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ソウルキャッチャーズ~私は一般人でいたいのだ~  作者: 熊出
第七章 うん、また連れてってよ、アラタの旅へ
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適性テスト

「連れていくには条件がある」


 僕の言葉に、さつきは戸惑うような表情になる。


「両親の許しを得ろ、とか?」


「俺から、一本とることだ」


 さつきは呆気にとられたような表情になった後、沈んだ顔になった。


「無理だよ、そんなの」


「じゃあこの話はここまでだ。俺は一人で西へ向かう」


「わ、さっきの返事なしなしなし。わかった。一本とる」


「じゃ、河川敷にでも行くかね」


 そう言って、僕らは河川敷に向かった。

 布を投げると、中から木刀が二本出てきた。


「わかってると思うけど、痛いぞ」


 僕は木刀を一本とる。


「覚悟はできてる」


 さつきも、木刀を一本とる。

 そして、向かい合った。


 さつきが木刀を振りかぶって飛びかかってきた。

 僕は、中段蹴りで対応しようと判断する。

 剣道にはない、セオリーを外した攻撃。

 それに対応できなければ、さつきに生き残る目はない。


 そして、蹴りを実行に移す。

 それを、さつきは腕で殴ることで相殺した。


(一瞬で対応した……?)


 僕は衝撃を受け、数歩後ろに引く。


「蹴りは剣術のセオリーにない攻撃だ。何故防げた?」


「何故って……見えたから」


 この前はアラタの剣に一瞬でやられた彼女が、今は見えているという。

 アラタは感じていた。花の蕾が開くように、一つの才能が開花しようとしているのを。


「じゃあ、容赦なく行くぞ」


 アラタは再び前に出た。そしてさつきの腕をねじり上げようとした。

 しかし、避けられる。


(嘘や冗談じゃない。見えてるんだ、こいつ……反撃するほどの身体能力がないだけで)


 しかし、まだアラタの攻撃は終わらない。

 アラタの片手で持った木刀の一撃が、さつきの腰に僅かに触れた。


「もう一本!」


 さつきは、少し距離を置いて、真剣な表情で言う。


(まったく、俺の周りは天才だらけで嫌になるぜ……)


 そう思いつつ、アラタは木刀を構えた。

 結局、さつきはアラタに一本も取れなかった。

 ただ、著しい急成長を遂げていた。



+++



 警察のパトカーが止まる。

 その中から、細長い包みを持った警官が降りてきた。

 アラタはそれを受け取って礼をする。


(駄目だったか……)


 そう思い、さつきは落胆する。

 このままパトカーが私を家に送り届けるだろう。

 アラタは坂道を降りてくると、包みを私に投げてよこした。

 包みは、ダンベルのように重かった。


「抜いてみろ」


 言われて、包みを解く。

 そして、思わず吐息を漏らした。


「わあ」


 鞘にしまわれた真剣がそこにはあった。


「木刀じゃ勝負にならんだろう。武器は強い方がいい」


「いいんですか? こんなのもらっちゃって」


「貸すんだよ」


 アラタは苦い顔で言う。


「じゃあ……」


 アラタは苦笑して、頷いた。


「行こう。一緒に」


 さつきは真剣を抜いた。

 夕焼けを反射して、刃こぼれ一つない刀身は紅色に輝いていた。



第五話 完

次回『因縁の戦い』

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