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苦い経験

 レーザーが飛び交い、服や装飾を破壊していく。

 それを避けながら、剣を持った青年が剣先から光波を飛ばす。

 惨状、としか言いようがない場面だった。


「んじゃ、止めてくれる?」


「僕、風系スキルしか使えないですよ。多分、傷つけちゃいます」


「……マジ?」


 美沙子が困ったような表情になる。


「マジです」


「ソウルキャッチャーは?」


「やり方が思い出せません」


「ふーむ……」


 美沙子は考え込んでいたが、そのうち飛んで来たレーザーを一歩横に移動しただけで回避すると、前進を始めた。


「こちら超越者対策室です。ただちに戦闘行為を停止しなさい。しない場合、公務執行妨害として厳しく罰します」


 駄目だ。相手はこちらの話を全然聞いていない。

 暴れるのに夢中といった感じだ。

 その表情には、自分の力を目一杯出し切った満足感のようなものまで見える。


「しゃーないなあ。大輝くん、援護よろしく」


 そう言って美沙子は地面を蹴ると、レーザーを放っている男を思い切りぶん殴った。

 物凄い跳躍力。

 回避しようと考えた頃にはすでに頭に拳が叩き付けられていただろう。


「まず一人」


 そう言って、美沙子はもう一人の男に向き直る。

 背を向けた。それが美沙子の作った隙だった。

 美沙子の腕に向かって剣が振られた。

 腕は切断され、中空を飛んでいく。


 しかし、美沙子は残った腕で相手の腹部を肘打ちし、悶絶させていた。


「しくったなあ……」


 そう呟いて、自分の腕を掴んで美沙子が戻ってくる。

 僕は慌てて、美沙子の腕を傷口につけ、治癒の光を放ち始めた。


「なんだ、できるじゃん。風系以外のスキルも」


「なんか、やってみたらできたって感じです。僕、本当に色々なスキル持ってるんだな」


 自分がなにかできたということが少し誇らしい。

 美沙子の腕は完全にくっつき、神経をつなげる段階まで向かっていた。


 駆け足が近づいてくる。

 対策室の面々だ。


「美沙子、怪我したのか?」


 男が心配そうに訊ねる。


「見ての通り。けど、こうして治療してもらってるから。倒れてる二人を拘束して、運んで」


「わかった」


 そう言って、男は倒れている二人の元へと走っていく。

 そして、僕は胸ぐらをつかまれて、数人に囲まれていた。


「あの巨大な腕はどうした、ソウルイーター。お前なら、美沙子を怪我させずに二人を気絶させるのは余裕だったはずだろう」


「いや、僕、記憶がないっていうか」


「都合のいい台詞だぜ。そう言っていれば自分の罪も許されると思ってるのか?」


「いえ……僕は、罪を犯した。仕事を通して、償いたいと思っています」


 美沙子が僕らの間に割って入る。


「治療の邪魔しないで。大輝くんはそれだけでも仕事をしてくれているわ」


 周囲の人間が黙り込む。

 そして、各々店の被害などを確認しに走っていった。


「……僕は、本当に邪悪な人間だったんですね」


 聞くたびに思い知らされる。自分がどんな悪人だったか。


「それは、これから君が償っていくしかないんだよ」


 そう、美沙子は優しい声で言った。

 僕は、少しだけ泣きそうになった。



第三話 完



次回『最強と元最恐』

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