表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
冒瀆王女と戦争

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

367/2275

313.女王は不敵に笑う。


「…そうですか、プライド第一王女殿下が御不在とは。」


残念です。と自身の狐のような細目を歪めるようにして笑いながらアダムは言葉を返した。

調印を終え、あとは帰るだけの筈だった彼からの提言だった。「プライド第一王女殿下にお会いしたい」と。


「ええ、今頃はハナズオ連合王国で防衛戦を行なっている頃でしょう。もしかしたらもう既に勝敗が決している頃〝かもしれませんね〟」

「フリージア王国が関わっておられるのならば、きっとハナズオ連合王国の勝利でしょう。…ですが、お会いできないのは残念です。」

アダムはわざとらしく肩を落として見せると、右に流した髪を手のひらで撫でながら「ならばー」と遠慮なく言葉を続けた。


「せめて和平の証として、ティアラ第二王女をご紹介して頂くことはできませんか?」

「申し訳ありません、ティアラもプライドと同じくハナズオ連合王国に居ります。」


ピシャリ、と窓を閉めきるように言い放つローザの声に抑揚がなかった。まるでアダムの言葉を予想していたかのように素早い切り返しだ。アダムがからかうように「まことでしょうか」と尋ねると「勿論です」と短くローザは答えた。


「和平を結んだ国の第一皇子殿下に嘘も、隠し立てもありません。ティアラもまた、本人の強い希望と私から全権を貸与されたプライドの意思で戦場に立っております。」

たとえ城中調べても居ませんよ。とアダムの希望を一刀両断するローザの声色には若干の敵意も滲んだ。


「残念です。…ですが、考えて頂けましたか。以前から我が国から出させて頂いている〝書状〟について。」

ローザの声色に、それでも全く気にせず薄笑いを浮かべるアダムはニタリと笑う。整えられた眉を片方だけ上げながら黙って見返してくるローザにアダムは続けた。


「私は本気です。同盟が叶わぬのならば余計に我が国、そしてフリージア王国にも〝ティアラ王女と私の婚姻〟が必要ではないのでしょうか?」

アダムの不快な笑みが止まらない。ケタケタと笑い声を上げそうな程に引きつらせた笑いが女王のローザ、摂政のヴェスト、そして王配のアルバートへと順々に向けられた。


「…確かに、今ティアラへの婚約者も選別方法から我が摂政、王配と共に検討中です。アダム皇太子殿下、貴方が名乗り出て下さっていることも承知しております。」

以前からプライド達には話していなかったが、ローザ宛にはラジヤから和平、同盟の申し入れと共にアダムとの婚姻の申し入れも届けられていた。

同盟が叶わないならばせめて、婚約という形で和平の確固付けに勤しみたいと。そして今年で二十一歳になるアダムにとって、ティアラはこの上ない相手だ。


「ですが、未だ御返事はできかねます。プライド同様、ティアラとも婚約を望む方々は多くいらっしゃいますので。」

「そうですか。ならば今は待ちましょう。私以上に相応しい人間がいるとは思えませんが。そしてティアラ第二王女は、我がラジヤ帝国の妃として誰よりも相応しいでしょう。」

細い目がうっすらと開かれ、そのまま気味悪く笑む姿は爬虫類の捕食を連想させられた。

アダムの笑みを受けながら、ローザはやはりティアラをハナズオ連合王国に連れて行かせて良かったと思う。もし、ティアラが城に残っていたらフリージア王国としては和平を結んだ相手に望まれれば、会わせざるを得なくなる。不在を偽ったりすれば、知られた時には双方の信用問題にもなるのだから。バレなければ良いという話でもない、和平を結んだ相手への礼儀としても、だ。









だが、娘二人とラジヤ帝国の人間をまだ会わせたくもなかった。








正確には会わせてはいけないという、確信があった。

以前からラジヤ帝国からローザの元に届いていた和平打診とティアラとの婚約打診。ラジヤ帝国がティアラとの婚約、という名のフリージア王国との癒着を図っていることは明白だった。…恐らくは、自国産業発展の為に。

確かにラジヤ帝国は、支配規模を含めれば世界有数の大国。だが、あまりにも相入れない。さらに言えば、こう直接相対すれば目の前にいるアダムという人間自体、どうしてもローザは信用ならなかった。

