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美沙子とのパトロール

 美沙子の運転でパトカーは走っていく。

 僕は助手席で小さくなっていた。


「あの……ありがとうございます。僕は孤立せずに済みました」


「いいのよいいのよ。私、運転するの好きなの。けど、いつも後部座席なのよね」


 そう言って、美沙子は微笑む。


「皆城大輝です。よろしくお願いします」


「私は柚野美沙子。よろしくね」


「美沙子さんはなんの超越者なんですか?」


「身体能力向上系かなあ。あ、けど私のスキル取らないでね」


「取りませんよ。っていうか……取り方がわからないっていうか」


「相当な記憶障害だね」


 美沙子が呆れたように言う。


「面目ない」


 小さくなるしかない。


「君は強かったよ」


 そう、美沙子は語る。


「あんなに対策室に被害が出たのはあれが初めてだった。つっても、私も一年しか勤務してないけどね」


 気まずい思いで、黙り込む。

 被害。

 僕は本当に、彼らと敵対していたのだ。


「ああ、悪かったね。元々大なり小なり被害はある職場だ」


「美沙子さんは怖くないんですか?」


「怖いよー」


 そう、美沙子は淡々と語る。


「けど、誰かがやらなくちゃいけないからね。君の力は、必ず私達の助けになる」


 心の中の氷が溶けていく。


「そうですね。僕、役に立つよう頑張ります」


「素直ね」


 感心したように美沙子が言う。


「なんですか?」


「もっと乱暴な人をイメージしてたから」


「それは、過去の僕です。僕は罪を犯した。だから、自分を変えたいんです」


「そっか。それは、いい心構えだ」


 その時、車のテレビの画面が変わり、室長の顔が写った。


「ショッピングモールで超越者同士が喧嘩してる。誰か向かえる?」


「私近いですよ」


 美沙子は淡々と語る。


「じゃあ美沙子達が第一波。他にも数台向かってほしい」


「あいあいさ」


 美沙子は、パトランプを起動させ、アクセルを踏み込む。

 早速事件と対面する羽目になったわけだ。



+++



「大輝くんが超越者対策室ですか」


 翠が感心したように言う。


「居辛そう」


 葵が苦笑交じりにそう言う。


「居辛いでしょうね」


 シスター水月はそう、穏やかな声で言う。

 三人は水月の私室で紅茶を飲んでいた。


「けどそれを越えれば自分の居場所ができます。ずっとできない人もいますけど、彼はそんな弱い人間じゃない」


「どうかなあ……記憶かなり削っちゃったからなあ」


 と、翠。


「俺、半年以内に辞めるに二千円賭ける」


「んじゃ私は一年続くに五千円」


「一年の後は?」


「また放浪」


「賭け事はあまり褒められたものではないですね」


 水月が困ったように言う。


「まあ、彼の実力があれば、すぐに居場所なんて掴み取れるでしょう」


 そう言って、シスター水月は紅茶を一口飲んだ。


「お菓子、ほしいですね」


「シスター水月にしては珍しい失態だね」


 翠は笑う。

 大輝の話題は、それで終わった。



第二話 完


次回『苦い経験』

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