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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第七章 うん、また連れてってよ、アラタの旅へ
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暗殺者と旅人と戦士と

 島津剣術道場の前で、僕は座っていた。

 いつ、あいつが来ても対応できるようにだ。

 建物の中は、さつきが警護している。


 道行く人がなんだろう、と足を止めては去っていく。

 そして、僕は、夜まで待った。


「島津流剣術奥義、次元突。習得できたかな?」


 黒一色の男が、僕の前に現れた。

 僕は立ち上がり、唱える。


「フォルムチェンジ!」


 白と黒。チェスの駒のように僕らの色は対照的だった。


「今日で、終わりにしよう」


「ほう。二刀流への対策はできたと?」


 男は、自分の顎に手を置く。


「お前がいかに強い技を持っていても、溜め時間に相棒がやられれば終わりだ。とんだ欠陥技だな」


「俺もそう思うよ」


 長剣を呼び出し、構える。そして、エネルギーを溜め始める。

 相手が、突進してきた。

 それを防いだのは、危機を察知して出てきたさつき。

 日本刀で、相手の攻撃を受け止めている。


 しかし、相手はまだ一刀。

 二刀流は使っていない。

 二人の剣戟は火花を散らし、夜の闇の中で輝いた。


「じゃあ、第二レッスンだ」


 相手が、二刀になった。

 さつきは、下段に構えて相手の動きを待つ。


「トロトロしてたら後ろの怖い人に必殺技を放たれそうなんでな。手短に終わらせるぜ」


「そう簡単には、いかない」


 さつきが敵に襲いかかっていった。


「アラタは、私が守るんだから!」


 火花が散る。

 そして、自由なもう一刀が振り下ろされる。

 それを、さつきは片腕で受け止めていた。

 籠手を応用した防御装備。それがさつきの腕には巻き付けられている。

 相手は戸惑うように数歩引く。


 そして、さつきは両手で日本刀を引いた。

 やめろ、と僕は心の中で叫ぶ。時間稼ぎだけで十分だ。


「見て驚け!」


 さつきが相手の腹部狙って突く。

 身長差の関係で、真っ直ぐ突いたら腹部になるのだ。


「次元突!」


 相手の腹部から血が飛び散った。


「小娘が!」


 さつきが、斬られた。

 体は倒れ、血は次から次へと溢れ出ている。

 その頭を踏んで、黒一色の男は剣を逆さにつかみ、振り下ろそうとした。


「さつきいいいいいい!」


 僕は、一瞬でエネルギーが溜まるのを感じていた。

 ピンチにしか使えないスキル。

 なんて不便なんだろう。

 しかし、さつきを救える。

 それだけで十分だ。


 光刃が飛び、黒一色の男の体を真っ二つにした。

 僕は、さつきに駆け寄る。

 そして、治療を始めた。


「なんであんな無茶をした! 言え!」


「だって、ダメージ与えとかないと、心配じゃない」


 この瞬間も、さつきの血はとめどなく流れている。

 失血死。

 嫌な単語が脳裏をよぎった。


「さつき、死ぬなよ。生きるんだ。紹介したい人が沢山いる。その中にさつきも混ざってほしいんだ」


「考えとくよ、師匠」


 そう言って、さつきは目を閉じた。


「おい、さつき? すぐ治る。さつき、目を覚ませ!」


 返事はなかった。


「また、旅に出るんだろう?」


 さつきの手を握って、言う。

 手に温もりはなかった。

 さつきがなにかを言おうとする。

 耳を近づけて聞いてみる。

 すると、頬に柔らかい感触があった。

 キスをされたのだ。その実感が、遅れてわいてきた。


 そして、さつきは疲れ果てたように、黙りこくった。




第十一話 完

次回第七章大団円『羽ばたき』

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