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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第十一章 ゲートは出現した(第一部最終章)
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平和は永遠には続かない

 私、斎藤翠は、こんな日常が続くのではないかと漠然と思い始めていた。

 ソウルイーター達は全員が能力を失うか、味方となった。

 残る敵は暗躍しているようだが、一人ではなにもできないだろう。

 平和は戻った。そうとすら思う。


 そうそう上手くいかないのが世の中だ。

 残る一人は最強のキング。

 一体で進軍してその後にはぺんぺん草も残らない。


 挑むはソウルキャッチャーズ。

 石神との最後の戦いが始まろうとしていた。



+++



「平和ですねえ」


 私は礼拝堂の椅子に座って言う。


「ええ、まったく」


 シスター水月は大きくなった腹を擦りながら言う。


「予定日は?」


「まだまだ先です。不安と期待が入り混じってる感じですね。私の模範となる母も先立ってますし」


「うちの母親に頼んでみようか?」


「うーん……」


 水月は顎に指を当てて考え込む。


「それは流石に申し訳ないかな」


「うん、我ながら図々しい提案だった」


「そんなこと、ないですよ」


 水月は微笑む。


「一人で育てるのも限界があります。きっと、色々な人に迷惑をかけるでしょう。けど、私は産みたいんです」


「……凄いなあ。すっかり母親になってる」


「まだ仮免許ですけどね」


 そう言って、水月は苦笑した。


「翠さんは結婚しないんですか?」


 意表を突かれて、私は目を丸くした。


「え? え? 私?」


「ええ。結婚願望はあるでしょう?」


「いやー、恭司と一日中一緒とかちょっと考えられないし。まだ保留かなあ。それに」


「それに?」


「元の生活に戻れてないしさ、私」


 沈黙が場に漂った。

 戦場に投じられて久しい。

 私の人生は、この先も血の色に染まっているのだろう。


「いいじゃないですか。時々休んでも」


「まあ、そうなんだけどね。先のこと、か……」


 吃驚するぐらいノープランだ。

 今の生活にも慣れつつある。

 人間の適応能力に、時々驚かされる。


「私も翠さんみたいになりたいですね」


 水月がからかうように言う。


「どんなさ」


「ピンチに颯爽と現れて皆を救う。そんなヒーローになりたいです」


「私もまだその域には達してないさ」


「ヒーロですよ」


 水月の声は穏やかだった。癒やされるような気分になる。


「私にとっては、ヒーローです」


「あー、やめやめ、この話題、やめ」


 そう言って私は手を振る。


「照れくさいったらありゃしない」


「ふふ。翠さんらしいですね」


 その時のことだった。

 巨大な気配を察して、私は腰を浮かした。

 感じられる位置は、かつて敵が逆五芒星を作ろうとした位置。


 水月も表情を強張らせている。


「ちょっくら行ってくる」


 そう言って、私は立ち上がると、その場を後にした。


「気をつけて。神は善なる者の味方です」


 水月の声が、背後から飛んできた。

 そして、私は空を飛んで移動した。

 今気配を察知した場所ではない。次に相手が狙うだろう場所だ。



第一話 完

第二話『届かぬ拳』

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