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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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Ⅲ183.騎士達は休息し、


─ 現段階でのサーカス団の所有奴隷は皆無を確認


「…………流石に、……今日は……寝るか……」

ボフン。と、第一王子ステイルは寝衣に着替えてからすぐにベッドへ倒れ込んだ。

最初は毛布の中に潜り込むこともせず、ただただ脱力する。眼鏡を外すのを忘れていたことも、数秒じっと目を瞑り続けてからやっと思い出した。ベッド脇の棚まで手を伸ばすまでも面倒になり、瞬間移動でそのまま棚へと移動させる。


ヴェストへの報告を終えてから、今後もプライドと共に調査の許可を得られたところで、やっと肩の荷が下りた。

ヴェストに会う前に身支度は調えた分、あとはもう自分で着替えを済ませて部屋に一人になることを優先した。扉を閉じた時点でどっと疲労が溢れてきた。

二日前は酷く夜更かしし、昨日はアーサーと同室で結果的に寝つくまで時間が掛かった。今日に至れば意図せず水まで浴びて着替え回数も多かった。肉体労働も多かった上で、睡眠が短い日々が続いた今はもう一秒でも長く寝たい。

主たる理由は自分ではないとはいえ遅めの朝による出動をプライドに提案したステイルだが、やはりそれは間違っていなかったと思う。

ベッドの上に倒れ込んだままうとうとと寝そうになり、眠気でぼやつく視界で枕の位置まで這った。頭が無事に枕へ辿り着けば、そこでまた横着する。毛布の上でうつ伏せに目を閉じたまま下敷きにしている毛布のみを自分の上に瞬間移動させ、風で膨らませ着地させた。

これで風邪も引かないと、自己完結すればそこでぷちりと意識も途切れた。


─ 予知の諸悪であるオリウィエルの暴走を事前に阻止


「しかし、……濃密な日だった…………」

ハァ、と。溜息を吐いた王弟セドリックは、ベッドの上で足を伸ばしたままそこで一度両手を広げ脱力した。

プライドやステイルよりも一足先に寝る前の身支度を終えた後も暫くはベッドの上で起きていた。楽な姿勢で寛ぎながらも、今日一日のことを思い返すだけでも時間は優に過ぎていった。

プライドの予知と現状、そして今後の方針もまとまった後だが、そこから改めて自分にできることとすべきことを膨大な記憶の中から精査した。まさか第二部ではアレスまで操られていたとはと、今でも気付けなかった自分の鈍さを反省する。

続けて明日会うべき相手を考えれば、自分がどう振る舞い言葉を告げるべきかも考える。あくまで王族ではなく、自分は商人。そして相手はレオンの憎むべき相手だとはいいえ、今日のサーカスでは間違い無く彼は自分の誘い通りに動いてはいた。礼を言う必要はないが、そこの部分だけでも客観的に認めてやらねばならんと思えばそこで眉間に皺が寄る。

今日一日あった愉快なことだけでもティアラに詳細に語ってやりたいと思うが、プライドやステイル、そしてレオンもいる今彼女はわざわざ自分から聞きたがりはしないだろうと考える。思考が一度動き回れば忙しく、ティアラのこととなれば切り替えることも難しくなる。一度意識的に時計を確認すれば良い時間だった。もう緊急の収集もプライドやステイルからもないだろうと判断し、そこで就寝を決めた。

毛布の中に潜り込み、手前のランプを消して目を閉じた。未だ苛立たしい貧困街のことも、未だ心臓が高鳴ってしまうティアラのことも考えないように意識して睡魔を待った。


─ プライドの予知による捜査から、残り日数は自国の民が奴隷として売買されていないかの調査へと切り替える。


「あーー?こんな時間に何しにきやがった」

「それは君の部屋に酒を箱単位で運ばされた彼らに言ってあげたいかな……」

そろそろ寝なよ、と。首を傾けながらほのかに困り笑みを浮かべる第一王子レオンは、寝衣の上に上着を羽織って客室の一つへと赴いた。

身支度後にも宿で待っていた従者達との情報共有と進捗を確認し終え、明日に備えて早々にベッドに入ろうとしたところだった。王族の眠りを妨げまいと、慎重に音を立てないように運ばれた酒だったが、重量と運ぶ人数に比例して当然音は立つ。その音の方向が、宿に招いたフリージアの配達人の寝泊まりする部屋だと思えば興味本位に足を運んでみたくなった。

見れば、帰ってきた時も早速四本の酒を宿から貰い自室へ去って行った彼が更に追加の酒を運ばせていた。本人はあくまで何の権利も持たない配達人だが、第一王子の友人であり客人となればアネモネ王国の従者も配慮しないわけにはいかない。自分で酒を補充に出ようとする客人を止め、言われた通り銘柄関係なく酒を十本以上運んだ。


ヴァルが酒を飲み足りていないことはわかっていたが、帰還してもう暫く経過しているにもかかわらずまだ飲むのかと流石のレオンも少し呆れてしまう。明日も引き続き動くというのに睡眠よりも酒を選ぶ彼は、異国のどこに居ても相変わらずだとつくづく思った。

