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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十六章 園部勇気は恋との上手な付き合い方を知りたい(第三部最終章)
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園部勇気の日常における変化

「やあ」


 早朝のアラタ邸に行くと、ウォーキングルックに身を包んだ響が立っていた。


「傍にいたほうが安心だろうからな。一緒に行動してもらうことにした」


 そう、アラタは淡々と言う。

 ついてこれるかな、と思う。


「よろしくお願いしますね」


「こちらこそ。守って貰う立場だから、小さくなってるわ」


 そう言って、響は微笑む。

 笑顔の多い人だな、と思う。

 いや、きっとこの人は、この家の生活で、笑顔の多い人になったのだと思う。

 二人の絆を見せつけられた気がして、私の心は多少荒んだ。


 そして、走り始める。


「それにしてもなんだったんだろうな。身を隠すためだけに霧のスキルなんて取るかね」


 言われてみればたしかにそうだ。


「相手の視界を防ぐ風にも使えるかもしれませんよ」


「心眼の使いどころだな」


「なんです。また新技思いついたんですか?」


「いやな、五感を滅茶苦茶にされた経験があってな。その時、神経を研ぎすませて相手の太刀筋を読んだ。三度中二度は避けた」


「相変わらず師匠の土壇場における強さって人外じみてますね……それにしても」


 響に視線を送る。


「バテませんね」


 響は苦笑顔になった。


「鬼を吸収したことがあってね。大半は兄に取られちゃったけど、残滓が残ってるのよ」


 そう言って、響はペースをあげる。


「守られてるばかりじゃないのよ……それじゃあ、いけないのよ」


 覚悟を決めたように、響は言った。

 アラタもペースを上げる。そして、響の頭を撫でた。

 響が自分だったら、どんなに幸せだろう。

 そんなことを、つい思ってしまう。


 その時、前方に黒い霧が現れて、三人は歩みを止めた。


「王剣、アラタ。相手にとって不足はない」


 黒い霧の女性は、くぐもった声で言う。


「勝つつもりかよ」


「相打ちできれば上等ぐらいかな」


「それでも立ち向かうか」


「愚問」


 そう言って、相手は剣を構えた。

 似ている。

 アラタが硬直したのがわかる。

 相手の構えは、アラタによく似ていた。


 決戦が、始まろうとしていた。



第三話 完

次回『園部勇気は援護を図る』

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