しかも書状から判断して、ラジヤ帝国の狙いはティアラだと考えたが、彼が一番最初に会いたいと願った人間は婚約希望のティアラではなく〝プライド〟だ。第一王位継承者であるプライドはラジヤ帝国の第一王位継承者のアダムとの婚約は不可能だというのに。





双方が統合し、どちらかの従属国にでもならない限りは。





ラジヤ帝国…アダムの目的はティアラか、それともプライドか。

やはり必要以上彼らとの接点を作らない為にティアラも国から出しておいて正解だったと心の中で安堵する。式典など公の場での会合と、極少人数の中で女王直々の紹介では意味合いもその重さも変わってしまう。プライドやティアラが彼と初めて会うのは、式典などでの多くの来賓の中の一人としてで十分だ。アダムは未だ、数多くいる婚約候補者の一人でしかないのだから。


「……必要ならば今すぐこの調印を()()()()()()()。」

ぼそ、とローザの顔色を窺ったヴェストが耳元で囁いた。

ヴェストの目にもアダムは快く映ってはいない。厳しい眼差しを更に鋭く尖らせた彼の言葉にローザは表情を崩さないまま首を横に振った。

あくまで結んだのは〝和平〟のみ。アダムがいくら言おうとも、ラジヤ帝国がどれほどの力をもつ大国であろうとも、プライドやティアラの婚約者を選ぶ権利はフリージア王国にある。更に今は和平も結んだ。ラジヤ帝国もまた、脅迫行為などで二人の婚約を推し進めることもできなくなったのだから。


「いやぁ、我が国にもプライド第一王女殿下、そしてティアラ第ニ王女殿下の噂は届いております。」

聡明で美しいと。そう言いながらプライドとティアラの噂や評判を語るアダムの目の奥は未だにギラギラと光り続けていた。お褒めに預かり光栄です、と返すローザも全く気が休まらないまま、彼の話を優雅な笑みで受け取る。


「特にプライド第一王女殿下は未だ婚約者が御不在と聞き及んでおります。なんとも勿体ない。これほど名高い王位継承者であるプライド第一王女殿下の〝唯一の欠点〟がそのようなものとは。齢十七だというのに、国を統べる伴侶もいないとはさぞ女王陛下も王配殿下も御不安かとー…。…おや?どうなさいましたか、女王陛下。」

にこにこと細目をさらに細め続けるアダムが、途中で言葉を止めて軽薄な笑みで嘲った。

どう見ても、プライドへの侮辱のようにしか聞こえない嫌味にローザは表情こそ崩さないまま、その瞳は怒りに燃えていた。緩やかな表情から隠せないほどの威圧と覇気に、アダムは楽しそうに笑みと共に問い掛ける。


「アダム〝第一皇子殿下〟…貴方は、我が国と和平の為にいらっしゃったのでは。調印も済みましたし、仰りたいことがあるのならば、どうぞこの場で。」

ゆったりと語るローザからの覇気にアダムの背後に控える臣下達が思わず肩を強張らせた。武器を掴みそうな手に力を込めたところで、いま自分達が武器をペンに至るまで全て没収されていたことに気づく。


「御不快に思われたのならばお詫び致します、女王陛下。出過ぎた発言でした。」

あくまで軽薄な笑いを崩さないアダムにローザはその細い手で拳を作らないように細心の注意を払い、微笑み返す。いえ、と返しながらローザは衛兵達にアダム達への見送りを準備するように合図を送った。


「アダム皇太子殿下、次お会いできるのはいつが宜しいでしょうか?こちらでも都合をつけましょう。ご都合の悪い日のみ教えて頂ければ。」

「早ければ早いほど幸いです。可能ならばティアラ第二王女殿下が十六の齢になる前に。大体は都合がつきますが、どうしても外せない日はー…」


ローザの柔らかな笑みにアダムは間髪入れず答えた。

そのまま手だけで指示を出せば、背後にいる参謀長が手帳を開きアダムの予定のある日のみを一年分早口で告げた。ローザの横に控えるヴェストがそれを全て記録すると、参謀長と殆ど同じタイミングで手帳を懐へと戻した。


「ありがとうございます。私共も心に留めておきましょう。」

本日は御足労ありがとうございました、と繋げながらローザが立ち上がる。アルバート、ヴェスト、そして護衛である副団長のクラークや騎士と共に移動し、退室を促すようにしてアダム達に握手を求めた。