本来ならばここで自分も酒に付き合いたいレオンだが、今日は仮眠を優先した。「今夜はそれくらいにしておいてあげなよ」と、ヴァルではなくヴァルの為に酒を運ばされる従者達を按じつつ踵を返した。次からは彼の泊まる部屋には事前に酒を箱で積んでおくように指示しようと決める。

自室に戻り、既にランプを消した後の部屋で視界が潰れたままベッドへと辿り着き潜り込んだ。最後の最後で気が抜けたお陰で、入眠までは早かった。


─ 本来の目的が全てとは言わずとも一区切りついた今、彼女の安全の為に朝も夜もなく護衛に徹し続けていた騎士達は。


「お疲れ様です!!明日までゆっくり休んで下さいね?!」

無事に第一王女を含む護衛対象を帰還させ宿に戻り、早々に宿に控えている騎士達と交代を許された。

今までの仮宿やテントと異なり、大勢の本隊騎士達が溢れかえり守られている宿は王族にとってだけでなく護衛を任じられていた騎士達にとっても安住の地だった。

明日の朝まで護衛の任を解かれ、騎士団長に報告を終えた後は休息を命じられた。王族のように慣れない寝床や固いベッドでの睡眠を余儀なくされただけではない。宿では交代しながら短い睡眠で護衛を早朝も深夜も回し続け、テントでも同室であろうとも熟睡などできるわけがない。浅い眠りで常に緊張感を張っていた為、心身ともに十分な休息などとれていない。

二人組であれば、交代制で目と頭は起きていないといけない時間がただ続く者もいた。そんな中、二日ぶりの気を抜くことを許される休息に騎士達はそれぞれ割り振られた自室で




「んじゃ乾杯っっ!!」




カラァァンッ!と、ジョッキやグラスをぶつけ合う高らかな音が複数同時に鳴り響いた。

第一王女の近衛騎士として与えられている自室ではない、騎士団用に配分された内の一室だ。国から持参した武器を含めた荷を保管しておく用の部屋が、残ったスペースだけでも複数で飲むには一番広かった。

いっそ酒場へ行こうかとも提案はあったが、話したい内容が内容だった為に宿から離れない方を選んだ。宿から貰った酒を積み、床で直接の酒盛りだ。椅子もソファーもない部屋では、直接床に座るか武器の入った箱を椅子代わりに腰掛ける。

アランの掛け声に部屋にいる全員がジョッキやグラスを鳴らせば、そこからは迷わず全員が酒へと口をつけた。ぷはーーーっ、と声を漏らすアランは一度でジョッキを空にした。


「いや~やっぱ飲み会すると違うよなぁ。騎士団の中なら安心して話せるし」

「酒は大事に飲めアラン。今日は二杯までという約束を忘れるな」

早速上機嫌に喉を鳴らし終えたアランに、カラムが最初に決めたルールを改めて念を押す。

今は騎士団長であるロデリックから休息を認められているが、警戒体勢は変わらず続いている。国に王族を無事帰すまでは、完全に飲んだくれるわけにはいかない。あくまで味わう程度、常に緊急事態に応じれるように酒の量は厳粛にしなくてはならない。

アランに酒盛りに誘われたカラムだが、近衛騎士同士の情報共有だけではなくアランにつられて酒盛りが全員に響かないかも心配での同席だ。アランに付き合ってでは、誘いに応じた全員が翌日まで疲労を持ち越し兼ねない。

カラムからの指摘に「わかってるって」と笑うアランはそう言いながらも早速本日最後の二杯目を自分のジョッキへと注いでいった。

昨日は寝床が異なったエリックだが、アランの相変わらずの元気ぶりに「ははは……」と笑ってしまう。自分はセドリック達との行動になった為、テントで眠ることもなく今日もあくまで観客としての観覧になったが、目の前の彼らの疲労と睡眠不足は自分の比ではない。


「自分はまだ余裕がありますけれど、アラン隊長達は本当に大丈夫ですか?早めに休息を取られた方が良いのでは……」

「大丈夫大丈夫!寝るより話したいし。いやまだ帰り道もいれたら一週間くらいあるのに、今日のこと話さねぇのは嘘だろ??」

わははは!と笑いながら、上機嫌のアランの心情はエリックもすぐに理解する。

公演でも第一部であれだけ大活躍したのみならず、プライドの予知も本命は防げたのだから。また明日も任じるとはいえ、少しの時間でも喜びたい気持ちはわかる。エリック自身、詳しくアラン達にプライド達の様子も聞きたいからこそ誘いに応じた。

一番隊での遠征任務中でもアランが仲間を集めて酒盛りをすることは珍しくない分、エリックも今日は充分心の準備はできていた。むしろ、飲み会前提の帰還だった。観客席にいた自分としても、サーカスでのプライド、そしてステイル、アーサー、アランにカラム、そして窮地に動いたハリソンでも話すネタは尽きない。しかもあの団長の話題も充分に有り余る。……同時に、あの団長の護衛をしていたアラン達は通常護衛よりもまた二回りは大変だったのだろうなぁと察した。


