山吹楓対島津武豊
赤い結界の中に入る。
「五感を狂わせる私の結界にどこまでもつかな」
武豊はそう言って、宙に浮いている。
「無駄だよ」
私は言った。
「あんたの戦術は無能力者を前提にしたものだ。真に強い範囲能力者にはその力は通じない」
前回は内部に傷ついているかもしれない仲間がいた。けど今回は事情が違う。
武豊の表情が歪んだ。
「なら、見せてみろ! その、真に強い範囲能力とやらを」
「ああ、見せてやるよ。あんたの命を代償に……!」
手の中には、炎がある。
それを、一気に爆発させた。
結界が割れる。武豊は燃えながら吹き飛んで、絶壁の中へと飛んでいった。
そして、また絶壁が埋まる。
「氷のほうはイヤリングがないから今ひとつなのか」
相馬が歩いてきて言う。
「なんで炎使えるんだ? すげえ炎だったぜ」
英治が拗ねたように言う。
私は苦笑して、英治の手を取る。
「あなたの力はもっと強くなる。今みたいなことができるぐらいに。だから、自信を持って。あなたは、強くなる」
英治は黙り込んでいたが、そのうちひとつ頷いた。
何故、彼は死ななければならなかったのだろう。
そんなことを、思った。
そして、私達は歩き始めた。絶壁だった場所の向こうへ。
目的地は、そう遠くない気がしていた。
第六話 完
次回『接近』




