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迷いながらも進む

「やあ、来てくれましたね」


 青年は、ローブを脱ぎ、普段着で待っていた。

 場所は、巴と戦ったこともある、神社に繋がる階段の前だ。


「まだ胡散臭いとは思ってる。けど、あの時私が掴んだ肉体は本物だった……」


「大地の力を借りれば、復活のエネルギーが溜まります」


「そのために、各地に印をつける、だったっけ」


「そうなります。見つかりづらい場所に書きたいので、協力してもらいたいわけです」


 私はしばし考えた。

 胡散臭い。

 けど、言っていることの筋は通っている。


「オーケイ。協力しようじゃないの」


「それじゃあ、神社に進みましょう」


 二人して、長い階段を歩いていく。

 そのうち、境内に移動した。

 男は周囲を見回すと、一つの大きな岩を指差し、言った。


「抱えられますか?」


「ええ……いけると思うけど」


「それじゃ、持ち上げてください」


「はいはい」


 そう言って、ライオンが丸まったような大きな岩をどかす。

 青年はなにやら棒で地面に印を書くと、念じた。

 確かに、そこからなにかエネルギーのようなものが放出されているのがわかる。


「ありがとうございます。戻して大丈夫ですよ」


 言われるがままに、岩を戻す。

 今の一連の流れに、なにか違和感があった。

 けど、なにがおかしいのか、私にはまだわからなかった。


 その夜、恭司から電話があった。


「よう。最近どうだ?」


「んー……ちょっと新しい作業してる」


「作業?」


「地面に印をつける作業。儀式、って言うべきなのかなあ」


 昔惚れていた男のために活動する私。それを恭司はどう思うだろうか。

 胸が、僅かに傷んだ。

 今更剛とどうこうなりたいわけではない。

 ただ、償いたいのだ。


「またなんかややこしいことしてるな。楓さんも人使いが荒い」


「いやー。個人的なことなのよ。楓さんには黙っておいて」


「ん? そうなのか? わかった」


 絶対的に信頼してくれる恭司。

 その優しさに、私は甘えている。

 そうと実感した一日だった。



第三話 完

次回『足を止めるのを阻むように』

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