表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十九話 エリー奪還作戦
248/391

道を違えた時

「まあ色々あったみたいだけど、私戦闘らしい戦闘してないのよね。完全な陽動だわ」


 外から帰ってきた楓は、私にぼやくようにそう言ってポッキーをかじると、自分の席で足を組んだ。


「大変でした」


「まああんたもアラタもよく頑張ったよ」


「結果はついてきませんでしたけどね」


「そういう日もある」


 沈黙が漂った。

 私は言いたいことがある。

 しかし、それは言い辛いことだ。


「どうしたんだい? 話があるなら、聞くよ」


 そう、楓は何時になく優しい声で言う。


「幼馴染だったんです」


「えーっと、エリーって子か」


「ええ。好きな子と二人きりにしてくれたり。色々仲良く遊びました」


「今じゃ立派な活動家だ」


「それが、わからないんです」


 私は、必死に、紡ぎ出すように言う。


「どうして、こうも、人はすれ違うのか。上手く行かないのか」


「生きてるからさ」


 楓は、淡々と言う。


「争うから仲直りができる。すれ違うから合流ができる。明日は雨でも明後日は晴れるかもしれない」


「それでも雨が振り続ければ?」


「耐えるだけさ。生きるってのはそういうことだ。生半可に屋根を立てたって台風には敵わない」


「敵わないな」


 私は少し目眩がして、背をロッカーに預ける。


「大変だぞ」


 楓は、遠くを見るようにして言う。


「殺さないように戦うのって」


「今までだって、ボスを除いて私はそうしています」


「けど、今回ほど傷つけ辛い敵と戦ったこともなかったじゃろ」


「それは……まあ」


「あんたまで取り込まれるのが最悪の結末だ。精々善処するんだね」


「気楽に言ってくれるなあ」


「本当に警戒するならあんたのスキルを奪ってばらして刑事に分け与えているよ」


 思わず黙り込む。尤もだと思ったのだ。


「まあ胸を張りなソウルキャッチャー。あんたには何人もの味方がいる。私も、その一人だ」


「……やれるだけのことはやってみます。あと、エリーがああなった理由、調べてもらっても?」


「ああ、やってるよ」


「ありがとうございます」


 そう言って、私はその場を離れた。

 話して、少し体が楽になっていた。



第九話 完

次回第十九章完結『力を得るほどに』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