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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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Ⅲ211.騎士団長は指示し、


「たった今ステイル様からご通達を頂いた!ティペット・セトス発見によりただちに温度感知の特殊能力者をサーカス団の医務室テントに派遣し護衛に付けるようにとのことだ」


ただちに警備中以外の騎士をここに集めろ、と。

フリージア王国王族の宿泊する宿で、騎士団長による威厳のある声が響かされた。

いつもの騎士団作戦会議室とは異なるが、王族を護衛中である騎士達が使用を許される部屋の中でも広々とした一室だ。休息時間中の騎士が交代まで鋭気を養い、談笑や情報交換ができる広間には緊急時の為、騎士は基本的に仮眠以外は敢えて自室ではないそこに控えている。

突然早足で訪れた騎士団長に注目するのも一瞬に、腰をおろしていた騎士も立ち上がり壁に寄りかかっていた者も姿勢を正す。続けてステイルの名とティペットという要注意人物名に騎士全員が息を飲み、糸を張り詰めた。

そして名こそ伏せられたが、ステイルが応援要請する元に誰がいるかは確認するまでもなかった。


自分が、私が、自分に行かせてください!と、その場にいた温度感知の特殊能力者が数名呼ばれる前に早足で前に出た。

誰もが手配書でティペットもアダムの顔も把握はしてる。宿の見張り警備での交代時間までそろそろ仮眠に入ろうと考え始めていた騎士までも己の胸を示し、喉を張る。他の騎士も今すぐ宿に控えている騎士達を収集すべく部屋を飛びだし駆け出した。

選別も待てずに今すぐに第一王女の安全を確保すべく名乗り出る騎士達を前に冷静に見据えるロデリックも、一刻も早く向かわせる為にその中から一名は選抜する。ドミニクと、騎士の名を呼び今すぐステイルの命令を遂行し指示に従うようにと先行を許された。まだ最低限の情報共有のみで今後の指針を決めてもいない状況だが、許可を得た騎士は騎士団長への姿勢を正したのちに風を切る速さで部屋を出た。

あくまで騎士だと周囲には気付かれないように着替え、馬を走らせるべく急いだ。そのほんの数分の間にも、収集を受けた大勢の騎士達が広間へと駆け出し集まってくる。一分一秒の経過に比例して騒然とする部屋の中、隊長格が到着した順にロデリックも的確に指示を飛ばす。少し前に伝達に来たハリソンが一人騎士を連れて行ったばかりなのを思えば、もう少し引き留めておけば詳細が確認できたかもしれないと思う。


「九番隊は宿の警備を残し各小隊……いや班にわけろ。二番隊三番隊と共に連携して行動する。三番隊は、テオドールはまだか」

九番隊の副隊長がすぐに今動ける隊員の中で班分けを決める中、三番隊の副隊長より先にロデリックは二番隊の騎士隊長へと続けて目を合わせた。

ステイルからの指示はあくまで温度感知の特殊能力者を派遣という一言だけだが、騎士団としてはそれで腰を落ち着けられるわけがない。

ティペットという要注意人物がこの地に現れ、まだ詳細もわからない中では最悪の場合この地でラジヤと戦争もあり得る。ティペットがどこでどのように現れ、そしてプライド本人とは接触したのか。その詳細までは、急ぎ派遣のみ依頼したステイルのカードには記載されていなかった。

女王への報告と、追って情報を受け取りに行く使者として騎士を追加でステイル達の元へ派遣する必要も出てくる。もしステイル達が数人の別行動を取っていれば、また対応は変わる。念の為通信兵を介して城の演習場にいるクラークにも情報共有をと平行して思考する中



「やはりこちらに居ましたか騎士団長」



悠然とした女性の声が一方向から放たれた。

聞き覚えのあるその声に、ロデリックも瞬時に振りかえる。さっきまで騒然とした騎士達に囲まれ指示を飛ばしていたから気付かなかったが、見れば広間の扉から騎士ではない人物達が姿を現したところだった。ロデリック達と同じ宿に宿泊する、フリージア王国の女王ローザだ。

更にその斜め背後には摂政であるヴェスト、そして近衛騎士のノーマンとケネスも並び控えていた。騎士団長を前に頭を下げるが、ロデリックもまた「陛下」と身体ごと向き直り深々と礼をした。ロデリックに続くように、その場に集まっていた騎士達もローザへ身体を向け一斉に跪いていく。

誰か騎士が先に報告したのか、騒ぎが耳に入ったのか、それともステイル様がと。様々な可能性を浮かべながら、女王へ向けて深く頭を下げるロデリックと共に騒然としていた部屋は静まりきった。

