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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第八章 俺は主人公って柄じゃねえ
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状況整理

「ドラゴンの目を撃ったら、有栖ちゃんの目も潰れた。そういうことですか」


 翠は思案するように言う。


「そうだ」


 俺は頷く。この異変の答えは見えている気がした。見えてはいるが、直視したくないがために結果を先送りにしていた。


「多分、多分ですが……」


 翠は言いづらそうに口を開く。


「この子と、ドラゴンは、リンク状態にあります」


「リンク状態?」


「ドラゴンが傷つけばこの子も傷つく。ドラゴンが疲労すればこの子も疲労する」


「そんな話あるかよ」


「逆に考えればメリットなんですけどね。ドラゴンが健康である間、この子は無敵状態でいられる」


「ドラゴン討伐の命令はくだった。今更俺では撤回できない」


「問題は、何処でこの子がこんなリンク状態になったのか。それと、どうしてドラゴンみたいな空想上の生物がこの世に現れたのか。二つの謎です」


 ひとつの名前が、俺の脳裏に浮かび上がった。


「石神……」


「多分、それ絡みではあるでしょうね」


 翠は、冷静に頷いた。


「そう言えば、有栖は俺をパパとは呼んだがお父さんとは呼ばなかった。母親のことはお母さんと呼んでいたのに。石神は自分のことをお父様と呼ばせていた。その影響だったか」


 そこまで言って、溜息を吐く。


「その、リンクって奴は消せないのか?」


「どうも防御結界に覆われているようで。私でもいじれるかもしれませんが不安が残ります」


 脳裏に閃くものがあった。


「スキルキャンセラー」


「ですね」


 翠は頷く。

 彼女は慌ててスマートフォンを取り出して、文字を入力し始めた。

 数秒後に、返事がきた音がした。


「すぐに、ここに辿り着くようです」


「一段落はついたってところか……」


 そう言って、俺は安堵のあまりもたれかかるようにして椅子に座った。



+++



 スキルキャンセラー、木下巴が来たのは、それから十分後だった。翠が呼び出されたので、楓はそれを見送りに行っている。


「ドラゴンとのリンク?」


 事情を聞き、驚いたように巴は言う。


「勿体無いですねー」


「けど、娘を縛る枷となっている」


 俺は、絞り出すようにして言う。


「どうか、消してはもらえまいか」


「あいあい。ちょちょいのちょいで消してみせますよ」


 そう言って、巴は部屋の中央へと歩いて行く。

 飛行音がしたのはその時だった。

 壁を突き破って、ドラゴンが部屋に現れた。


 巴は有栖を庇って、足に壁の破片を受けた。

 そのままドラゴンは前進していく。

 そして、有栖を咥えて背に乗せると、去っていった。


「有栖ぅぅぅぅぅ!」


 俺は銃撃もできず、叫ぶことしかできなかった。




第六話 完


次回『ドラゴンと空で踊る』

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