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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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Ⅲ200.侵攻侍女は茫然とし、


「ひと先ず彼女は保護して貰った方が良さそうだ。僕らの正体を勘づかれても困るし、君達の方から〝迎え〟を派遣して貰う方向で良いかな」


「ええ」と、了承の言葉を返しながらも自分の喉が半分枯れているのを自覚する。……流石レオン。

保護した奴隷被害者から距離の離れた位置で、彼女の処遇を決めた私とレオンは早速母上が宿泊している方の宿から騎士を派遣してもらうことにした。私達が直接フリージア王国に連れて行ったら奴隷被害者に正体をバレてしまうかもしれないし、ここは方法手段は疑問を抱かれても別の人間を介した方が良い。

宿には騎士も大勢いるし、その中で一名派遣して引き渡し我が国へ早々に連れ帰って貰おう。我が国に行けばちゃんとした保護所もある。

誰か一人騎士団長に騎士の派遣を依頼に、と見回せばハリソン副隊長が即答で名乗り出てくれた。ステイルがいればカードを瞬間移動して済むのだけれど、今この場で最速間違いないのは確かに彼だ。

ではお願いしますと依頼すれば、一瞬で姿を消してしまった。短い風を残して、最速で騎士団長へ伝達へ去った。……まだ、合流場所も決めてなかったのだけれども。


エリック副隊長のお陰でなんとか市場の荷車内をあらかた確認し終えて間もなく、レオンがとうとう明かずの商人の荷車を開かせてくれた。

経過を聞けば聞くほどに恐ろしい手腕だったけれど、もうレオンだからこそとしか言いようがない。商人から奴隷の荷車を開かされる前から中にいるのがフリージア王国の人間だとレオンは見当を付けてしまっていたのだから。怪しいとは思っていたけれどまさかの最後にドンピシャだった。お陰で一人我が国の奴隷被害者を助けることができた。


「それでジャンヌ、彼女は別人だったかい?」

「ええ……、でも大事な民よ。本当にありがとう」

こちらこそ。そう滑らかに笑んでくれるレオンに心からの感謝の笑みを返しながら、なんとも言えない気持ちも飲み込む。それとは別に未だ頭の別の部分がぐるぐると巡っている。

レオンが救ってくれた奴隷被害者は女性だ。その時点で攻略対象者ではない。ただ彼女、……見覚えがあるような気がしたのも事実だった。攻略対象者ではないと判断したと同時に沸いた既視感に、荷車を覗いてから数十秒間硬直して動けなかった。前世との記憶の照らし合わせで脳内が忙しすぎた。


もう一度彼女の方へ目を向ければ、今も力なく地面に座り込みアネモネの騎士から借りた上着をかけられている。

まだ自分の状況が理解できないのだろう、呆然と俯きながら感情を表に出すこともない。金色のふわふわ跳ねた長い髪に、青い瞳を持つ綺麗な女性だ。年齢はロッテと同じくらいだろうか。今は頬も痩けているし顔色も良くないけれど、間違い無く美人さんだ。……キミヒカのゲームに出てきておかしくない容姿でもある。

流石に乙女ゲームのキミヒカで女性が恋愛対象者だったことはないし、主人公だったら流石に思い出せる筈だ。恐らくは第一作目のヴァルや第二作目のネルみたいなモブキャラの誰かだろう。……つまり、やはりこの地に第四作目の登場人物は集結してると考えて良さそうだ。


ケルメシアナサーカスに居たアンジェリカさん達には全く覚えがないのに、まさかこんな形でゲーム関係者に会うことになるとは思いもしなかった。

奴隷という立場から考えても、ゲームだとこのままオリウィエルに支配されたサーカス団に買われるのかもしれない。……本当にゲームの強制力怖い。

彼女がどういうポジションかだったまでは思い出せないのを思うと、ゲームの記憶が薄まっている気がして怖くなる。いや、ジルベール宰相だって最初見覚えあるだけで攻略対象者だったかまで思い出せなかったし!!と自分で自分を慰めながら、今は彼女にとっての最善に動く。

