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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十九話 エリー奪還作戦
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脱走

「元気ないね」


 晩御飯の最中に、セレナにそんなことを言われて、私は驚いた。

 普段通りに振る舞っているつもりだったからだ。


「わかる?」


「わかるよ。雰囲気の違いぐらい」


 優しい子だな、と心の中で感心する。


「ちょっとね、幼馴染と色々あって」


「幼馴染かあ」


「あなたにとってはシンシアちゃんとかね」


「あいつ強化されたらしいね。妬ましいぜ」


 そう言って、セレナは箸を上下に揺らす。


「そういいことばっかりじゃないわよ。力を得ても……」


「けど、あなたの力があるから私はあなたの傍にいることを許された」


「そうね」


 苦笑するしかない。年下の少女に励まされている。


「ねえ、その外見いつまで続けるの?」


「……戻り方がわかんないのよ」


「そう……」


 少し間の抜けた沈黙が場に漂った。

 二人は黙って、食パンに口をつけた。



+++



 アラタは警察署にいた。

 なにやら大規模な超越者の動きがあり、念のため手薄になるここを守ってほしいと楓から頼まれたのだ。

 嫌な予感がした。

 息が苦しくなるような違和感。

 予知に近い衝動的な逃げ出したさ。


 アラタは唱えた。


「フォルムチェンジ!」


 その瞬間、アラタは白いフルフェイスのヘルメットをかぶり、白いスーツに身を包んだ戦士となる。


「どうしたの?」


 隣りにいる響が不安げに言う。

 勇気も、戸惑うような表情だ。


「悪寒がする。もしかすると、ここは戦場になる」


「……私はどうすればいい?」


「俺と勇気から離れるな」


「了解」


 響は淡々と、指示に従った。

 その時、天井から光が差した。

 天然の光ではない、作られた光。


 それが円を描くと、穴が出来てそこから男が降りてきた。

 男の胸には、大きな金色のプレートがあった。


「王剣アラタか。これはハズレをひいたかな」


「アーティファクトを装備しといてよく言うぜ! お前のスキルは、なんだ?」


「戦えばわかるだろうが、君は戦いたくないのではないかい? 後ろの二人は戦力外だろう?」


「だが、放置もできない」


「そうかい」


 男は剣を両手に呼び出し、握った。

 その威圧感に、アラタは一瞬飲まれた。


「勇気。響を連れて撤退」


「けど!」


「命令だ! 味方が多い場所に逃げろ!」


「……了解!」


「また、会えるよね?」


 それは、響の声。


「ああ、もちろんだ」


 アラタは微笑んでそう言った。

 負けるつもりは、そうそうなかった。



+++



 地下牢で、鍵が開けられようとしていた。


「まったく、厄介だ。スキルを阻む鍵とはな」


 男がぼやくように言う。

 隣りにいる男が、鍵を一本一本確かめていく。


「すいません、捕まってしまって」


 エリーは申し訳なさげに言う。


「なに。一人きりにした我々の手落ちでもある」


「見つけた、この鍵だ」


 鍵を調べていた男が言う。

 そこに、少年が一人現れた。


 少年は、フルフェイスのヘルメットとスーツに身を包んでいた。

 少年の体は返り血で濡れていた。

 担いだような長剣からは血が滴っていた。


 彼が一歩踏み出すと、体からヘルメットやスーツ、長剣が消えた。


「ああ。スキル有効範囲外か」


 ぼやくように言うと、腰の鞘から刀を抜く。


「その外見。裏社会でも有名だぞ。王剣アラタ」


「はた迷惑だな。目立つってことはそれだけ変な奴に目をつけられるってことだ」


「君がこういうシチュエーションで介入しなければいい」


「そうもいかないのが世の中でな」


 アラタは、剣を男に突き付けた。


「アラタ、参る」


 男は、両手にダガーを握った。



第七話 完





次回『三十六計』

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