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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十五章 偶像症候群/RPGなんて懲り懲りだ
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アイテムが集まらない

「あとリンゴ何個だ……?」


 相馬が疲れ切った様子で言う。


「二百三十四個ですね」


 そう淡々と言って恭司は樹を揺らす。


「長すぎなんだよこのクエスト! しかもお使いクエストだし!」


 相馬の怒りが噴出した。


「フリューゲル行ってライランド行ってフリューゲル戻ってアウスピア行って!」


「違いますよ。フリューゲル行ってアウスピア行ってライランド行ってフリューゲル戻ってもう一度アウスピアです」


 無感情にシスターが言って、木を揺らす。


「どっちでも似たようなもんだろ! しかも新しい街に行くたび情報収集に時間かかるし」


「昔は相馬さんもRPGやったでしょ?」


「歳取るとできなくなるんだよ。作品に没入できなくなるからな」


「そういうもんかなあ……」


 恭司以外の三人で愚痴を言いながら、なんとかリンゴ五百個が集まった。


「さあ、次でクエストは最後です」


 恭司が言う。


「お前三回ぐらい同じこと言ってないか?」


 相馬は手厳しい。


「もうRPGは懲り懲りだ」


 相馬はそう言って天を仰いだ。


「それにしても」


 恭司が呟くように言う。


「翠、プリーストなら筋力増強のバフスキルとかあるんじゃないの?」


「私はドラえもんじゃないよ」


 そう言って翠は肩を竦めた。



+++



 その日は、リンゴを魔法職人に渡し、宿で寝た。

 部屋で服を脱いで、洗濯しつつ体を拭く。

 洗濯物は水月が乾かしてくれるので安心だ。


「なんかやーな予感するんですよね」


 水月は呟くように言う。


「やな予感って言うと?」


「瑞々しいリンゴを加工して結界を張る精霊にお供えしたら終わりでしょう?」


「うん、そうね」


「一つは、魔王を倒さずに帰れるか」


「確かに、そこは問題だよね」


「もう一つは、魔王の封印は本当にできるのか」


 私はベッドに座って天井を仰いだ。


「本当だ。不安になるね」


「翠さんは余裕だなあ」


「なるようにしかならないからね。それに」


 私は言葉を続ける。


「これはゲームだ。それに、恭司がいる。死にはしないさ」


「そうですね。ソウルリンクされた覚えはないのですが、ゲームと考えるのが妥当でしょう」


「とりあえずゲームにソウルリンクした奴を殴る」


「楓さんだったら?」


 一番ありそうなセンだった。


「怒る」


「ふふ、楓さんには叶いませんね」


「とりあえずは明日だよ。明日、全てが終わる」


「ええ」


「これでまたお使いクエスト始まったら私はキレる」


「まあ、その時はその時です」


 気が長いなあ。

 流石は数年先の恋人を待っている人だと思う。



第九話 完

次回『魔王降臨』

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