エレメンタルカラーズ
「お主は、何故」
声が聞こえた。
聞くことに集中しようとする。
しかし、敵のエレメンタルカラーズを回避するために空中を飛び上がると、その声は途端に聞こえなくなった。
なんだろう。
そう思いながら銃弾を放つ。
無駄だ。射線が読まれている。
そして、私に咄嗟の数秒で狙いを定めるような器用さはない。
「お主は、何故」
また、声がした。
マシンガンのけたたましい音が周囲に響き渡った。
動きを鈍くするスキルで無効化する。
そして、ワープを使い、敵の隣に移動し、光剣で首をはね、マシンガンを真っ二つにした。
(戦闘慣れしていない……?)
これは暴れられるか?
そう思った時、エレメンタルカラーズが飛んで来た。
慌ててワープで空中に逃げる。
私は、敵と味方、いつどちらが欠けるかわからない危うい綱渡りの上にいた。
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「久々に快眠した。いいものだな」
そう、大輝は言う。
敵が風のスキルを使う。
大輝は風のスキルで応じる。
巨大な風の刃が敵のスキルを飲み込み、敵を真っ二つにした。
「ついてこれるか?」
シンシアに問う。
「私は、ネガティブな発言しかしてないんですよ。ここんところ」
「で?」
「オーバードーズしてきました。遅れはとらないと思います」
大輝は目を伏せる。痛ましいものを見たかのように。
「一気に敵の本隊を叩く!」
「威力は?」
「全力だ!」
「了解!」
二人の風がシンクロする。
そして、暴風が巻き起こり、車体を、人を、切り刻み吹き飛ばしていった。
「……やったか?」
大輝は戸惑うように言う。
その時、シンシアは確かに聞いた。自分達のものではない声を。
「何故、君達は」
「……?」
シンシアは黙って、その声に耳を傾けた。
+++
相馬は戦った。
空を飛び、弾をかわし、銃弾を撃ち、出来得る限りのことをした。
しかし、多勢に無勢。
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。弾は数発被弾し、特殊弾丸は消耗していく。
それはさながら、徐々に相馬という存在が消えていくかのようでもあった。
(撤退してくれんものかな)
そう思う。
「ここにはもうすぐ警察が来るぞ。肝心の賢者の石も遠くへ行った。逃げたほうがいいんじゃないかな?」
銃弾が響き、弾が相馬の頬をかすめた。
「お前を倒してから考えさせてもらう」
「そうかい」
最悪だ。指揮官の頭に血が昇っている。
しかし、指揮官が誰かわかったならば、取る手は見えるように思うのだ。
相馬は一瞬で指揮官を狙い、撃った。
無駄のない流れるようなモーション。
それは、敵の指揮官を一瞬で撃ち抜いた。
次の瞬間、反撃の銃弾が山のように飛んでくる。
「君達は、何故……」
幻聴が聞こえた。
当たりどころが悪かったかな。
そんなことを考えて、相馬は地面に落ちた。
第五話 完
次回『六賢人』




