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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十四章 離れれば寂しくて、近づけば痛くて(第二部最終章)
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私、養子とるわ

 恭司は久々の翠とのデートを楽しんでいた。

 行き先はショッピングモールの映画館。

 ポップコーンを買って、二人で食べながら映画を見る。


(案外食ってる音しないもんだな)


 隣の翠から音が聞こえてこないのでそう思う。

 映画館を出ると、レストランに入った。


「本当、この手のショッピングモールの天下だね、今は」


「ここまでこないとなにもないからなあ。映画館とか個人経営の本屋とかどんどんなくなってるよ」


「古き良き時代よさらば、か」


 翠はそう言って、頬杖をついて周囲を眺める。

 その口が、開かれた。


「養子、とろうと思うの」


 恭司は頭が真っ白になった。

 それは話が飛躍し過ぎではないだろうか。

 恭司と翠は結婚すらしていないのだ。


「もしかして子宮癌とかか?」


 恭司は思わず、腰を浮かせた。


「いやいや、違うの。選ばれし子供達」


「ああ……」


 恭司は座り、そしてしばし考えて、また腰を浮かせた。


「俺への相談は?」


「事後報告になるけど今してる。というか」


 翠は、そこで言葉を切る。

 そして、歯切れ悪く言葉を続けた。


「恭司との結婚も、どうかと思ってる」


 恭司は対応を考える。内心の苛立ちと戸惑いを隠しながら。


「どうしてだ? 俺とお前で組んでいろんな敵を倒してきただろう?」


「私の傍にいるというのは、デメリットが伴うわ」


 翠は、視線を逸して言った。


「父と母も戸籍を変えて別の県に移ったわ。危険なのよ、私は。とてもオススメできない」


「それでも俺は、翠が好きだ」


 翠が目を丸くして、恭司を見た。


「……間髪入れずに答えたね」


「本音だからだよ」


 恭司は手を伸ばして、翠の手を取る。


「俺の手は、君と繋ぐためにある。君と手を繋いで、人生を生きたい」


「それが、どんな危険なものであったとしても……?」


「ああ。俺は迷わない。君が隣りにいるのなら、最後の最後まで笑って終えてみせる。というかな」


 恭司は溜息を吐く。


「最近事件が続きすぎて感覚が麻痺してるのもある」


 翠は小さく笑う。


「駄目じゃん」


「駄目なんだよ」


 恭司は苦笑する。


「けど、この気持ちは一時の迷いなんかじゃない。愛してんだ」


 恭司の手に、翠はもう片方の手を重ねた。


「ありがとう。恭司が私の恋人で、本当に良かった」


「そう言ってくれる人が相手で、本当に良かった」


 二人は手を重ねたまま、しばらく黙り込んだ。


「結婚、するか?」


「この騒動が終わったら、考えてもいいかもね。石神の野望も、これで潰える」


「そうだな……まずは、この事件を終わらせることだ」


 料理が届いたので、二人は手を離した。

 その後は、関係のない世間話をして楽しく過ごした。



+++



 エレーヌは隣の独房に声をかける。


「セレナちゃんは本当にエレンちゃん達と戦うの?」


「ああ」


 セレナは淡々と答える。


「あいつら、あのままじゃ一生道具として使い潰されるだけだ。俺が助けないと」


「けど、薬も弱いのに変わっていって、私達の魔力も落ちてきてるよ」


 それはエレーヌが体感していることだ。

 今まで自然にできたことが、できそうにない。


「もう一度、元の薬を飲む」


 エレーヌは、息を呑んだ。


「それで、最後だ」


「そっか」


 そう言うしかなかった。


「凄いな、セレナちゃんは。自分の道を自分で決めている」


「あんただってそうだろう。独房から出た後のプランは考えてるんだろう?」


「私はまだ里親が決まってないからね。動けないよ」


「……そっか」


「エレンちゃんに会ったら伝えて」


「なんだ?」


「ありがとうって」


「直に会って言えよ」


 セレナの言葉に、エレーヌは戸惑う。


「俺は、あいつらを救うんだ。これから、何度でも会える」


 エレーヌは微笑んだ。

 セレナの言葉は不思議だ。聞いていると勇気が湧いてくる。

 彼女の言の葉は根拠のない自信が元だ。

 けど、それでも、人を励ます力を持っている。


「わかったよ。セレナちゃん、エレンちゃんとシンシアちゃんをよろしくね」


「ああ。承った」


 セレナの言葉に、エレーヌは微笑んだ。



第二話 完


次回『アラタと大輝が考える敵の戦力』

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