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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争

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324.第二王子は止まった。


「…セドリック。」


兄貴が溜息混じりに俺に声を掛ける。なんだ、と返しながら俺が鏡を確認すれば再び兄貴の深い溜息が返ってきた。


「今日は社交界のパーティーはなかった筈だぞ…。」

「ああ、だが城下の視察がある。その後には兄さんへ会いにチャイネンシス王国も行くだろう。」


予定など全て頭に入っている。

社交界のパーティーならば昨夜行ったし、次は明後日だ。十歳の時の社交界デビューから、俺の元にはパーティーの招待状が更に届くようになった。十四歳になった今もそれは変わらず、むしろ増すばかりだった。


俺は、参加できるパーティーには全て参加していた。

俺の価値を示す為もあったが、何より俺がパーティーに参加してやり、上層部に恩を売れば兄貴の悪口を言われることも無くなった。

俺自身もパーティーで兄貴の良さを話せば、誰もが恍惚とした表情で俺の話を聞き、頷いた。兄貴への誤解を解くこともできて、評判も広めることができて、そして俺の価値も高められる。


やっと俺は俺の価値と役目を手に入れた。


俺の言葉に兄貴が「そうか、わかってるのならば良い。だが、ならば…」と唸るように声を低め、最後に俺の頭を鷲掴んだ。



「何故、そのようにゴチャゴチャと着飾る必要がある⁈」



飾り過ぎだ馬鹿者!と叫ばれ、そのまま髪をグリグリと乱された。折角侍女達に整えさせた髪が無駄になる。


「行き先は城下だぞ⁈身支度に何時間掛けるつもりだ⁈」

「城下だからこそだろう⁈民に俺の姿を見せるならば相応の格好をしなくてはならん‼︎」

「何が相応だ!それでは頭から宝石箱を被ったようなものだ!」

「美しいものを更に美しくして何が悪い⁈」

自分で言うな恥ずかしい‼︎と怒鳴られ、髪を揉みくちゃにされる。折角一時間以上掛けたというのに台無しだ。髪が乱れると訴えたが兄貴は容赦が無い。

だが、間違ってはいない筈だ。女性だって多くの装飾で煌びやかに飾り立てている。

本でも必ず美しさの比喩には宝石が使われる。更に女性の美しさを表現すれば、身に付けている装飾もまたその人物の美しさの要素の一つとして語られる。ならば、身に付ければ付けるほど良いに決まっている。

以前のパーティーでは〝金色の魔性〟とまで例えられた。ならばやはり我が国の特産物でもある金の装飾を付けるのが一番良い。

それに、俺が特注で金細工の装飾を職人へ発注すれば金も回り、その度に雇う職人を変えれば我が国の伝統金細工師の職人も食うには困らず、景気も潤った。

何より、俺のこの姿を民だって心待ちにしているのだから。


「キャァアアアアアッ‼︎セドリック様!」

「ランス第一王子殿下だ!セドリック様もご一緒だぞ‼︎」

「セドリック様!どうかこちらを向いて下さい‼︎」

「ランス第一王子殿下万歳‼︎」

「ランス第一王子殿下、どうかハナズオ連合王国を…‼︎」


この数ヶ月で聞き慣れた声に、城下で馬車を降りた俺達は手を振って答えた。兄貴にも多くの民が手を振り、その手を一人ひとり取りながら兄貴は民の声に耳を傾けている。そして、俺は。


「…また会えたな、美しきアラーナ。」


俺の前に集う女性一人ひとりの手を取り、その手の甲に口付ける。一度会った者の名は全員覚えている。その名を呼べば、それだけで女性は誰もが顔を火照らせ喜んだ。「覚えていて下さったのですか⁈」と声を上げる女性達は誰もが嬉しそうに目を輝かせた。


「…ん?貴方は…初めて前に出て下さりましたね。いつもは人影から私を覗いていらっしゃったので、こうしてお話できて光栄です。」

「きっ…気づいて下さっていたのですか…⁈」

一度会った人間の顔は全員覚えている。会った数も、話した内容も全て。そのまま女性の名を尋ねれば、恥ずかしげに名乗ってくれる。これで次からは彼女のことも名で呼べる。


「…カレン、先日はすまなかったな。俺に手を振ってくれと言っていただろう。あの時は兄貴と大事な話をしていてな。」

「いっ、いえ!お気になさらないで下さい‼︎気づいて下さっていただけで充分ですから!私こそ畏れ多いことを…!」

この容姿のお陰で、俺も城下の民からの評判は良い。単に顔と名と話した内容を覚えているだけで、皆が喜んでくれる。

兄貴や兄さんは顔ではなく、それ自体が人気の要因だと話していたがそんな訳はない。顔と名と会話内容など、兄さんや兄貴だって覚えているに決まっている。この人気は全て俺のこの容姿あってのものだ。


