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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十六章 園部勇気は恋との上手な付き合い方を知りたい(第三部最終章)
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園部勇気とボディガード

「よう! 勇気、響、元気にやってっかー?」


 ホームルームが終わった途端、アラタが教室にやってきた。

 そして、響の机の上に腰掛ける。


「教室には馴染んだか?」


「今馴染もうとしてたのをアラタが邪魔したとこ」


 響は苦笑して、鞄から教科書を取り出す。


「アラタ先輩だ……」


「王剣、アラタか」


 ざわめきが起きる。

 どうやらアラタは学校の中でも目立っているらしい。

 それもそうだろう。次のインターハイの優勝候補だ。


「皆ー、こいつ俺の彼女だから手出したらしばくぞ」


 アラタは堂々とそう宣言する。


「ちなみにもう一人は彼氏いないから口説いてもいい」


 そう言って、アラタは机から尻をどかす。


「んじゃ、それだけだから」


 そう言って、アラタは去っていった。

 ボディガードが二人いるようなものだなあと私は思う。

 その後が大変だった。


「勇気ちゃんって彼氏いないの?」


「意外ー」


「モテそうだよね。背高くて凛としてて」


 凛としているのではなくて初対面の人が多くて強張っているのだ。


「部活はなに?」


「剣道部です」


「俺剣道部。手合わせしようぜ」


 そう言って、右斜め後ろの生徒が手を差し出してくる。

 それを握ろうとしたところを、他の生徒が遮った。


「勇気ちゃん、バレー部入らない? 背高いし、全国狙えるよ」


 自分には色々な選択肢があるのだな。そうと知れたのが新鮮だった。

 響の方は響の方で、女子に囲まれていた。

 転校初日はこうなるものなのかもしれない。




+++



「ちょっと面白い話聞いちゃった」


 響が悪戯っぽく微笑んでそう言う。


「面白い話?」


「アラタの隠れた努力の話。聞いてみたくない?」


「是非に」


「それじゃ、二年の階へ行きましょうか」


 そう言って、響は足音を殺して歩いていく。

 その動作が自然すぎて、私は驚いた。

 そして、真似て足音を殺そうとし、すり足のような不自然な歩き方となった。


 二階ではピアノの音がしていた。

 誕生日を祝う曲だ。

 それが、時々音を外しながら鳴っている。


 ホールから聞こえてくるので、二人して顔を覗かせた。

 アラタがピアノを弾いていた。


「あー、ダメダメ」


 そう言って女子生徒が、アラタの手に手を重ねる。


「そんなに強くしなくて、女の子をエスコートするように優しく。お祝いの曲なんだから」


「いや俺今暗記だけで結構一杯一杯」


「じゃあ数こなして慣れなきゃ」


 そう言って女生徒は、アラタの首に手を回して抱きつく。


「……スキンシップ過剰じゃね?」


 響が低い声で言う。


「ですね」


「抱きつく必要あるか?」


「ないですね」


 その時だった。

 アラタの背後に黒い霧に隠れた人影が現れた。

 人影は剣を振り上げ、下ろそうとする。


「危ない!」


 二つの声が、重なった。



第六話 完




次回『アラタ対霧の女』

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