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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
外道王女と騎士団

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33.騎士たり得る者は王女を知る。


「私を、あの戦場に‼︎」


俺よりも背丈の低いガキが剣を掲げて叫ぶ。

俺だけでなく、周りの騎士達も驚いていた。

誰だ、このガキは。


でも、確かに言った。「大丈夫よ」と。そして、「不幸にさせない」と。


俺は訳もわからず、縋るような、祈るような想いでそのガキを見つめた。


「だっ…ダメです姉君‼︎危険なのは予知した貴方が一番ご存知ではないのですか⁈」

もう一人、ガキがいた。少年だ。

姉君、という言葉から弟だろうか。

同時に予知、という言葉がひっかかった。

だが、姉の方は引く様子もなく弟と何やらぎゃあぎゃあと問答を繰り返している。

もう頭がついていけず、何を言っているのか頭に入ってこない。

第一王女?親父を救う?

もう理解が追いついてこない。俺の頭がイカレて幻でも見てるのか?


「予知したの。今ならまだ救える‼︎あの人の父親を救えるの‼︎」


そうして指差されたのは俺だ。

また、言った。「予知」と。

呆然とする俺を弟の方が意味有りげに見てくる。俺なんざに何か思うことでもあるのか、苦々しげに俯き、だが再び首を振る。未来の女王を行かせる訳にはと、意味のわからないことを


「私は‼︎…民一人を我が身可愛さに救えるのに救わない、そんな最低な女王になりたくはないのよ‼︎」


姉の方の叫びに頭が真っ白になる。

女王?意味がわからない。

弟もその言葉に目を見開き、暫く姉の方と見つめ合い、沈黙が流れる。

その間にも後ろからは親父の呻き声が何度も何度も聞こえて俺はまた叫び出しそうになった。


早く、早く、早く

親父を助けに行くなら早く、馬に‼︎


今から行って間に合うかもわからねぇ

既に親父は衰弱しきっている。

馬でどれくらいの場所かもわからねぇ、もしいま向かったとして間に合うのか、まだ親父を救えるのか


そう気持ちばかりが急いで心臓が脈打つ中、姉弟は何かを確かめ合うように言葉を交わし、そして


弟が姉を抱きしめた瞬間、その女は姿を消した。


「はっ…⁉︎」


周りの騎士達も狼狽えている。

「ッおいクラーク‼︎今のは⁉︎あのガキは、何処に⁈何で消えっ…」

思わずその場で副団長のクラークに向かって声を荒げるが言葉が続かない。

クラークも呆然と弟の方を見つめながら「まさか…」と呟いていた。

「クラーク‼︎ガキはっ」

立ち上がることができず、床を這うようにして四つんばいでクラークの方まで駆け寄る。


「ステイル第一王子が…瞬間移動を…させた…‼︎」


口をパクパクさせながら、やっと俺の方を向く。

「だっ…第一王子…⁉︎」

「あの方は第一王子、ステイル様だ。そしていま消えられたのはプライド第一王女…プライド・ロイヤル・アイビー様だ…!」

「なっ…‼︎」


言葉が、出てこない。


第一王女?あのガキが⁉︎

第一王子に第一王女が何でここに⁈

じゃあ、さっきまでの予知とか女王とかは全部…‼︎

やっと、全ての言葉の繋がった。

クラークが今すぐ救援をといいかけるが、ステイル様がそれを阻止する。

クラークとステイル様がそのまま問答を続けるうち今度は親父の映像の方が騒がしくなった。


「ッぎゃあ⁉︎」


最初に聞こえたのは、悲鳴だ。

親父じゃない、別の男の声。

クラークもステイル様も騎士達全員が映像に注目した。

親父を追い詰めていた連中まで、親父ではなく崖上を見上げている。

映像の枠からは親父とゴロツキ共しか見えず、崖上の様子まではわからない。

だが、銃声が何度も何度も崖上から響き、親父じゃない奴らの悲鳴が何度も崖上の方から響く。


何が、起こっているんだ?


親父も立ち尽くしている様子で訳がわからない。

騎士達が「まさか崖上で混戦をしているのか⁈」「先行部隊は崖には向かっていないぞ⁈」「じゃあ誰が」と口々に騒いでいる。


「………姉君。」

ステイル様の言葉に、すぐ傍にいたクラークと俺が振り返る。

ステイル様はただただ映像を眺めていたが、どういう訳かその手には爆薬が握られていた。


まさか、あのガキが…プライド様が⁈

あの、崖上で戦っているのか⁈


何を考えてるんだあのガキは‼︎

あんな小さいナリで、銃を持った男に勝てる訳がない。簡単に殺されちまう‼︎

我儘我儘とは聞いたが馬鹿だったのか。

さっきまて縋る思いだった自分を殺したくなる。

早く、助けてやらねぇと!

親父も、あの姫様も早く‼︎


そう思っている間にすぐ、あっという間に悲鳴も銃声も止んでしまった。

殺されちまったのか、あの姫様。

…俺の、せいで。

俺が助けてくれと騒いだから、あの姫様は…


パンッパンッ‼︎


そう思った瞬間、銃声が再び響いた。

その途端、親父に銃を向けていたゴロツキが悲鳴を上げ、手を押さえて地面に転がり出した。

親父がそれに乗じてまた転がってくるゴロツキ共を斬り倒す。

その度にまた、他の奴らが親父に銃を構えるがすぐにそれより先に誰かに手足を撃たれ、地面に転がった。


何がどうなってる?

もう、言葉も忘れて食い入るように画面を見つめ続けた。

そして、暫くの沈黙の後

小さな足音が親父達に近づいてきた。


…あり得ない。

こんな、奇跡みたいなことある訳がない。


親父が、ゆっくりと立ち上がる。

その隙間から確かに、見覚えのあるドレスがチラついた。


俺よりも小さくて

俺よりも弱そうで

しかも騎士どころか男ですらない

小さな小さな姫様が、確かにそこにいた。


こんな、絵本でみた英雄のような都合の良いことが起こる訳がない。


目の前に映る、その人物が信じられず、気づけば涙で視界が歪んでいた。


『貴方達も、本当にもう弾の補充がなかったのね。全部今ので使い切ってしまったわ。』


女の声だ。

ついさっき聞いた、あの人の声。

不意に、肩を叩かれた時の言葉が頭の中に響く。




大丈夫よ、と。




『覚悟なさい。小悪党が。』

鳥肌が立ち、身体が震える。


彼女が、いる。

この国の第一王位継承者。

親父に、騎士に、この国の連中の誰もに護られるべき存在が、そこに。


『彼は私の国民です。』


涙で前が見えなくなった。

何故だかは全くわからない。

ただ、その凛とした声に驚くよりも酷く、安堵した。

間に合ったのだと。

もう、大丈夫なのだと。

理屈じゃない、何かがそこには確かにあった。





プライド・ロイヤル・アイビー様。





俺達の国の、護るべき御方。














本日18時に続けて短いですが、更新致します。

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― 新着の感想 ―
こういう独白みたいなシーンが本当に上手で毎回泣く
理想の為政者ですね。 夢ですが、小説はこうでなければ。 読んでいて幸せ(*´꒳`*)
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