フリージア王国であれば、同じ城内でも王居と騎士団演習場は距離も離れている。しかし同じ宿内であれば室内にいてもいくらか騒ぎが拾われてしまう可能性は充分にある。女王が歩く軌跡にそのまま騎士が立ち止まり礼をする中、とうとう騎士達が集う広間全てをローザが沈黙に沈めた。女王を前に、許可もなく慌ただしく横切ることなど許されない。

両手を身体の横に、低頭を終えてから「何故こちらに」とロデリックは改めてローザへ訪問の理由を尋ねた。城の中でも、そして遠征先の宿であろうとも同じ屋根の下にいても王族が直接騎士に会いにくることなど滅多にない。そして護られるべき最高権力者であれば余計にだ。

騎士団長を部屋に呼び出すことはあっても、女王が自ら足を運ぶことなど視察以外にない。豪奢なドレスを身に纏い宿の中でも公務に勤しんでいた女王は、厳しい表情でロデリックに歩み寄る。細い眉を寄せ、胸を張り顎を僅かに高く高身長の騎士団長を堂々を正面から見据えた。


「ステイルからカードが私の元にも」

細くも響く女王の声に、跪いている騎士達も息を飲む。上目に除けば、ローザに控える摂政が一枚のカードを摘まみ掲げていた。

やはり女王にも報告を行っていたのかと理解すれば、流石はステイル様と胸の内では唱えたが口には出さない。それよりも先に、改めて頭を下げながら「ご報告が遅れ申し訳ございませんでした」と騎士団長として謝罪する。

ステイルの瞬間移動以上に速い報告方法などないと理解はしていても、どういう理由であろうとも報告を遅らせ女王の足を煩わせたのは自身の責任だ。


ロデリックからの謝罪に騎士達も跪いたまま僅かに浮かせ始めていた頭を再び深々下げた。しかし、ローザもそしてヴェストもその苦言に訪れたわけではない。

謝罪に対し一言で返したローザは、その場の全員に頭を上げることを許可する。騎士団の元にもステイルからのカードが届いたのかを確認すれば、ロデリックもすぐに受け取ったカードをローザへと記されていた内容と共に差し出した。

ティペットが現れたこととその為に温度感知の騎士をサーカス団の医務室テントへ派遣することの要請のみが書かれていることに、ローザもヴェストも表情は変えずに目でも確認する。

時間でいえば実際は同時ではなく、ロデリックから間を少し空けてから届けられたローザの元のカードの方がさらに詳細な内容が丁寧な言葉と字で記載されていた。

ローザの視線を受け、ヴェストはつまみ上げていたカードを更に肩の位置よりも高く掲げ、女王の右腕として初めて発言する。


「ティペット・セトスはサーカス付近の市場で目撃されている。接触そのものはなく、こちらには気付いていない素振りだったが、本人であることは〝ステイルの侍女〟が確認済みだ。現在アネモネ王国のレオン第一王子、セドリック王弟は護衛と共に別行動をとっていると」

ステイルにより報告事項をカードを覗かず暗証するヴェストの情報に、騎士達の誰もが目を見張る。

プライドとティペットが直接何かあったわけではないらしいことに安堵しつつ、今王族は散けていることも今は穏やかな状況ではない。ステイルとプライドが共に行動していることが幸いだった。

騎士団長だけでなくとうとう摂政からも〝プライド〟の存在が伏せられ響かされる。柔らかな目元が厳しく研ぎ澄まされる中、ロデリックも今知る新たな情報に口の中を飲み込んだ。まだプライドが無事であることは確認できたが、それが今この時もとは限らない。現在既に温度感知の特殊能力を持つ騎士を向かわせていることを告げれば、女王も僅かに肩を降ろしたがそこで終わるわけでもない。

そうですか、と静かな声を薔薇の唇から溢した後に一度瞼を降ろす。再び開かれれば、釣り上げたように見せる化粧の下の眼差しが大きく開かれ、騎士団長とその背後の騎士達へと向けられる。


「女王の名のもとに命じます。ティペット、もしくはアダム皇太子を発見次第捕らえなさい。我が愛しい子や王族に危害を加えるようであれば生死も問いません」


責任は私が取りましょう、と。大国の女王から正式に許可が下ろされる。


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― 新着の感想 ―
ステイルとしては、ここまで即時にドミニクが派遣されてくる、とは思っていないような感じ?そこまで緊急なら、ステイルが迎えに行ってるでしょうし。 まして女王まで動き出すとは思ってないんじゃ? アーサーやケ…
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