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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十二章 君と友達になりたいんだ
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選ばれし子供達

「先生は以前はなにをしていたと言っていた?」


「どこかの総合病院で、産婦人科医をしていたと聞いています」


 事情徴収を、ガラス張りの部屋で私達は見ていた。

 エレーヌは俯いて、話をしている。


「先生は、島津武豊?」


「ええ、そうです」


「石神の同僚か……」


 大輝が吐き捨てるように言う。


「施設の暮らしでなにか決まりはあった? 薬を飲んだとか」


「はい。薬は毎日出ていました。ここに来てからもずっと」


「そうか……薬については副作用もあるかもしれないから、少しチェックをしないといけないね」


「ご迷惑をおかけします」


「先生はなんでゲートを開きたいかとか、聞いたことはある?」


「教えてもらったのは、もっと超越者が必要とされる世界を作ること。それ以外はわかりません。私達は、選ばれし子供だったので」


「選ばれし子供?」


「施設の外に出ることを許された、適合率が高い子供です」


「施設には子供が沢山いた?」


「二百人ほど。けど、訓練での不手際や薬の適応障害で何人も入れ替わってました」


「……人体実験、か。国が絡んでるかもしれないからやり辛いなあ」


 楓がぼやくように言う。


「薬の副作用なども出るんでしょうか」


 私は、不安の滲む声で言う。


「私達も遊んでたわけじゃない。石神の資料もある。絶対に薬を作り出してみせる」


「しかし投薬でスキルを強化とは、考えたもんだなあ」


 大輝が呆れたように言う。


「日本でも戦時中はやっていたことよ」


 楓は淡々とした口調で言う。そして、言葉を続ける。


「アメリカは投薬、日本ではアクセサリー。技術は二分化してるのね」


「できるなら」


 私は、恐る恐る口を開く。


「あの四人、全員救いたいです」


 楓は、悪戯っぽく微笑んだ。


「自覚が出てきたじゃない、ヒーロー。けど」


 そう言って、彼女は瞼を伏せる。


「その同情心が仇とならないようにね」


「はい」


 五人の敵の一人が投降した。

 残る敵は、後四人。




+++



 エレーヌは白いなにもない部屋に通された。

 監視カメラが常時エレーヌの行動を監視している。

 自分が欲しかった結末はこんなものではない。これでは施設にいた時と一緒だ。


 そう思って、少し不貞腐れていた時のことだった。

 翠が、部屋に入ってきた。


「やあやあ」


「さ、斎藤さん」


「翠さんでいいよ」


 そう言って、彼女はエレーヌの隣に座る。


「入っておいでー」


 その声に従って、二人の少女が部屋に入ってきた。


「勇気ちゃんとさつきちゃん。剣術強いんだよ」


「よろしく、エレーヌちゃん!」


 そう言って、勇気は数歩前に出る。


「君と友達になりたいんだ」


 エレーヌは眼を見開き、震え、そして涙を一筋こぼした。


「私も、あなたと友達になりたい」


 勇気は手を差し伸べる。躊躇いとともに揺れるエレーヌの手を、彼女はしっかりと握った。


「よろしくね、エレーヌちゃん」


 エレーヌの手にも力が宿る。

 二人の手はしっかりと繋がれていた。



第十二章 完

今週の更新はここまでとなります。

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