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本来の歴史
「あれは本来の歴史では日の目を見ないはずのものだった」
そう、取調室でエリーは言う。
「伊達政宗公が残した賢者の石。天衣無縫の異名が信頼感となって、あれは表に出た」
「それを奪うチャンスだと?」
「それもある。けど、それ以上に警察と反抗勢力の差を広げたくなかった」
エリーは淡々と喋っていく。
「本当に反抗勢力の人になっちゃったんだね……」
私は隣の部屋で、つい呟く。
恭司が私の肩を抱き寄せた。
「十数年生きてりゃ色々あるさ」
「聞いているでしょう? 翠」
エリーは叫ぶように言う。
「超越者は一般人の手先に管理されている。この現状を許すの?」
「そんなことよりも、私は平和な日常を大事にしたい」
呟くが、位置的にも内容的にもエリーには届きそうもない。
そして、その日、私は警察署を後にした。
幼馴染が遠くに行ってしまったような寂しさを噛み締めながら。
第六話 完
次回『脱走』
投稿は明日になります。




