夢
「今回の悪戯には吃驚しました」
苦い顔で、私は対策室の楓の席の前に来ていた。
「いい戦闘訓練になっただろ?」
「お使いクエばっかで萎え萎えです」
「そっか。修正案出しとく」
「まだやる気ですか?」
「まあ、ねえ。アラタあたりは免除してもいいんだけど、限られた条件下で戦える人材が少なすぎる。これは修行の一環としてこれからもやっていくつもりだよ」
「……楓さん、ドリームチケット事件で友達増えたでしょ?」
「バレた?」
「バレバレです」
そう言って、私は溜息を吐く。
「夢って不思議だよね」
楓は言う。
「思いもがけない展開になる夢もあれば、しっくりとくる夢もある。脳は不可解だ」
「本来は頭の整理をする時間ですよ。夢を奪わないでください」
「大丈夫。あんたらは当面免除だ」
「当面?」
「また、順番が回ってくるかもね。次はポートピア殺人事件なんてどうだろう」
「楽しんでますねえ……」
そう言って、私は深々と溜息を吐いた。
振り回されるのは今に始まったことではない。
けど、今日は口を酸っぱくして言うしかないだろうなと思った。
「私は夢が大好きだ」
楓は言う。
「絶対にできないシチュエーションも味わえるし、平和な世界も夢見れる」
「平和な世界は、夢ですか」
「ああ。皆が現実を夢にしたくて尻を叩いてくるのさ……そろそろ来る頃かな」
「縁起でもない」
私は、そう言って苦笑した。
楓も苦笑する。
開け放された窓からは、少し肌寒い風が吹いていた。
季節はそろそろ、秋になろうとしていた。
第十五章 完
今週の更新はここまでです。
次回は勇気の恋愛話か賢者の石を巡る戦いです。
どっちも最終的にはやると思います。




