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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十九話 エリー奪還作戦
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肩書は重く

「というわけで、包囲はもう済んでいる。存分に暴れていいわ」


 楓からの説明を受け、私は眉間にしわをよせた。


「人質いるじゃないですか。それも私の同級生」


「優先順位を間違えないことね。一番はあなたが無事に帰ってくること。同級生の命は二の次三の次だわ」


 私は不平の顔になる。そして、口を開いた。


「それにしても監視カメラ。あれ、なんです? アーティファクトを体中に装備している」


「見ての通りね。アーティファクトはスキル強化の効果を持つ。そう簡単に倒せるとは思わないことね」


「……私への援護は?」


「……撫壁でも借りて来れば?」


「仕事でいませんよ」


「あいつも本業こっちにすればいいのにね」


 好き勝手なことを言う。


「まあ、わかりました。行ってきますよ」


 このままでは本当に恭司が転職させられかねない。


「本当に危ないと思ったら」


 楓の一言で、私は足を止める。


「助けを呼びなさい」


 私は苦笑して応じた。


「わかりました」


 これだから、この人の部下をやめられない。

 計算してそう思わされているのかもしれなかった。



+++



 エリーは、時間の流れを長く感じていた。

 翠が入店して、エレベーターを使ってこの部屋まで来る。

 それだけの時間が、やけに長い。


 なにか策を練っているのだろうか。

 そうも思うが、策を練るには時間が足りなすぎる。


 決着は正面衝突によって決まる。そう考えて良いだろう。

 そうなると、部屋をもっと広くしたいような欲求にかられた。


 椅子や机を、風のスキルで吹き飛ばす。

 それが終わった時には、広々としたスペースが周囲にはできていた。


「化物……」


 誰かが言う。

 エリーは微笑む。


「そう、私は化物。エレメンタルマスターのエリー」


 そう言って、彼女は徐々に強く笑った。

 どこか、自棄になっているような口調に聞こえたのは、気のせいかもしれない。


「いいえ。あなたは恵梨香だわ」


 扉が開いて、声が聞こえた。

 そして、幼馴染二人は対峙した。

 一人は炎のスキルに身を包み。一人は金色の装飾品に身を包み。


 エリーの髪がさらに金色に輝く。


「何故、とは聞かないわ。失神させて連れて帰る」


「さて。できるかしら」


「できるできないじゃない。するのよ」


 そう言って、炎を纏って翠は地面を蹴った。

 その速度に、エリーの思考は一瞬の遅れを見せた。


第四話 完

次回『格闘戦』

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