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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
来襲侍女と襲来

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そして危惧をする。


「団長にも帰ってきたら聞いてみようと思います。今まで考えもしませんでしたが、団長自身がティペットを知っている可能性も……一時的にティペットがここに所属していた可能性も考えられますから」


「そうですね。もともとラジヤに移った経緯は不明なままですし、ここに現れるっていうのも里帰りみたいな可能性もありますし」

「オリウィエルに尋ねるのも良いかと。どこかで関連付いているかもしれません」

ステイル様へはっきりとした声で意見を返すアランに私も続く。

以前のプラデストの予知とメシバ村の予知のこともある。王族の特殊能力である予知について私も詳しいことは知らないが、近い時期に続いた予知がまた関連付いている可能性もある。ならば、もともとのサーカス団の件で核にいた彼女が今回のプライド様の予知にもどこかで関わっている可能性も鑑みるべきだ。


そうですね、とステイル様からも今度は自然な声色で返されればまた無言のままアランに今度は背を叩かれた。まるで宥められているような感覚に今度は若干腹が立ち、私からも肘で突く。どれだけ私まで余裕がなくなったと思われたんだ。…………真っ向から否定はできないが。

肘で返した途端、ニカッと笑ってきたアランの眉間にもまだ皺が残っている。しかし、打てるべき手に最善を尽くしている今はまず私達が代わりに動き前進しかない。

早々にティペットの関係者を見つければ、プライド様も今度こそ安心して宿に戻られる。正直、私ももうあの御方に遠征が終わるまで容易に外に出て欲しくはないと思ってしまっている。


まずは人が一番行き交っているだろう大型テントの中に入れば、すぐに団員の姿を確認できた。

中へ入っていくにつれこちらに気付いた団員から「あ!!」「お前ら!」と主に私とアランが鋭い目を向けられる。先ほど慌てて荷運びを放棄した件だろう。あんな大音を立てれば噂もすぐに回っておかしくない。それもしっかり謝罪しなければ。緊急だったとはいえ、大事なサーカス団の器材を粗雑に扱い、任された仕事を投げてしまったのだから。

複数人の注目を浴びたところで、アランが一歩前に出る。「すみませーん」と気楽な調子で喉を張り、声の届く範囲の全員へ呼びかけた。


「どなたか〝ティペット〟って女性をご存じの方いませんか?今ちょっと話聞きたくて」


「…………アラン。お前は……」

まさかの、本当に一気に大声で呼びかけ出した。自分でも額を片手で押さえてしまう。確かに効果的な方法だが、本当に一手目から大雑把な。

ハァ……と溜息まで漏れてしまう。

しかしステイル様もそれに驚かれる様子はなく、アランの方へ振りかえると更に続けて声を張られた。髪や瞳の色から始まり、詳細に容姿を説明するステイル様もまたアランの手法に賛成という意思表示だろう。ステイル様に至れば手配書も広げられた。

荷運びを行っている最中の下働きざっと五名は、こちらに注意を向けたまま一度足を止めてくれたがすぐに首を捻る。「知ってるか?」「いや聞かねぇな」と会話も聞こえれば、やはりそう都合良くはいかないかと思う。

この場にいるのはまだ入団経験も浅い者だったと、ステイル様に私からも一言掛ける。アンジェリカさんや下働きの方々から大体のことは昨日までの潜入で知れた。やはり尋ねるなら入団経験の長い者かと考えるが、具体的な年歴差までは私も把握していない。今思いつくだけでもアンジェリカさんにラファエロさん、ディルギアさんにミケランジェロさんに料理長の




「ティペットなら、聞いたことは……ある」




はっ、と。突然投げ込まれた言葉に私達は一斉に振りかえる。見れば私達が入ってきた入口からちょうどもう一人の団員が顔を出したところだった。

私達だけでなくこの場にいた団員全員が丸い目で注目したのも視界の端々で拾えた。この場にいつもはいなかった人物だ。

薄紫の髪の青年、ラルクさをが眉を寄せたままそこには立っていた。鞭を片手に腕を組み、踵の高い靴のつま先を立たせながらこちらを睨む彼は不機嫌にも見えたがそれでもしっかりと発言者と示すようにこちらへ目を向けてくれていた。

あまりにすぐの情報者に、ステイル様が近距離にも関わらずすぐに駆け寄った。我々も続けば、突然迫られたことに目を少し丸くするラルクさんは押されるように半歩下がる。


ご存じなのですか?!とステイル様が声を荒げれば、ラルクさんの身体がビクリと微弱に跳ねた。

昨日までは我々を敵視していた彼だが、本来の姿は人付き合いが不得意なだけのむしろ気は弱い方の青年だ。突然ステイル様に迫られて、怖じけるのも無理はない。ヒールの高さを入れてもステイル様の方が背は高いから余計に。

こちらがそこまで大きく反応するとは思わなかったのだろう、ラルクさんは一度唇をきつく結ぶとよろりと入口の布に掴まった。「知ってるという程じゃ……」と小声になる彼は、まるで自分が責められているかのように姿勢まで丸くなる。鼻先まで迫ろうとするステイル様に、失礼ながら一度彼との間に手を差し込み距離を促す。彼がティペット……いや、ラジヤと繋がっているというわけではない。

ステイル様も一度目を合わせば、ぐっと堪えるように一歩分きちりと下がって下さった。「突然失礼しました」と謝罪するステイル様に、ラルクさんも小さく声を漏らしてから改めて口を開いてくれた。


「僕、じゃない。団長から昔一度聞いたことがあるだけで……」

「団長ですか?!!!」

またあの人か……!

