金色の戦士
「やらなければならないでしょう、エリー」
恵梨香の脳内で、記憶が弾け、広がった。
「あなたがやることによって我々は力を得る。虎の子のあなたを実戦投入する意味を考えなさい」
そして、恵梨香の意識は現在へと戻る。
恵梨香の目の前では、懐かしい面々が旧交を温めている。
恵梨香も微笑み、声をかけてきた相手に機械的に返事をする。
解散の時間が近づいてきた。
「二軒目行かない?」
声をかけてきたのは、小学校時代に仲が悪くて大嫌いだった相手。
「いいわよ」
そう言って、恵梨香は微笑んだ。
覚悟は、決まった。
二軒目はバー。そこで、恵梨香達は乾杯をした。
そして、その時、その場にいた者の運命が決まった。
氷が走る。それは、恵梨香を誘った男の両手足の自由を完全に奪っていた。
「恨みはないけれど」
そう、恵梨香は呟いて、小学校時代に思いを馳せる。
「やっぱり、恨みはあったわ」
そう言った恵梨香の体中に、金色の装飾品が現れ始める。目も金に染まり、服は純白の布となった。
金の錫杖で地面を突いて、彼女は言う。
「あなた達は斎藤翠が来るまでの人質よ! 大人しくしていれば命までは取らない!」
「そいつはどうなる」
級長をしていた男が、恐る恐る問う。
「氷漬けにしていたら凍傷になる。指を斬らなければならなくなるぞ」
「それもそうね」
そう言って、恵梨香は氷を手錠だけに留める。
体を覆う氷から抜け出せた男は、涙を流し始めた。
「さあ、誰か、呼びなさい。斎藤翠を。私に比肩する者を」
級長だった男が、スマートフォンを操作し始める。
そして、しばらくの会話の後、通話を切った。
「どうしてこうなった。恵梨香」
「その名前は捨てたわ。今の私は、エリー。力を欲する者」
緊張感が場に漂っていた。
恵梨香、いや、エリーは、その場を支配していた。
第三話 完
次回『肩書は重く』




