その笑顔が絶えないように
翌日、大輝の部屋で、パーティーが開かれた。
水月も身重ながら参加している。
大輝は皆の登場に素直に感謝しており、その姿に戸惑う者も多かった。
「どうしたんすか、あれ」
アラタが私の袖を引いた。
「マイナスな記憶を全部吸い取った。そしたら素直な彼ができあがった。おしまい」
「ふーん……」
アラタは考え込むような表情になった。
「余計なお世話だったと思うかな?」
苦笑交じりにそう問う。
「いえ、そんなことないですよ」
アラタは居住まいを正してそう言う。そして、言葉を続けた。
「ただ」
そこで、アラタはしばし言葉を選ぶように考え込んだ。
「無謀な行動も、危険に身を晒す行動も、彼が負の感情に突き動かされていたからできたことだと思うんです。それができなくなったということは、敵から見れば怖くなくなったってことなんじゃないかなって」
それは失念していた。
町をうろつき警察に喧嘩を売っていたソウルイーターだった彼。
今の彼は、その時の姿とまったく結びつかない。
「まだ、どう転ぶかはわかんないんですけどね。捻くれてた彼も、俺は好きだった」
「……私も正直そうさ。けど、どっちが幸せかなんて、誰にもわかんない問題だと思うよ」
「ですね。社交性という点においては今の彼のほうが幸せそうだ」
大輝は皆に囲まれて笑顔でいる。
けして、その笑顔が絶えないようにと私は祈った。
第九章 完
第九章はこの話で完結です。
十一章で一旦今の話を終わらせようと思います。
その後の案はいくつかあるので十章と十一章を書いている間に形になればと思います。




