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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十四章 離れれば寂しくて、近づけば痛くて(第二部最終章)
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その日、町が震えた

 その日、町が震えた。

 空は曇天になり、薄暗い大地を人々は進む。

 そして、人々を守る五芒星は巨大な逆五芒星、悪魔の象徴となっていた。


 楓のチームはすぐに招集を受けた。

 翠、大輝、青葉、アラタ、恭司、相馬、そしてセレナ。


 この場にいるセレナに、翠は怒っているようだった。


「薬、飲んだのね」


「……エレンは私が救う。これは、翠にもできないことだ!」


 翠は深々と溜め息を吐くと、セレナを抱きしめた。


「約束して。死なないって」


「うん。私毎日、翠と過ごしたら楽しいだろうなって、色々想像しながら暮らしてるんだ」


 セレナは翠を抱きしめ返す。


「絶対に、生きて帰る」


「じゃあ、チーム割りをするわよ」


 楓が言う。


「正面からは青葉、恭司、サポートに相馬と私。主戦力をここに集めるわ。西からは翠、大輝。東からはセレナ、アラタ」


「裏面からは?」


 翠が問う。


「特務隊が動いているわ。それに、警備隊も銃を持って内部に突入している」


「早く到着して援護に入らなければいけませんね」


「ええ、そうね。本人達が聞けば怒りそうだけど」


 楓の言葉に、翠は苦笑する。


「敵の戦力は未知数だわ。けど、未来によればここのゲートが開いたことによって各地のゲートが開く。正念場よ。全員、生きて帰るように」


「はい!」


「うい」


 相馬を除く六人は声を合わせて返事をした。

 そして、各々の突入経路に向かって移動していった。




+++




 正面を走る青葉、恭司、相馬、楓は、銃声を聞いて足を止めた。

 青葉と恭司が撫壁を展開する。


「このおもちゃじゃ足りないかぁ」


 そう言って、糸目の温和そうな男が銃を放り捨てた。

 その下には、五人ほどの警官の遺体がある。

 尋常な殺され方ではない。

 体を折られ、割かれ、血みどろになって倒れている。


 青葉は風の刃を生んで、飛ばした。

 それは、相手の服は斬ったが、肌に傷をつけることなく消えた。


「恭司、青葉、先に行って」


 そう言って、楓が先頭に立った。


「一刻を争う事態よ。主力が主戦場に辿り着けなかったら意味がない。こいつは、私と相馬が引き受ける」


「わかりました」


「死ぬなよ」


 そう言って青葉と恭司は駆けて行く。

 太い木の幹をへし折って、糸目の男は二人に殴りかかった。


 しかし、次の瞬間には男は氷漬けにされ、振ろうとした木は動きを止めていた。


「中央で待ってます!」


「ボスを倒してな!」


 二人は駆けて行った。

 糸目の男の力によって氷が割れる。

 やはり、身体強化系能力者のようだ。


「エレンと同じ氷の使い手か……面白くない」


 そう言って、糸目の男は、木を振り上げた。


「未来を少年に託して大人が道を開く。いい判断じゃないか」


 相馬がからかように言う。


「合理的に判断しただけよ」


 少し照れくさげに楓は返す。

 戦いが始まろうとしていた。




+++




 私は大輝と駆けていた。尋常な速さではない。鬼の力とドラゴンの力を吸収し、二人の身体能力は人知を超えたものへと強化されていた。

 相手は、空に浮いていた。

 そして、手を大きく振った。

 風の刃が放たれる。


 二人でバリアを展開して、しのぐ。


「シンシアちゃんね」


 翠は淡々とした口調で言う。


「エレーヌもセレナもあなたがそんな組織と手を切ることを祈っている。私達に、投降しなさい」


 シンシアは返事をしない。指揮者のように手を振り、風の刃を産み続ける。


「バリアがもたねえぞ」


 大輝が言う。


「……戦うしかなさそうね」


 私は溜め息を吐いて、そう言った。




+++



 セレナは、アラタと駆けていた。

 そして、外灯の下で、彼女の姿を見つけた。

 近づきたかった者。けど、近づき難い者。


 エレンが、氷の剣を持って、二人を待ち受けていた。



+++



 武豊は上空から全てを見ていた。

 足元のゲートは開き始めている。

 警察の第一波さえ凌げば、開ききるだろう。


 鼻歌を歌って、武豊はその時を待つ。





第五話 完


次回『風の刃の猛攻』

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