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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十三章 悪魔との契約
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決意

「これは僕の仕事の範疇じゃありませんね」


 五芒星の一角で、青葉は楓に言った。


「そっかあ、無理かあ」


「まるごと破壊することはできるかもしれません。けど、五芒星の結界は向こう十年ははれなくなりますよ」


「それは困るなあ……」


「では、子供が泣くのでこれで」


 そう言って、青葉は宙へと浮いた。


「ありがとうね。水月によろしく言っておいて」


 そう言って、楓が手を振る。


「わかりました!」


 教会に帰ると、丁度聖歌隊の歌声が聞こえているところだった。


 水月は赤子を抱いて、席に座っている。

 その隣に、座った。

 反対隣には、葵がいて、少し嫌そうな顔をしていた。


「音楽、聞かせてたんだ」


「胎教にいいかと思って随分前からね」


「しかし、上手いね。ホームアローンだとこの後全員コケるんだけどな」


「……それを期待しちゃいないでしょうね」


「してないよ」


 苦笑して返す。


「疑問に思うことがあるんだけど」


 葵が渋い顔で言う。


「なあに?」


 水月は、優しい表情で返す。


「なんで赤ちゃんの名前が青葉なんだ? でっかい青葉もいるしややこしいぜ」


「うーん、それは……ねえ?」


 そう言って、水月は苦笑して僕に振る。


「俺に振らないでくれるかな。水月は俺に恩がある。それがあって名前を貸したんだ」


「ふうん……」


 葵は疑わしげに二人を見ている。

 これはよくない傾向だな、と思う。

 自分が存在することで葵の中にある水月への憧憬が消えてしまったら。

 水月と結ばれる未来は存在しなくなるのだ。


「葵」


 青葉は、深刻な口調で言った。


「全てを知る覚悟はあるか?」


 葵は考え込む。


「ないよ。けど、ちっさい青葉は俺と水月で育てる。お前はお邪魔虫だ」


「そうか」


 青葉は苦笑して、その場を後にする。


(あの調子なら大丈夫そうだな……)


 そう再確認して、安堵した青葉だった。




+++




「駅前の流行りのクレープ買ってきたわよ」


 楓はそう言って、独房に入った。


「依頼書は?」


「中々上が頭固くてね」


 そう言って、楓はクレープをセレナに渡す。

 セレナはがっつくようにしてクレープを食べた。


「豪快ねえ」


「翠もそう言ってた」


「翠も差し入れに来るんだ?」


「一日一回ペースで来てる」


「たいしたもんだわ。私はネットワークの中央になってしまったみたいで、中々身動きが取れない。薬、ちょっと弱くなったけど、禁断症状はない?」


「今のところは平穏無事です」


「そう」


「けど、薬が弱まることが魔力が弱まることに繋がるなら……私は、強い力を望む」


 楓は黙り込む。

 セレナは、楓を見て言った。


「戦わせてください。エレンと」


 楓はしばらくセレナを見ていたが、そのうち溜息を吐いて立ち上がった。


「弱いんだよなあそういう青春してる視線に」


 楓は去っていく。


「死ぬんじゃないわよ」


「はい!」


「殺すんじゃないわよ。心の傷になる」


「はい!」


 セレナは、握りこぶしを作った。

 エレンと正面からぶつかって再び友達になる。セレナの決意は堅かった。



第九話、完

次回『災いの地』

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