花見
桜舞い散る古城跡地で、翠達は花見をしているらしかった。
私はそれを断った。
参加する資格がないと思ったのだ。
その翌日だった。
チャイムが鳴る。
私は寝ぼけながら立ち上がると、ドアを開けた。
「巴ちゃん、初仕事解決おめでとーう!」
翠がそう言うと、大勢が唱和した。
「え? え?」
戸惑っている隙に、皆部屋の中に入ってくる。
「殺風景な部屋だなあ」
と、アラタ。
「今度小物でも買いに行く?」
と響。
「俺寝付き悪いからさ。朝起こされるとマジで機嫌わりーんだわ」
「まあまあ、お兄ちゃん」
「ケーキ斬るぞー。包丁借りるな、巴」
恭司がそう言ってホールケーキをテーブルの上に置く。
楓が微笑んで、長い間締め切っていたカーテンを開きに行った。
「ほら、見えるわよ。桜」
言われるままに、外を見る。
確かに見えた。桜並木が。
私はどうしてか知らないけれど、涙が目から溢れ出してくるのを感じた。
家族を失った私に与えられた第二の家族。
けして失うものか。
私は、胸にそう決意していた。
一人きりでも辛抱して働いた日々。全ては、無駄ではなかった。
第六章 完
第六章完結、100話突破です。
次回はアラタ君が主人公になる予定です。




