作戦開始
場所は古城跡地。目的地は中央の草原。侵入経路は四ヶ所。
私の持ったトランシーバーが音を立てる。
「銃を持った影みたいなのが待機してます。どの入口でも」
偵察隊の報告だ。
「バリア能力者と範囲攻撃能力者は配置されてるわよね。どうとでもなるわ」
と楓。
「で、進軍の太鼓はまだかい? 大将」
「ええ、いいでしょう。全軍急襲。中央を目指して敵を蹂躙して!」
私達は駆け始めた。
バリアは私が張る。
大量の銃声がなり、カラスが飛んで行った。
大輝が手をかざす。
風の刃が荒れ狂い、敵を縦横無尽に蹂躙していった。
「弱体化したって聞いて心配してたけど」
アラタが呆れたように言う。
「十分俺達には脅威だよなあ……」
恭司が言葉を継ぐ。
そして、言葉を続けた。
「このまま敵を撃破していく。スピードを緩めないで」
「了解」
「わかったわ」
「わかりました」
四人は前進する。
+++
「あなたの欲しいものはなんですか?」
男が特務隊の前に立って問う。
「あなた方の欲しいものをなんでも具現化してみせましょう。例えばそこのお嬢さん。あなたはこのバッグが欲しいはずだ」
そう言った男の手には、バッグが握られている。
彼はそれを、無造作に投げてみせた。
女性がバッグを受け取る。戸惑いの表情で。
「じゃあ、俺が欲しいものをくれよ」
そう、リーダー格の男が言う。
「はい、一体なんで?」
「お前の命だよ」
そう言って、リーダー格の男は指先を前に向けた。
そこからレーザーが発射されて、男は物言わぬ死体となった。
「何秒のロスだ?」
「一分二十秒」
少女が答える。
「遅れをとることはなさそうだ」
そう言って、特務隊は再び駆け始めた。
+++
「なんで……?」
アラタは戸惑うように言っていた。
四人の前に立ち塞がったのは、剣と黒一色のスーツとフルフェイスのヘルメットを装備した男。
「やるらしいじゃないか、アラタくん。俺のコピー体を倒したとはな」
「コピー体だと?」
「我らがボスのスキルはコピー。それが全ての発端」
「そうかい」
「君の攻撃パターンはコピー体から読み取っている。溜めがなければ使えない技。実に非効率的だ」
「フォルムチェンジ」
アラタは呟くようにそう言っていた。
白銀のスーツとフルフェイスのヘルメットがアラタを包む。
「さあ、決着をつけようじゃないか」
黒一色の男が、剣を構える。
アラタは彼に飛びかかった。
その時現れた長剣。それは自分を主張するように自ら輝いていた。
黒一色の男の剣が折れ、スーツが斬られる。そして、そのままアラタは相手の心の臓を突いていた。
「悪いけど今俺達はピンチなんだ。溜めなんかなくても十分光の力は使える」
「ぐ……」
そう言って、男は地面に倒れ伏した。
「行きましょう。目的地は近い」
そう言って、アラタは駆け始めた。
+++
「呆気ないわね」
入り口の狙撃部隊を燃やし、楓は呟くように言った。
「ここからが本番だ」
そう、相馬が言う。
「私達の目的はあくまでもソウルキャッチャーズの援護。無理に攻撃しようとはしないで」
「了解」
三つの声が重なった。
楓達は堀の上の橋を渡ると、茂みの多い道を歩いていった。
その時、銃声が鳴った。
狙撃部隊は全員燃やしたのに、何故?
答えは簡単だ。一人、潜んでいた奴がいたのだ。
そして、楓は地面に倒れた。
相馬が反撃の一撃を放つ。
「ファイアブリッド!」
敵は燃え尽きて、消えた。
相馬の胸からは血が流れていた。
彼が自分を庇って撃たれてくれたのだ。そうと察した楓だった。
「これで憂いはないな」
相馬は脂汗を流しながら、ニヒルに微笑んで見せる。
大量の血が流れていった。
「治療、早く!」
楓の指示を受け、治療が開始された。
少し、他の部隊よりは遅れを取りそうだった。
第五話 完
次回『無駄であろうとも』




