アラタ宅
そして僕は、その場所に訪れていた。
けして二度と迷惑はかけまいと思った場所。
アラタ宅。
僕はそこに、再び迷惑をかけようとしていた。
玄関の扉を開く。
「アラタくんいますか?」
「今、道場にいるから呼んできますね」
アラタの母が出てきて対応する。
すぐに、アラタはやって来た。
「よう、キャラチェンしたらしいじゃん。入ってけよ」
「うん、お邪魔します」
アラタは戸惑うような表情になる。
「お前、えらく丁寧になったな」
「挨拶をするのは人間の基本だよ」
「……なんか調子が狂うな」
そう言いつつ、二人は道場へと向かった。
二人の少女が木刀で戦っている。
それを眺めて、アラタは僕と並んで座る。
「響は?」
「留守中。友達と遊びに行ったんだって」
「そっか。それはいいことだ」
「んで、なんだよ。藪から棒に。来たってことは用事があるってことだろ?」
「以前の僕について知りたい」
「……そういや、記憶消えてんだったな」
「おもい総合病院でなにがあった?」
アラタは困ったように黙り込む。
「何故僕と響は生まれも育ちも違うのに兄妹なんだ?」
「知らないほうがいいこともあるってことだ」
アラタは、そう言って立ち上がる。
そして、僕に木刀を手渡した。
「結論として、お前は以前の強さを取り戻したいんだろう?」
「……まあざっくばらんに言えばそうなるな」
「なら、あの女の子二人には勝てるぐらいにならないとな」
少女達は今も目まぐるしく打ち合っている。
あの中に入るのか、と思うとげんなりとした。
+++
結局、アラタ宅で得られたのは筋肉痛と打撲だけだった。
(結構あいつって脳筋だよなあ。スキルの話とか教えてくれよ)
そう思いつつも歩く。
そして、思わぬ顔と出くわした。
「響」
「お兄ちゃん!」
僕の妹、響が、そこには立っていた。
第七話 完
次回『響け叫びよ』




