全ての黒幕
そして、俺達はビジネスホテルに辿り着いた。
車を道の端に止め、警察手帳を取り出してホテルの従業員に犯人の特定の手伝いをしてもらう。
その人物は、五階の一室にいた。
マスターキーを使い、扉を開ける。
そして、彼は肩を竦めた。
「いやはや、困ったものだよ。ソウルイーターを敵に回すと、こちらの戦力がどんどん吸収されていく」
俺と崖で話していた、細身な男だ。
顔には切り傷の跡が残っている。
「ドラゴンを食った感想はどうだい?」
「その前に、あなたは何匹のドラゴンを食ったの?」
翠の言葉に、俺は戸惑った。
しかし、すぐに理解が追いつく。
ドラゴンのような幻想種、異世界からしか連れてくることはできない。
つまり、石神の異世界へのゲートは、完成しつつある。
「鋭いね。その問いは素晴らしい」
そう言って、男は椅子に座って足を組む。
「ゲートはじきに開く。共通の敵を得て、この人間が人間に不満を抱く世界から解き放たれる世界へと」
俺は銃で相手の頭を狙い、撃った。
しかし、その時には既に男は煙のように消えてしまっていた。
黒幕との邂逅。それは、数分で終わったのだった。
第十一話 完
次回第八章大団円『誰もが主人公になれるのだ』