「…貴方は。…お初にお目にかかります、この国の第二王子、セドリック・シルバ・ローウェルと申します。どうか、兄共々宜しくお願い致します。」

「⁈お…俺の、いえ私の名はブルースと申します…⁈お、お初にお目にかかります…!」

男性であれば手を取り、兄貴と同じように互いに握り合う。初めて俺の前に現れた男性は驚いたように目を開き、恭しく頭を下げてくれた。名を聞き、俺から再び笑いかける。


「!カドマス。またチャイネンシス王国から来てくれたのか。美しき妻は元気か?俺様に会えなくて嘸かし残念がるだろう。」

「いえ、全くです。妻も私もセドリック様をお慕いしております!…勿論、次期国王である兄君のランス第一王子殿下と我が国のヨアン第一王子殿下のことも…‼︎」

俺へ挨拶に来る者に男性の割合は少ない。だが、来た者は誰もが友好的に語り掛けてくれる。この容姿はどうやら男性にも評価は高いらしい。


「あっ…あの!セドリック第二王子殿下っ…!もし、その、宜しければこれをっ…‼︎」

「ん…?ああ、焼き菓子か。エフィー、お前の菓子ならば喜んで頂こう。……うん、良い味だ。」

この場で食べて下さるなんてっ…!と真っ赤にした顔を口元から両手で覆い、その場に崩れ落ちた。

最近は時折こうして俺に差し入れをしてくれる女性も増えた。その場で食うな、せめて毒味を通せと兄貴と兄さんにも言われたが、これも民への信頼の証。何より、これが一番彼女達が喜ぶのだから。


民は皆、友好的だ。

これも全て俺の容姿あってこそ。俺は間違いなくこの容姿を活かし、兄貴や兄さんと並ぶ立場を手に入れた。

…この容姿がなければ、間違いなく〝神子〟でない俺などここまでの支持を得ることはできなかっただろう。



知も学も何もない、無能な俺では。



だが、俺は恵まれた。

優れた容姿と、そして良き兄を二人も得た。

他の者にとっては、所詮興味の対象は俺の容姿だけだ。…しかし、それでも構わない。

見られているのが、俺の外見だけだとしても構わない。

容姿しか取り柄のない俺が、それで民や兄貴達に還元できるのならば。

これこそが、勉学を避けて〝神子〟を殺した代価となる。


「…また装飾が増えてないかい?セドリック。」


チャイネンシス王国で俺を迎えてくれた兄さんが苦笑いする。俺の右手を差して「重くないかい?」と尋ねてくる。確かに複数の指輪は少し五指が動かしにくいが、そのうち慣れれば平気だろう。


「以前発注した指輪が今朝届いてな。どの指輪を代わりに外すか迷ったから、そのまま付けてきた。」

「せめて片手に二本までにしろ。社交界でもそこまで着飾るのはお前くらいだぞ。」

兄貴がそう言って俺の手を掴んでくる。指輪を強制的に外されそうになり、急いで指に力を込めて握る。


「しかもダリオ宰相から聞いたぞ、セドリック。今度は髪飾りまで職人に発注したらしいな?」

「セドリック…君、いつから女性になったんだい?」

兄貴の言葉に兄さんが目を丸くする。そんな責められることでもあるまい。女性だって髪飾りをつける、ならば美しい俺がそれを付けてもおかしくなどない。髪だって、その辺の女性よりも長さはある。


「女になった覚えはない。だが、俺ならば似合うからよいだろう。格好良くなるに決まっている。」

「センス…より前に、まずは引き算のお洒落から学ぼうか?」

兄さんの言葉に兄貴が「そうだ、その方が良い」と頷いた。そのまま兄さんが俺の装飾を一つずつ摘みあげる。


「先ず…ピアスを開けたのは良いけど、一緒にイヤリングやカフスまで付ける意味はあるのかい?完全にピアスが隠れているよ。」

そう言いながら俺の両耳のイヤリングとカフスを一つひとつ外していく。せっかく納得いくように付けられたというのにと抗議すると「せっかく痛いの我慢して開けたピアスが無駄になるより良いだろう?」と言われて言い返せなくなる。


「あと、首飾り。見えるだけで四つ、服の中のクロスも入れたら五つかな。…特になんだい?この鎖のようなものは。」

首に掛けた金鎖の装飾を引っ張られ、兄貴が兄さんに手を貸す形で俺から剥ぎ取る。更に残りの三つの内どれが一番のお気に入りかと聞かれ、答えたら残りの二つも回収された。同じように両手首のブレスレットも片手に一、二個ずつに減らされていく。