「エリック、お前も眠気を感じたら無理せず部屋に戻るように。この場の全員、体力馬鹿のアランに無理して付き合う必要はない」

「あ、部屋は全部消しておいて良いから。あともう寝るだけだし」

カラムからの配慮に、続いてアランも合意も含めて手を軽く上げる。

近衛騎士は二人ずつの部屋を与えられている。その中でエリックの同室は同じ隊であるアランだ。基本的に衣食住も含んで宿でも野営でも共同生活に慣れている騎士同士組み合わせに決まりはない為、一番違和感の少ない同士の同隊で同室になった。

カラムとアランからの気遣いに「ありがとうございます」と頭を下げるエリックは、自然と目が自分の部屋のある方向へと向く。あともう寝るだけだと言うアランに、今夜はやはり比較眠気はあるのだなと考える。初日には休息時間に仮眠を取る前に宿の外で鍛錬をしたと話していたのだから。


「なんなら今夜は私と交換しても良い。個室の方がゆっくり休めるだろう」

「!いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。むしろサーカスに潜入されていた皆さんの方が休養も必要だと思いますし」

「いや、一番必要なのはハリソンだろう」

「本当にちゃんと食って寝ててくれると良いンすけど……」

唯一個室になったカラム自ら部屋を変わるかと提案に、エリックも思いきり首を横に振れば続けての話題に上がるのはハリソンだ。

今この場に唯一いないプライド付き近衛騎士は、もともと飲み会には興味もない。アランからの誘いも一蹴した彼だが、今夜はそれに重ねて直接の上官であるアーサーからも「ベッドに入って寝て下さい!」と命令が下されていた。

つい先ほどのやり取りを思い出すだけで、アーサーは肩が丸くなるほどに深く長く息を吐いてしまう。潜入、というよりも姿こそ現さなかったハリソンだが、それでもほぼ休息なくプライドの周囲に目を光らせ続けていた。レオン達すら合流した夕食会ですら姿を現さなかったハリソンが、一日ぶりに食事を取るのもこれからだ。アーサーに押し渡された騎士団用の食事を手に、彼だけは飲み会ではなくそのまま部屋で睡眠という休養が必要だと判断された。

昨晩すら、眠るプライドとテントで同室だった彼は見張りを徹底しすぎてローランドと交代しても尚睡眠を取っていなかったのだから。アーサーからの問いかけに隠す必要なく答えたハリソンの返答は、アーサーに頭を抱えさせた。

「すぐにこれ食って寝て下さい!」「自分が部屋に戻るまで食わねぇで起きてたら駄目ですよ?!」「お疲れ様です!!明日までゆっくり休んで下さいね?!」と文字通り背中を押して部屋へ送り出した。


「本当良かったかアーサー?やっぱあいつ個室にした方がお互い気兼ねなかったろ?」

「いえ……一緒の部屋の方が飯とか睡眠とか確認できるしむしろ都合良いんで……。別に会話とかねぇの同室関係なく今更ですし……」

本来ならば一番共同生活に適さないハリソンが個室にすることが最もストレスも少なく済んだのは誰もが考えたが、アーサー自らが同室を志願した。

ハリソンの無茶な私生活の片鱗を知っている身としては、騎士団の食堂もない今は一緒に生活する方が効率も良い。気がつくといつもどこかに消えてしまうハリソンが、ちゃんと部屋に戻っているか確認できるだけでも安心できる。そして、結果今も同室で良かったと思う。

エリックも、帰ってきてからケネスにハリソンがローランドと連携せず負荷をかけてる件を言われたが、そのハリソン自身もまた己に杜撰だった為、結局二人でため息を吐いて終わった。

相変わらず世話の良いアーサーに声を出して笑うアランは、そうやってハリソンの体調管理をできるのもアーサーだからこそだろうと思う。自分達ではまず言っても「必要無い」で一蹴されることが目に見えている。

そしてそう考えるのはカラムも同じだった。


「ハリソンは年に一度身体を壊していた時期もあるくらいだからな。アーサーが入隊した頃には流石に改善されてきたが……」

一口分だけグラスを傾けてから告げるカラムの言葉に、もうアーサーは枯れた笑いしか出ない。

カラム達にとっては本隊入隊した後のハリソンが少しずつ自分の体調管理を本人なりにできるようになった成果だが、実際はハリソンの生活は昔と全く変わっていない。ただただアーサーに触れる度に体調が回復しているだけ。その証拠に、今年も一度体調を崩している。


アーサーとしては自分は必要なく体調を維持して欲しいハリソンに、食事と睡眠だけでも自分がなんとか制御できる部分は促したい。もうハリソンに無視されることも会話がないことも入隊時からのアーサーにとって、ハリソンと同室だからといって特別な緊張はない。

カラムの言葉に「そうだったんですね………」とエリックも苦く笑いながら相槌を打てば、アランからも「そうそう!」と組んだ足の膝を叩きながら応じられた。そのまま更なる証言者へと視線を投げる。


「なぁマートそうだったよな?」

「ジェイル、お前も遠慮するな。アランなどもう二杯目だ」


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