ゲームの流れを考えるならこのままサーカスに面倒を見てもらう流れだろうけど、ここは法に則って我が国で保護させて貰う。大事なのはゲームの流れじゃなくて彼女自身の幸せだ。


今だって、騎士に質問される時以外話さない彼女はまだ自分の意志を発言する気力も戻っていない。茫然自失に近いだろう。

質問に応答形式で彼女が答えてくれたのは名前だけだ。いつどういう状況で捕まったのかも、虚空に視線が浮くばかりで答えられない。基本的な自分の情報は答えられても思い出すまでは困難らしい。

心的外傷のせいか、薬が使われていた可能性もあるしやっぱりフリージアの騎士に任せて医者に診て貰うのが一番良い。せめて会話ができそうなら攻略対象者や主人公を思い出すきっかけを得られそうだったけれど今の状態でそれは酷だ。


「すまなかったねエリック、市場一帯一人で。大変だっただろう?」

「!いいえ、とんでもありません」

この度はありがとうございました、と。エリック副隊長がレオンへ深々とそこで頭を下げた。

本当に二人ともありがとうございますとしか私には言えない。我が国の民をピンポイントで見つけてくれたレオンもさることながら、エリック副隊長なんてここ一帯を結局一人で順々に交渉しては私達を呼んで荷車の中を確認させてくれた。正直何回荷車の中を見ても慣れるどころか気分の良いものではなかったけれど、少なくともここの市場には他に我が国の民が売られていないことは確認できた。

アネモネ王国第一王子からの労いへ逆に我が民救出の感謝で返すエリック副隊長に、レオンも少し眉を垂らして笑んだ。これ以上はお互いが譲り合いになると察したのだろう、そこで一度言葉を止めると「ところで」とエリック副隊長の次にまた私にも目配せをしながら口を開く。


「続けてで悪いけど、次の市場も君に一任しても良いかな。僕はここで彼女の迎えを待つよ。……やりたいこともできたから」

最後の一言だけレオンの声が一段低められた。ぞわりと鳥肌が立つような声色に思わず背筋が反ってしまう。

戻ってきたハリソン副隊長への伝言も任されると言ってくれるレオンに、やりたいことが何かと尋ねるまでもない。私から了承の一言を返せば、そこでレオンがにこっとした笑みを私の傍に控えるアーサーへと続けて向けたのがその証拠だ。

アーサーもビクッ!と肩を激しく上下させると勢い良く頭を下げていた。全くアーサーは悪くないし、むしろレオンからしても私にとってもファインプレーそのものだったのだけれど。


レオンに悪態をついた商人に、アーサーが違和感を覚えたらしく指摘すればあの優しい王子様レオンが見事に氷のような表情だった。

あんなに怒ったレオン、珍しい。ヴァルは愉快そうに笑って見ていたけれど、こっちは笑う余裕どころか顔が引き攣って血も引いた。アネモネの民には向けられることがない顔だったもの。手が出ていてもおかしくない顔色だった。

商人を問い詰めたレオンの話を聞くと、アーサーが妙に思った時がちょうどアネモネの奴隷はいないだろうなと言及した時だったらしい。……つまりは、そういうことだ。

まるで黒い気配を醸すステイルみたいに静かに怒り出すレオンに、アーサーも慌てて「いや確証ってほどはないんですけど」と蚊のなくような声で付け足したものの商人とアーサーじゃ信頼の差がある。アーサーが自分から言うくらいなら相当妙な顔色だったのだろうし、レオンが言葉だけは柔らかい詰問をすれば商人もヤケ気味に吐き出した。

結果、今も解放されるなくがっつりとアネモネの騎士に拘束されている。


「君の優秀さはわかっているつもりだったけれど、……〝彼〟が君を信頼する理由はまだ他にもありそうだ」

「いえ、そのっ……本当、本当に出過ぎた発言を致しました……申し訳ありません……」

「むしろ感謝してるのだけれど」


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