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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十二章 君と友達になりたいんだ
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一時休戦

 私は気晴らしに恭司を誘ってショッピングモールに出かけることにした。

 色々な店を見て回る。


 両親のことは何も言ってない。ただ、人が恋しくて恭司を頼った。

 恭司もそれぐらい察してくれればいいのに、と思う。


 その時、私は、予想外のものを目に止めて動きを止めた。

 母を拐った四人の少女が、服屋で楽しそうにはしゃいでる。


「恭司。撫壁の準備しておいて」


「ん、わかった」


 少女達は楽しげだ。まるで初めて買い物をするかのように、はしゃいでいる。


「シンシアにはこのコーデだって」


「違うわよセレナ。色の調和が合ってないじゃない」


「けど機能性がある。シンシアはどう思う?」


「私、服ならなんでもいいわ。作業着しか着たことがなかったから」


「やあ」


 私の一言に、四人は一斉に身構える。


「ここでやる? ソウルキャッチャー」


 赤髪の少女は言う。


「出る被害が大きすぎる。遠慮したいね」


 眼鏡をかけた黒髪の少女が前に出た。


「なら、一時休戦といきましょう。私達はあなたに干渉しない。あなたは私達に干渉しない」


「雑談ぐらいは許してよ」


「……好きにすれば」


 眼鏡の少女は、そう言うと、服選びに戻った。


「どうしてゲートなんて開こうと思うの?」


「それが、先生の望みだから」


 眼鏡の少女ははっきりと言った。


「そんなに先生が好き?」


「ええ、ずっと世話をしてくれた人だもの」


「島津岳を拐ったの、あなた達?」


 眼鏡の少女は黙り込む。答えているようなものだ


「もうやめにして故郷に帰りなよ。こんなこと、長くは続かない」


「私達には故郷はないわ」


 眼鏡の少女は、淡々と言った。


「それは、廃村になったとかそういう?」


「いいえ。私達は施設で生まれ育ったの。その中でも強い魔力を持つのが、この四人」


 私は彼女達が不憫になった。

 それは多分、超越者の実験施設かなにかなのだろう。

 なら、外に出るのは貴重な体験だ。


「じゃ、私、行くわ」


「ええ。休戦協定を忘れないでね」


「ついて来たら昼飯奢るけど? 外の料理」


 四人は、目配せして考え込んだ。


「それで私達を懐柔できるとは思わないことですね」


 そう言いつつも、眼鏡の少女はついてくる。

 恭司は、戸惑うように列に加わった。


「こいつら、誰?」


「今回の敵」


「は?」


 恭司は、素っ頓狂な声を上げた。


「ご飯奢る約束したから、なんか庶民的な店探してよ」


「ハンバーガーでいいんじゃないか」


「皆、ハンバーガーは食べたことある?」


「ない」


「ハンバーガーってなに?」


「やっぱりね」


 私は苦笑する。憐憫の情が徐々に心に染み込んでいく。


「じゃ、バーガーショップに行こう」


 そう言って、私は歩き始めた。

 四人は苦戦しつつも注文し、一生懸命ハンバーガーを口にし、終いにはおかわりをした。


(あれで太らないのは凄いなあ)


 私は頬杖をついてそれを眺めながら思う。


(まあ、それも若さか)


 そう思って、苦笑する。

 彼女達は、操られているだけだ。

 ならば、先生と呼ばれる男を倒さなければならないだろう。


 帰り道、私達は進路が別々になった。


「じゃあ、ここで」


 私は、淡々と言う。


「ええ。戦いに入ったら手加減はしないわよ」


 眼鏡の少女が、鋭い口調で言う。


「恐い、恐い」


 そう言って、私は歩き始める。


「なんだったんだ? 今の時間」


「自分達が壊そうとしている普通を、教えるための時間」


「普通?」


「彼女達は知らないのよ。普通に親や友達がいて、誰かと一緒に外で遊ぶような生活を」


 恭司は黙り込む。


「上手くいったらいいんだけど。そうもいかないだろうな」


 そう言って、私は前を歩いていく。

 その肩を叩かれた。


「なんでも背負い込むなよ」


「私は世界を守るヒーローだよ?」


 私は皮肉っぽく微笑んで言う。


「抱えてなんぼだ」


「不器用だよな、お前って」


「かもね」


 こうして、不可思議な一時休戦の時間は終わったのだった。



第九話 完

次回『エレーヌ』

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