が周囲に響き渡っていた。

 私は布に包まれた猫の遺体を、剛の作った穴に入れた。

 剛は土をかけていく。


 三人で可愛がっていた野良猫も、越冬はできなかったらしい。

 ある日、冷たくなっているのが発見された。

 それを、埋めている最中だった。


 恵梨香は泣き止まない。

 剛はその肩を、抱いた。


「俺と翠がいるだろ?」


「けどあの子は帰ってこないんだもん」


 恵梨香は泣き止まない。

 幼い日の思い出の一ページ。


 そして、エリーは目を覚ました。

 剛は死に、翠は敵となった。

 一人だ。


 できるならば、あの猫のように自然と共に死んで、自然と共に埋められたい。

 そんな願望がある。

 ここは、エリーが所属している超越者集団パンゲアの地下施設だ。


 寝ぼけ眼を擦りながら、着替えてロビーに出ると、ざわついているのがわかった。

 顔なじみが、少し困ったような表情で近寄ってきた。


「お客さんだよ。招かれてないね」


 ロビーに設置されたモニターに視線を移す。

 そこには、刑事らしき面々が十数人集まっていた。


「面白い!」


 アラタと武器無しで戦った真一が、大声で言う。


「これでこの基地が不動のものだと天下に示そうぞ!」


(そう上手くいくといいけどね……)


 エリーは表情を曇らせる。

 考えもなしに、来るわけがないのだ。

 そして、監視カメラに翠が映っているのを見て、エリーの表情はますます曇る。


(翠。私達はどうあっても敵になる運命らしいね)


 そう思い、エリーは手にアーティファクトの錫杖を呼び出し、地面を突いた。

 エリーの上半身に様々なアーティファクトの装飾品が飾られた。

 その一つ一つが、エリーに力を与えてくれるのだ。


 決戦は、近づきつつあった。



第三話 完

次回『突入』

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