ステイル様が思わずといったように声を上げる中、これには私も額ごと目を片手で覆ってしまう。話を聞こうとはついさきほど打ち合わせたばかりだが、まさかラルクさんやオリウィエルに続きまたあの人が関わっているのかと頭が痛くなる。

本人は悪人というほどではないのだが、どうにも小火を大火事にするような力を持っている。アランですらも幾度も手を焼いて疲弊させられた相手だ。そしてなんの皮肉か、また彼は今このサーカス団を留守にしている。私とアランも聞き込み中に下働き同士の連絡で聞いた。アレスと共に街へ降りたと、いつ戻ってくるかも不明らしい。

ティペットも特殊能力者である以上、一度勧誘したことがあるのかもしれないと思考が及べばステイル様からも「団長とはどういう関係ですか?!」と問いが上げられた。アランも今は天を仰いでいる。彼は特に団長と関わるのも嫌がっていたから無理もない。

しかしステイル様からの言及に「いや……」と惑い気味に首をふるふると横に振るラルクさんは一度周囲へ視線を向けた。さっきまでのもともとの大きくもない声がさらに私達に向けて潜められる。


「団長から、教わった。あの人は団員の事情も一番よく知っているから、僕も昔は色々教えてもらっていた。当時の団員の誰だったか……そういう名前の女を探しているからもし聞いたらこっそり団長である自分に教えて欲しいと言われたことがある」

…………間違い無い。

そう、少ない情報だけで色濃く思う。頭が痛い。

私達も詳細までは知らないが、昨日の話ではラルクは将来はこのサーカス団の団長となるべくクリストファー団長にも期待されていたらしい。ならば、団員の事情やある程度の情報を引き継ぐのも必要なことだろう。


過去として語ったのも無理はない、彼はつい昨日まで長らくオリウィエルの洗脳下にいたのだから。本来ならば今も団長となるべく色々な知識もクリストファー団長から引き継いでいた頃なのだろうかと思えば、改めて彼に同情を禁じ得ない。洗脳前に教えられたことをいくらか覚えてくれている分、彼はもともとは優秀な人間なのだろう。

ステイル様からその探している団員が誰かと尋ねられれば、難しそうな表情で頭を捻ってくれるが最後は「わからない」と首を横に振られてしまう。目撃情報も団長にといったところからも、最初から誰が探してるかまでは聞いていないのかもしれない。

今すぐ団長を探しに街へ降りるかも考えるが、……やはり今はプライド様から距離を離したくはない。ステイル様も同じ判断なのだろう。この一秒すら歯痒そうに片手で頭を抱えられた。ラルクさんから「君達も知り合いか?」と眉を上げられ、アランが「ちょっと」と苦笑気味に濁してくれる。

しかし今の情報だけでも、確認する相手は絞られる。


「……当時の、団員ということは。少なくとも何年か前か断定していただければ、残留のサーカス団から絞られるかと」

私からも提言すれば、ステイル様も抱えた手をパタリと降ろされた。「確かに」と一言と共に気を取り直され、また半歩ラルクさんへ前のめられる。

ラルクさんが操られた期間は一年と長い。そして私やアランが団員から聞けた話だけでも、オリウィエル入団以降も何度も団員は数の増減を繰り返している。その中でも現在も残っている団員となれば数も限られる。

私達が何故ここまで言及するかもまだ理由すらまともに説明できていないラルクさんも、戸惑いもあってかすぐには数字が出ない。視線を左右上下に泳がし、しかし思い出そうとしてくれる彼に感謝する。今までと打って変わり、……いや。きっと今までのことがあるからこそ我々に協力的になろうとしてくれているのだろう。

びくびくと鞭を持つ手も持たない手も胸の位置まで自分を庇うように浮かせながら、視線を泳がし続けるラルクさんの照準がゆっくりまたこちらに合わせられる。


「多分、七年は前からいる古株だと……思う。僕が入団した時にはいた団員だから…………」

「七年ですか?!」

「ラルクさんそれ古株の団員全員わかりません!?」

弱々しい声で告げるラルクさんに、ステイル様とアランも叫ぶ中今度は私も前に出そうになる。七年も前の団員ならば数は急激に絞られる。想定よりも早く関係者を見つけられるかもしれないと急き立てられる。


えっと……と、肩の幅を狭めながら指折り団員の名前を絞り出そうとするラルクさんがさっきよりも苦しそうな表情になる。「名前が全員は言えるかは……」と溢す彼は、まだ団員全員の名前までは覚え切れていないらしい。記憶力は良いが、人の名前を覚えるのが苦手なことは珍しくない。……仕方が無い。

一人、また一人とラルクさんが古株の名前をゆっくり上げる中、気付けば頬に汗が一筋伝っていた。速く関係者を見つければ、その分速くプライド様を宿にもお返しできる。今はただあの御方を安全な場所に戻したいと、どうしても思ってしまう。

私だけではない、ステイル様もアランも同じだ。プライド様が戦闘が手慣れておられることも、ただの護られるだけの女性ではないこともわかっている理解している。ただしかしそれでも



そのプライド様が、他ならぬアダムとティペットにだけは抗えないかもしれないのだと。



……それを確認できてしまった今は、どうしても。


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