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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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唖然とし、


「あーーーオリエにやられた。ラルクと間違えてしがみつかれた。ユミル、お前らもやっぱ見てたのか」


団長ではなくアレスが声を上げる。あの時に限ってオリウィエルに触れてしまったことはお互い事故とはいえ、未だに煮え切らない。

今日、せめて自分がずっと正気のままだったらそれだけでももっとできることはあったと思う。


今度はアレスを洗脳してしまったことまで明るみになり、とうとうオリウィエルは全員からの視界から逃げるようにその場にしