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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争

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332.冒瀆王女は襲来される。


「おはようございます、プライド様。」


アラン隊長とカラム隊長が再び私の近衛の為に部屋に訪れてくれたのは、翌朝の早朝だった。チャイネンシス王国の侍女達に身嗜みを整えて貰った私は二人に挨拶を返す。

昨日のことはお互い何も言わなかった。それでも、二人ともゆっくり休めたらしく昨日別れた時よりも顔つきがすっきりしていたからそれだけでも安心した。足も右足は完全に動くようになったし、調子が良い。これなら後二日も要らずに完治するのではないかと思えてしまう。…の、だけれど。


「姉君。…今日は既に騎士達が詰め掛けていますが、いかが致しましょうか。」


ステイルが今日までの経過とこれからの予定について報告しながら、目だけで部屋の扉を指した。それに続くようにティアラが「昨日と同じくらい皆さんいらっしゃってましたね」とおかしそうに笑う。私の部屋に来てくれた時にはもう騎士達が扉の前に詰め掛けていたらしい。二人の言葉に、私は片手で頭を抱えた。

昨日、私が足の怪我を発表してからエリック副隊長のお見舞いを終わった後。七番隊だけでなく怪我治療の特殊能力者の騎士達が私の部屋まで詰め掛けてくれた。


一分一秒でも早く、私の怪我が治るようにと。


怪我治療の特殊能力は、基本的には一人で充分に治療は足りる。痛みや悪化、腫れや出血などを抑えて回復させ、あとは動かさなければ時間の経過と共に治癒もどんどん進んでいく。勿論、その回復の程度や早さは特殊能力者の力量によるけれど。

ただ、人数が増えたからって治りが倍に早くなるという訳でもない。勿論、相乗効果で少しは効果が上がるけれど、一刻を争う命に関わるような大怪我なら未だしも、私みたいな単なる骨折にするような必殺技ではない。

それでも、だ。私よりも治療が必要な騎士や兵士は沢山いるし、そんな必殺技ができるのならばエリック副隊長とか他の重傷者に使って欲しかったのだけれど、ステイルの話によれば「その重傷者達からの強い希望でもあるらしいです」らしい。最初、やはり第一王女が怪我したという状況は騎士としても早く改善して欲しいのかとか、そんなに兵士達は怪我を治してとっとと私に帰国して欲しいのかとか色々考えたけど、多分これも私を心配してくれてのことだろう。…そう思うとどうしても無碍にできず、昨日は結局騎士達の治療を全て受けさせてもらった。一人ひとりにお礼を言ったし、心配をかけたことも謝ったけれど、…まさか今日も来てくれるとは。

しかも、今回はいつもの私の足の経過を診てくれる騎士のジェイルとマートと一緒に全員並んでいるらしい。流石に連日は申し訳なく、助けを求めて彼らの上司であるアラン隊長とカラム隊長に目を向ける。すると二人とも苦笑いしながら肩を竦めてしまった。


「昨日、俺らが休息場所に戻った時には既に凄い盛り上がりでしたから…。」

「……若干、…予想外の反応もありましたが。」

アラン隊長の言葉に、カラム隊長が何かを思い出すように目線を泳がせた。アラン隊長がすぐに気がついたように「ああー…」と声を漏らす。

私が首を捻ると、二人とも「いえ」と短く返してから「もし御迷惑なようであれば私達から断りをいれますが」とカラムが進言してくれた。…でも、折角私に心配してくれたのに無下にするのもやはり悪い気がする。最終的に考え抜いた結果、やはり今回も厚意に甘えることにする。

ステイルにその旨を伝えると「まぁ、姉君の足が早く完治する分は皆の望むところでしたから」と笑いながら今朝の予定に早速組み込んでくれた。


「午後からはセドリック王子が面会に来られるので、俺も同席しますね。」


ええ、宜しくねと返すと、衛兵に扉を開けるように指示するステイルは順々に雪崩れ込もうとする騎士達と入れ替わりに部屋から去っていった。

昨日、ステイルへ直接セドリックが私との面会を望みに来たらしい。直接部屋ではなく、ちゃんとステイルを通してくれたところが当初よりも成長だろうか。むしろ、セドリック自らステイルに同席を頼んだというのだから。

何だかんだ私は終戦後からセドリックにだけは未だ一回も会っていなかった。初日は私が絶対安静な上にセドリック達も後処理でそれどころじゃなかっただろうし、昨日は国王二人の代わりに伝言番をしていたから仕方ないけれど。最後に会ったのは、セドリックを戦場に送り出した後。…何故だか凄く久々な再会のような気もしてくる。


「それではプライド様、御御足を確認させて頂きます。」


まるでオペを始めますレベルで私を囲む騎士達に、少し苦笑いしながらも答える。

一応殆ど治った右足も含めて騎士のチェックが入る。本当は医者でも良いのだけれど、特殊能力を使った治療なんて独特過ぎて他国では理解できないだろう。

右足はもう完治しているらしい。包帯も要らなくなり、右足は完全復活を果たした。左足は、…やはりもう二、三日は必要とのことだった。でも、確か昨日の時点で四、五日は必要とのことだったし、騎士達の合技のお陰で治りは確実に早まっている。


「皆さんのお陰です、ありがとうございます。」

他の負傷者のことも宜しくお願いしますね、と笑みで返すと、騎士全員から同時に凄い勢いの返事が返ってきて思わず耳がキンとなる。

屈強な騎士達の元気な返事は至近距離だと部屋の装飾品やカーテンが揺れる程の威力だった。本人達も第一王女相手に力が入ったのか一部の人は顔が赤い。それを見たティアラは両耳を塞ぎながら小さく笑っている。


「お姉様、国に帰ったらフリージアでもきっと祝勝会がありますよね。」

ティアラの言葉に一気に騎士全員が振り向く。今度は大きな言葉は返って来なかったけれど、皆その目が「ですよねっ‼︎」と叫んでいた。

私の足が治って帰国が決まり次第、祝勝会をハナズオ連合王国でも行ってくれるらしいけれど、確かにフリージア王国でもあるだろう。恐らくは一ヵ月後とか、全部が落ち着いた後にだろうけれど。可能であれば同盟相手であるランス国王達を招いて、同盟記念と並行して行う可能性もある。


「そうね、私もそうしたいわ。」

なんだか死亡フラグみたいな会話だなと思いながら笑って返すと、騎士達の目が更に輝いた。やはり騎士達も祝勝会はいくらあっても嬉しいらしい。

理想を言えばアラン隊長やカラム隊長も皆が揃ってくれれば、…と思うのだけれどそればかりはわからない。騎士達も二人の進退が気になるのか、時々チラチラとアラン隊長やカラム隊長に目を向ける騎士もいた。

第一王女の命を救った騎士、と同時に近衛騎士でありながら怪我を負わせた、という事実。難しい状態の二人に対して、羨望や尊敬と隊長二人の進退への心配が入り混じっているのだろう。


「私からも母上に確認してみますねっ!お姉様達がセドリック王子とお話されている間にでもっ!」

ティアラが嬉しそうに両手を合わせてくれる。ありがとう、とお礼を言いながら今回はセドリックとの話にティアラは一緒にいないのかと聞くと「兄様とアーサーがいれば安心ですから」と言葉が返ってきた。やはり未だ警戒は解けてないらしい。いや、でも当初はアーサーとステイルが居ても安心できずにチャイネンシス王国まで付いてきてくれた時と比べればこれも少しは進歩だろう。

今、エリック副隊長が安静中なのでアラン隊長、カラム隊長、アーサーで一人ずつ細かく交代で回してくれている。セドリックが来る頃にはアーサーがカラム隊長と交代して来てくれているだろう。多分、ステイルがそうなるように調整してくれたのだろうけど。


…セドリック、元気なら良いけれど。


彼が今どうしているのかはステイルやジルベール宰相からも詳しくは聞いていない。

兄であるランス国王の手伝いや、時折兵士達と城下の様子を見に行ったりと王族としての仕事は頑張っているようだけど。戦場ではどんな様子だったかすら私は知らない。ティアラに聞いても「すごく危なっかしかったですっ!」と一点張りだった。また何やら無茶をしたのかと思うとそれだけで心臓に悪い。ただでさえ今回彼を戦場に嗾しかけたのは私なのだから余計に。

取り敢えず、せめて彼がまた帰国までの間にやらかしませんようにとだけ願って私は一人息を吐いた。…その時。


トントン。


突然のノックの音に「はい」と思わずすぐに言葉を返す。

セドリックは来るのにまだ早いし、騎士の誰かだろうかと首を傾げる。すると、ノックの主はすぐには返事を返さず二拍ほど置いてから静かに扉の向こうから言葉を返してくれた。


「………プライド様。ジルベールでございます。」


ひぃぃいいいいいいいいい⁈

地の底に響くような低い声に、既に私は身を硬くする。思わず顔が引き攣ると、私の顔を見つめたティアラが半笑いのようなまま口元がやはり引き攣った。

怪我治療の特殊能力を使ってくれる騎士達が、ジルベール宰相の登場に自分達も居て良いのかと尋ねるように私に目を向けてきた。いや居てください是非とも‼︎もう返事をする前から扉の向こうに怖い気配しかしない。さらに言えば前世で聞いたホラーや鮫が迫ってくるテーマが頭の中に流れてきてもっと怖い‼︎

どっ、どうぞっ…‼︎と上擦った声で返し、姿勢を正すとジルベール宰相がゆっくりと開けられた扉から部屋の中に入ってきた。…その目をジトリと鋭くさせて。

顔だけがにっこりと笑顔なのがさらに怖い。うんわかってる‼︎ジルベール宰相が何の御用なのかはものすごくわかってる!だからこそ凄く逃げたい‼︎

なんとか引き攣った笑みでジルベール宰相を迎えながら、今なら窓から逃亡したヴァルの気持ちがすごくわかる。絶対安静の両足じゃなかったら、私も飛び降りてたかもしれない。


「おはようございます、プライド様。突然の訪問申し訳ありません。…お時間、よろしいでしょうか?」

少し暇ができたので、と分刻みの忙しさをかい潜って訪れてくれたジルベール宰相を無下にできるわけがない。騎士達に目をやり、彼らの前でも?と尋ねてくれるジルベール宰相に頷きながら私はベッド傍の椅子を勧めた。ジルベール宰相の動きに合わせて急いで騎士が椅子を引いてくれ、そこに腰掛けた時すら切れ長な眼差しが私から一瞬も離れてはくれなかった。


「治療中、申し訳ありません。さて、それでなのですが。私のお聞きしたいことは…、……ご存知かとは思われますが?」

ッッッやっぱり‼︎

ですよね⁈と思いながら、恐怖に耐え切れず私はベッドの上から思い切り「ごめんなさい!」と叫んでしまう。突然の第一王女の叫びに足元の騎士達が目を丸くした。

「血のっ!…その、血の誓いのことは黙っていてごめんなさい。本当に本当に無茶なことをしました…‼︎でも、その話さなかったのは」


「私に要らぬ心配をかけたくなかったというお気遣いではあると。…存じてはおります。」


言葉遣いは丁寧だけど、絶対零度の言葉に思わず身体が冷える。肩がビクンビクンと震えながら、唇を絞って黙る。身を硬くしたままジルベール宰相を見つめると、騎士達も何人か尋常じゃない気配に反応して顔を上げていた。


「………プライド様。私のお話ししたい言葉は、全てそのお怪我の際にお伝え致しました。が、…怪我をしなければ良いという話でもありません。」

ご尤もです。

ごくん、と口の中を飲み込みながら頷くとジルベール宰相が薄い溜息を吐き、自分を落ち着けるように一度目を閉じた。そのまま今度は口だけが開かれる。「人前で言うことも憚れると承知しておりますが」と静かな口調で語るジルベール宰相が、次の瞬間には休みなく言葉を私の耳へ流し込む。


「血の誓いが、どのようなものかの説明は不要でしょう。既にされたあとなのですから。もし、もしも。今回の件で万が一にもヨアン国王や契約に抵触することでもあればどういうおつもりだったのでしょうか。〝信じていたから〟の一言では足りません。もし、本当に不測の事態が発生した場合、チャイネンシス王国を救えたとしても貴方を失っては我々は全く誇ることなどできません。それは、鑑みた結果のご判断でしょうか?さらに言えばもし、抵触でもしプライド様がお約束通りに火炙りにでもなれば。我々が「はい、そうですか」と貴方様を笑顔で見送れるとでもお思いでしょうか?貴方様が良しとされても、フリージア王国は良しとしません。最悪の場合、今度は貴方様を巡ってチャイネンシス王国とフリージア王国の無益な戦争が行われていたことも鑑みて下さった結果でしょうか。別に私は一人知らされて頂けなかったことを怒っているのではありません。ええ、もちろん騎士達やチャイネンシス王国の兵士すら存じていたことをフリージア王国の宰相である私が把握していなかったのは間違いなく私の力量不足と不徳の致すところですから。」


ジルベール宰相の言葉が、問い掛けがグサ!グサッザクンッ‼︎と音を立てて的確に私を滅多刺しにしていく。ぐうの音も出ないとはまさにこのことだ。騎士達の前だし、気丈になるべく振る舞うけれど、気を抜くと何度も口から「ごめんなさいごめんなさい仰る通りです‼︎」と言ってしまいそうになる。昨日の騎士団長とかとの話も顧みたりすると余計にジルベール宰相には申し訳なくなる。冷や汗が首筋をべったりと冷やす間もジルベール宰相の猛追が続く。


「もし億が一にでも我が国が負け、プライド様が誓いの責任を問われ!…その時に初めて私が知ったところで、その責任は私にありますから。」

じわじわと低温火傷のようにジルベール宰相の言葉が時折チリチリと熱がこもる。本当にその通りだ。もし本当に負けていたらジルベール宰相はその後に知ることになった。きっと彼のことだから凄く責任を感じてくれたに違いない。もし、そうなったらと思うとズクンと振動するように胸が痛んだ。


「ですが、これだけはお忘れなく反省点として胸に留めて頂きたい。今回の防衛戦で我々が負け、甚大な被害を受け、世界中の誰もが貴方様の火炙りを正当であると認めたとしても!」

思わず膝に被せられた布をぎゅっと掴みながら唇を結ぶ。少し本当に泣きそうになって、それだけを必死に耐え



「我々は。……きっと、死に物狂いで貴方様を守ろうともがいたことでしょう。」



シンと、一気に冷えたかのような言葉が力なく放たれた。

さっきまでの言葉で、一番落ち着いて優しい言葉が…何故だか一番胸に刺さった。


「私も、騎士も、王族も、民も……誰もが。それはきっと、歴史に残るような惨劇を生んだかもしれません。それでも我々は、貴方様という存在を手放したくないと望んでしまいます。プライド様がどう望もうとも、……絶対に。」

きっと彼らも、とジルベール宰相が柔らかな口調で目で騎士達を指す。目を向ければ、怒り出したジルベール宰相に少し怯えながらも一生懸命私の足を治療してくれる彼らがいる。私の視線に気がついた騎士は目を丸くして、それでも頷くようにして頭を下げてくれた。

まさか今の私が、彼らにも更に要らない争いを招いていたのかもしれないと思うと、今度こそ心臓が何度も痛んだ。震える唇を噛んで堪え、私は今度こそ声に出して何度も心の中で唱えた言葉を返した。


「………ごめんなさい。」


私の言葉に目を閉じ、僅かに頷くような仕草をしたジルベール宰相は最後に私へ言い聞かせるように前のめりに顔を覗かせ、至近距離からはっきりと放った。


「あの時も既に申しました。〝プライド様が、私共は大切です〟と。そして、大切とは…安易に手放せるものではありません。プライド様が民一人に己が身を顧みないように我々もきっと、……そうなります。」

戒めのようなジルベール宰相の言葉に、私は黙って頷いた。…もう本当に自分を顧みないことの罪は、嫌という程わかってしまったから。


「…どうかゆめゆめお忘れなきように。」


最後に優しくそう言ってくれたジルベール宰相は、何事もなかったように静かに立ち上がる。

私とティアラに頭を下げ、「プライド様を宜しくお願い致します」と騎士達一人一人に礼をするとそれ以上は何も言わずに去っていった。

騎士団長もそうだけれど、この歳になって本当に怒ってくれる人達のありがたみがよくわかる。辛そうな表情で訴えてくれたジルベール宰相の顔が、今も強く頭に残る。


…もう、こんな傷付け方はしませんように。


まるで誰かに祈るように、私は一度心の中で強く唱えて目を閉じた。


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[良い点] 大バカ王女がやっと反省できた[っぽい]ところ
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