純粋なる暴力
「アイスブリッド!」
「アイシクルエッジ!」
氷が糸目の男に襲いかかる。
しかし、その肉体にダメージはない。
「氷系と風系は無駄そうね」
楓は溜息混じりに言う。
「じゃあ、切り替えといきますか」
そう言って、相馬は空中で拳銃の弾を詰め替える。
「楽しいなあ!」
そう言って、糸目の男が飛び出してくる。
相馬が間一髪のところで楓を救った。
「ここなら好きなだけ人を殺せる。援護とかこねえかなぁ」
そう言って、糸目の男は巨木を折り、投げてくる。
それを避けた瞬間、糸目の男の体は相馬の横にあった。跳躍して相馬の位置まで飛んだのだ。
蹴り飛ばされ、木に叩き付けられる。そして、二人して地面に落下した。
「ヒーラーを先に行かせたのは失策だったかなあ……」
楓がぼやくように言う。
「珍しく弱気だな」
そう言う相馬の右手は、あらぬ形に曲がっている。
「あんた、その手……」
「左手でも銃は撃てるさ」
そう飄々と言うと、相馬は再び楓を抱いて空へと飛んだ。
「行くぞ」
「ええ。また、力を借りるわ。先に逝った、彼の」
相馬が銃を構えた。
楓が手を差し出した。
敵はまた跳躍してくる。
「ファイアブリッド!」
「エクスプロージョン!」
二つの火炎技。それは混ざり合い、爆発し、相手に甚大な被害を与えた。
「うう……痛い、痛い」
糸目の男はそう言って、地面を転がる。
その顔は、焼け爛れて原形がなかった。
「戦闘不能ね。急ぐわよ」
そう言って楓は駆け出す。
その腕を、糸目の男の手が掴んだ。
「油断したな」
糸目の男の歯が見える。
笑っているのだと、かろうじて分かる。
そして、楓の腕の骨が軋む音がした。
「油断してるのはおめーだろ」
そう言って、相馬は糸目の男の頭に銃を突き付けていた。
「やめ」
「トルネードブリッド」
血が周囲に広がっていき、楓の腕から糸目の男の手が落ちる。
「流石にこの距離なら効いたか」
「悪い、助かった」
「なに。弾代をもってくれるだけでいい」
「それは後で相談しましょう」
そう言って、楓は微笑んだ。
「さあ、行きましょう。二人が待ってる」
楓は再び駆け出す。
相馬は飛んで、その後を追った。
近づくごとに見える真紅の半円に、二人して戸惑いながら。
第七話 完
次回『炎と、氷と、剣と』