「ッもう充分だろう兄さん!これだけ減らせば問題ない‼︎」

このままでは頭から指の先まで取られると手を上げれば、兄さんが仕方がなさそうに肩を落とした。そのまま俺から回収した装飾を俺の従者に預ける。


「じゃあ、今日はこれで許すけど…せめて次からはこれくらいの数に抑えるんだよ?髪飾りも含めてこれ以上増やしたら、また僕が一個減らしちゃうかも。」

ランスを困らせちゃ駄目だよ、と言いながら兄さんが俺のクロスがある胸元の位置を指差した。…どの装飾を取られてもこのペンダントだけは譲れない。

駄目だ!と声を上げながら胸元を服ごとクロスを掴んで押さえると兄さんがクスリと笑った。


「!。あ…そうだ、兄貴。これを。」

ふと、服を掴んだ拍子に胸元に閉まっていた書状の感触でそれを思い出す。書状を指で挟み、兄貴に渡すと「なんだ、これは」と訝しむように兄貴が片手でそれを受け取った。


「以前、兄貴が外界と交易を再開したいと提案した時に反対派の者がいただろう。そのボール卿から、兄貴へ貿易再開同意の念書だ。」

昨夜の社交界で知り合ったボール卿の娘達がその場で書かせてくれた、と説明すれば兄貴と兄さんが突然感嘆の声を上げた。


「あのボール卿から合意を得たのか⁈」

「すごいな…、これさえ有れば国王から港解放の許可も難しくないんじゃないかい?」

これならば早々に一国くらいとは貿易もできるかもしれん!と嬉しそうに話し合う兄貴達に俺も嬉しくなる。


「どうだ?兄貴、兄さん。俺も役に立つだろう?」

この容姿さえあれば。と、その言葉を続けようとした途端、二人が同時に俺の肩に腕や手を回してきた。感謝する‼︎えらいよ、セドリック!と兄貴と兄さんに素直に褒められ、逆に何故か照れ臭くなった。

思わず黙っていると、今度は兄貴が俺の頭を勢いよく撫でてきた。髪が乱れる!と訴えたが、やはり訴えても止まらない。それを見た兄さんが「やっぱり髪飾りはやめた方が良いね。ランスの手ですぐに何処かへ吹っ飛んじゃいそうだ」と言ったから俺も同意した。残念だが仕方がない。


「それで兄貴、貿易は何処と交わすつもりだ。外界は知らんが、まともな国はあるのか。」

「勿論いくらか目星はつけている!ファーガス摂政が幾らか貿易の有力国を調べてくれてな。海路に特化した国ならば取引の制限もしやすいし、何より一度に多くの物流が可能だろう。」


国を閉ざす前まで、我が国を侵略しようと狙っていた周辺諸国との交流。それを国民が避けたがるのならば、もっと遠路の国と交易すれば良い。先ずは一国。外界との輸入や品に民が興味を示させることで国を開く足掛かりにする、と兄貴は以前から語っていた。


「先ずは外の世界に触れることだ。世界は広い、そして変化し続ける。いつまでも閉じこもっている訳にはいかん。」

「港か…やはり海に面している国は良いね。僕らの国は地続きだから。正直、ラジヤ帝国の息が掛かった周辺諸国に関わるのは僕も億劫で。」

「俺は外界に興味は無い。だが、兄貴や兄さんがそうしたいと言うのならばそうすれば良い。」


兄貴の言葉に兄さんと俺が順々に返すと、兄貴は「何を言っている!」と声を上げながら俺と兄さんの肩に手を置いた。


「我が港は、ハナズオ連合王国としての港だ。サーシス王国が海路を開けば、自ずとチャイネンシス王国も外界と繋がる。それにセドリック!他人事ではないぞ⁈お前もいつかはその目で外界を知るべきだ。」

相変わらずの快活な声で笑う兄貴が、力強くそのまま俺と兄さんを引き寄せた。楽しそうな兄貴に思わず俺も兄さんも笑ってしまう。

兄さんが最後に「楽しみだね」と兄貴に返し、俺も同意した。

九年とちょうど十一カ月前が嘘のように、眩しい未来へ俺は…俺達は確実に進んでいた。

これで良い。無能で無力で無知な俺でもこうして兄貴達の役には立てている。


神子など、俺達兄弟を突き落とすだけの忌むべき害悪。















…呪いでしか、ないのだから。


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[一言] さっさとセド編終わってくれ
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