表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十一章 ゲートは出現した(第一部最終章)
155/391

決戦前の僅かな時間で

「頼みたいことがある」


 あらたまって相馬が言うので、楓は戸惑った。


「この戦いに生き残ったほうが、有栖を育てる。そう約束してくれ」


 楓は苦笑した。


「死ぬならあんたじゃなくて、私さ」


「炎の盾があるだろう」


「それがね、予知されたんだ。青葉に。私はこの戦いで、頭を撃たれて死んだって」


 相馬は黙り込む。


「有栖ちゃんには、私が死んでも伝えないで。転勤したって言っといて。んじゃ」


「守ってみせる」


 相馬が言った。

 予想外の一言に、楓は振り向く。


「俺は勘が鋭い。俺が守ってみせる」


「期待はしてないよ」


 そう言って手を振ると、楓は自分の準備に戻った。

 不覚にも、胸がときめいていた。



+++



 アラタはスマートフォンで現状の説明を聞いて、真っ青になった。


「どうしたー? アラタ」


「師匠、休憩長いです」


 勇気とさつきが催促してくる。

 剣術の修行の途中だったのだ。


「ちょっと、用事ができた」


「対策室絡み?」


 さつきが問う。


「異世界へのゲートが開く。放置しておけばモンスターが町を闊歩するようになるらしい」


「なるほどね」


「私達もついていきます」


「お前達は留守番しておけ」


「なんでですか? レーザーだって、次元突だって、力になるはずです」


 勇気が食い下がる。

 アラタはしばらく考えて、苦笑した。


「対策室で待機だ。俺達が敵わなかったら、お前達に託す」


「了解しました!」


「ま、そこが妥当なセンね。私達、警察の信頼得てないし」


 と、さつき。

 響が道場に入ってきた。


「アラタ」


 事情はもう知っているのだろう。不安げな顔をしている。


「……大丈夫だよ。生きて、帰る」


 そして、二人は接吻をした。

 一度じゃ足りない。何度でも口づけをしたい。

 だから、生きて帰るのだと、アラタは決意を固めた。



+++



 恭司と私は、警察署の前で顔を合わせた。

 恭司はなんとも言えない表情をしている。


「チートだよ」


 そう、私はぼやくように言う。


「攻撃はバリアで阻まれるし空は飛ぶしテレポーテーションはするし。スキル使いの頂点みたいな奴だ」


「それと、今から戦うわけか」


 恭司は、情けない表情になる。


「今から、あなたにスキルを預けようと思う」


「スキルを?」


「多分、私じゃ石神の足止めはできない。アラタの一撃を確実なものにするために、あなたにスキルを預けたい」


「……死ぬ気じゃないだろうな?」


「まさか。私はまだ生きていたいよ」


 そう言って、私は恭司に抱きつく。


「テーマパーク行く約束、まだはたしてないからね」


「そうだな。ああ、そうだ」


 恭司は抱きしめ返してくる。

 二人はしばらくそうやって、抱きしめあっていた。



+++



 アラタの迎えの車に、大輝も乗っていた。

 運転手の楓に問う。


「ピークの能力を持っていない僕は、期待に応えられるでしょうか」


「わかってないわね。ピーク時じゃなくてもあなたは十分強いのよ」


 楓は穏やかに言う。


「それに、石神を見ればあなたの記憶も蘇るかもしれない」


 なるほど、そんな考え方もあるわけか。


「妹が暮らす町です」


 大輝は、自分に言い聞かせるように言う。


「僕が守ってみせます」


「そのいきだ!」


 そう言って、楓は大輝の肩を勢い良く叩いた。

 大輝は、決戦への決意を深めていた。



第四話 完

次回『作戦開始』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