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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第二十章 物部恵梨香奪還作戦(第四部最終章)
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愛の形

 暖かかった。

 春かと思うほどに暖かかった。

 誰かの膝枕で寝ている。

 膝枕をしてくれている彼女は微笑み、こちらの頭を撫でる。


 相馬は体を起こして、彼女の体を抱き寄せ、そしてキスをした。

 唇を離しても体は離さない。

 そのまま、温もりの世界にいられる気がした。


 そこで、目が覚めた。

 現実でも相馬は膝枕をされていた。

 反対側の足では、有栖が膝枕をされて寝転がっている。

 足の主に視線を向けると、楓と目があった。


 どうしてこんな状態になったか。

 有栖がまた純真なお願いをしたのだろう。

 しかし、今ここでそれを問うのは野暮だ。


 相馬は体を起こすと、楓の腰に手を回して抱き寄せ、唇を奪った。

 楓は目を丸くしている。

 そのまま、相馬は楓を包み込むように抱きしめ、後頭部を撫でた。


「ちょ、ちょ、ちょ、なに?」


「色気のない奴だな。今から押し倒してやろうというのに」


「ちょ、困る。有栖ちゃんもいるし、ゴムだってないでしょ」


「じゃあ、条件を満たせばいいわけだな?」


 楓の後頭部を何度も撫でる。

 楓はしばらく何かを考え込んでいたが、そのうち蚊が鳴くような声で答えた。


「うん」


「よしきた」


 そう言うと、相馬は有栖を抱き上げて、布団に寝かせた。

 有栖が薄っすらと目を開ける。


「有栖。パパとママは仕事で出かけるから、いい子で留守番できるな?」


「うん。なにかあっても、ドラコがいるから大丈夫だよ」


 有栖は眠たげな瞳で微笑む。

 その顔に、節子がダブって見えて、相馬の胸は傷んだ。


「それじゃ、行ってくる。行くぞ、楓」


「う、うん」


 俯きがちの楓がついてくる。

 そして、二人は自動車に乗った。

 肉体的には、充実した時間だった。

 けれども、精神的には課題が残る一晩だった。



+++



 私こと斎藤翠は晩御飯の具材を買って恭司の家へ向かっていた。

 恭司との付き合いも長くなってきて、互いに地が出てきて、これも交際するということなのかな、と思う。

 恭司の部屋の前に辿り着き、ノックをする。


「こんばんはー」


「ああ、入ってくれていいよ」


 部屋の扉を開けて入る。

 女の声がした。


「ねえ、なんか女の子の声がしない?」


「あー。ユーチューブ見てるからな」


「ふーん?」


 怪訝に思いながらも恭司の部屋に入っていく。

 二次元の女の子が画面の中で愛嬌を振りまいていた。


「その子、好きなの?」


「気に入ってるね。一緒に見ない?」


「どんな人なの?」


「そうだなあ」


 そう言って、恭司はブックマークを開いた。

 なんと、数十のタイトルが視界に広がった。


「これなんて入門にいいぜ」


 そう言って、恭司はタイトルをクリックする。


「恭司ぃ」


「なんだ?」


「その趣味、やめて」


「やだ」


 即答だった。

 私は具材を恭司に押し付けて帰り、セレナにもてなされてしばし考える。


「私って面倒臭い女かな?」


「んー……私も嫌だったと思うからなんとも言えない」


 そんな調子で、日々は過ぎていくのだった。



第一話 完

次回『愛の使徒』

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