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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第八章 俺は主人公って柄じゃねえ
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ソウルリンク

 楓は無事だろうか。

 無事ならば、帰ってきたはずだ。

 そんな馬鹿らしい自問自答を考える。


 俺は車でしばらく待っていたが、いつまでも楓がやってこないので、待つのをやめた。

 車を発進させる。


 有栖が、目を覚ました。


「大丈夫か?」


「私……私……そんなつもりはなかったのに」


 そう言って、有栖は泣きじゃくる。


「ドラゴンは私になついてて、けど、あまり頭が良くないから直情的な手しか使えなくて……それで……」


 有栖は、自分の膝を叩く。


「私のせいで、何人も死んだ!」


「相手に問題があるケースもあるんじゃないか」


「けど、死に値するほどではない」


「人を馬鹿にするってことは、殴られて当然のことをしているってことだよ。父さんも長い人生の中でそう学習した」


「けど……」


「有栖は悪くない」


 俺は断言する。親馬鹿だろうとなんだろうと、断言する。


「あのドラゴンをお前にリンクさせたのは、誰だ?」


「最初は、小さなドラゴンだったんだよ」


 有栖はぽつり、ぽつりと語り始める。


「けど、日に日に巨大になっていって、手に負えなくなった。ドラゴンの卵を譲ってくれたおじさんに言ったら、一心同体にしてあげるよって」


「まんまとはめられたわけだな」


「うん……」


「ひとつ勉強になったな。うまい話はそうそう世の中にない」


「そのせいで、何人にも迷惑をかけた」


 そう言って、有栖は腕を目に当てて泣き出す。


「まずはそのリンクを解こう。ドラゴンはリンクさえ解けば自由に移動するかもしれない」


「うん……」


 有栖は項垂れていた。


「楓さんは?」


「あの後違うチームに別れたから、わかんないな」


 大人になると、嘘が上手くなる。

 そんな醜い成長なんて、したくはなかったけれど。

 やはり、俺は主人公の器ではないのだ。


 俺と有栖は警察病院に辿り着いた。

 そして、巴の部屋へと行く。


 巴はギプスを付けた足を宙吊りにされてベッドに寝転がっていた。


「いやあ、情けない姿を見せて面目次第もない」


「いや。娘を庇ってくれたんだ。いくら感謝しても足りない」


「おいでなさい、娘さん。今、あなたを縛る術を解いてみせましょう」


 その言葉に従って、有栖は巴に近づいていった。

 巴の目が青く光る。

 スキルキャンセラーの能力を発動させているのだ。


 しばらくして、その輝きも消えた。


「ドラゴンとのリンクも、これで消えたはずです」


「ありがとう」


 名脇役になるのは難しい。

 主人公ならば自分で解決できるが、脇役はそうはいかない。

 翠、巴、そして楓。

 色々な人間に迷惑をかけた。


「帰ろうか、うちへ」


 有栖は涙目になって、俺の体にしがみついてきた。


「帰る資格があるのかな?」


「馬鹿野郎。親が言われて傷つく言葉が、死にたい系の言葉と、帰りたくない系の言葉だ」


 そう言って、有栖を抱き上げる。


「お前は、帰ってもいいんだ」


 有栖は涙を零しながら、一つ頷いた。



第九話 完

次回『脇役なりの全力にて挑む』

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