力を得るほどに
どうしてだろう。
力を得るほどに、親しいものを失っている気がする。
あまりにも眠れないので、寝酒を買うことにした。
夜風を切って、外を歩く。
夜は優しい。
それは、一日の終りだからそう感じるのかもしれない。
宿題も、課題も、この時間には終わっていた。
だから、この時間は自由の象徴なのだ。
コンビニの前で座り込んで、アイスを食べて帰った。
帰ると、セレナが血相を変えた表情で飛び出してきた。
手にはスマホがある。
ああ、そういえばスマホを置いて出ていたなと思い出す。
「スマホ鳴らしたら隣の部屋から着信音がした」
「うん」
「スマホぐらいきちんと携帯してよ」
「うん」
今は口答えする元気もない。
セレナが、私の胸ぐらをつかんだ。
「あんたの力で守るんだろ?」
忘れていた。
両親と別れた時に誓ったこと。
「せめて私と自分の友人ぐらいは守りなよ、母さん」
「……ごめん。頑張る」
セレナは苦笑すると、手を離した。
「頼むぜ、ソウルキャッチャー」
「うん。期待してて」
「よく言うよ」
二人して、笑う。
穏やかな空気が、家には戻り始めていた。
そう、この力は守るための力。
けして呪いなどではない。そう自分に言い聞かせた。
第十九章 完
次章に続きます。
今週の更新はここまでです。