「是非とも。お伝えしたからには、礼儀を重んじるローザ女王陛下は叶えて下さると信用しております。」

ニコと愛嬌を感じさせない笑みを返しながらローザと握手を交わすアダムは、そのまま流れるようにアルバート、そしてヴェストとも握手を交わす。引き締まった表情でアダムを見返すヴェストが、握手をした瞬間だけは仄かにだけ笑みを返した。

その後もひたすら続いてローザとヴェストが順々にアダムの臣下や衛兵全員と握手を交わしていく。女王であるローザに望まれれば誰一人握手を拒む者はおらず、更に続く摂政のヴェストとも一人一人全員が握手を受けた。…その目だけは誰もが冷たく冷え切ったまま。


「またお会いできるのを楽しみにしております。こちらから必ず招待状を送りましょう。」

ローザの言葉に挨拶を返しながら、フリージアの騎士に無言で締め出されるようにアダム達は送られていく。

バタン、と扉が閉じる音がしてからやっと、ローザは大きく息を吐いた。


「…何事もなくて良かったと、そう言うべきと思いますか。ヴェスト。」

「我が国に被害は出なかった。ラジヤ帝国が引き続き警戒すべき国であることもわかった。和平も成立し、更に同盟も我が国の王女とアダム皇太子を会わすことも避けられた。そして〝避けられる日〟もここ一年分は手に入った。…充分ではないかと。」

小声で尋ねるローザにヴェストが溜息交じりに答えた。あいも変わらずお見事でした、と続けながら先程懐にしまった手帳を取り出した。


「…早速、〝その日付〟に夜会でも企画しましょうか。」

ローザの言葉に、ヴェストは「すぐに」と頭を下げた。同時に副団長のクラークや護衛の騎士達もその場で深々と頭を下げた。



不敵に笑う、ローザ女王へと。





「あ゛あ゛〜〜‼︎うっぜ!きもっ‼︎」


フリージア王国の国外に馬車が出た途端。

アダムは我慢の限界かのように声を荒げ、両足を向かいの座席まで放り出した。一緒に乗り合っていた将軍と参謀長は既にそれを予想していた為アダムの向かいの席は空けていた。


「見たかぁ?フリージアのクソババア‼︎つまんねぇ反応ばっかしやがってさぁ!仮面でも被ってるのかっての‼︎」

ぎゃあぎゃあと当たり散らすように叫びながらアダムは髪を自ら掻き乱した。右へ流し整えられた深紫の髪が乱れ、ボサボサと四方に散らばるようにして髪がうねり、ところどころが跳ねた。いつもの髪型に少し落ち着いたのか、窓枠に肘をついて一度だけ大きな溜息を吐く。


「大体さぁ、最初からうざってぇったらねぇよな?部屋の前で武器没収だのさぁ、ペンまで取り上げやがってクソ騎士共が。バケモンのクセに何を警戒してんだって話だろ⁈」

部屋から出た途端に返却されたペンや護身のナイフをまるで汚いものでも付いたかのようにアダムがパッパッと叩く。最後は隣に座る将軍にまるで擦りつけるように彼の服で側面を拭き取った。


「プライド王女もティアラ王女もいねぇとかふざけんな!結局見れたのはドブスのババアだけじゃねぇか‼︎」

せっかくこのアダム様が足を運んでやったってのに‼︎と更に怒りを思い出し、今度は馬車の中でバタバタと力の限り床を踏みならした。


「なぁにが「こちらから必ず招待状を送りましょう」だよ‼︎バケモン女王は脳味噌腐ってんのか⁈」

むーかーつーくー‼︎と叫びながらアダムの罵詈雑言は止まらない。腹立ちを必死に消化させるように馬車の中で喚き、暴れ、更に傍にいる臣下達の鼓膜も気にせず声を張り上げる。


()()()()()()()()()()いつ招待するつもりだよ⁈」


クソババア‼︎予定ぐらい聞け!と力の限り叫びながら、アダムはパタンとやっと身体を脱力させた。誰も自分の言葉に反応を見せないことをつまらなさそうに舌打ちをすると、心の中で国に帰ったら何人の〝商品〟を嬲ってスッキリするか考え、自身を落ち着かせた。

暫くの沈黙の後、やっといつものニタァという不快な笑みを剥き出しに窓から見えるフリージア王国を眺めた。そして数秒後にはまぁ良っか、とまるで何事もなかったように落ち着き払った声で一人で零した。






「これでまた、商品棚に近づいた。」






その、不敵な笑みと共に。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] いろんな人と握手したんが気になる
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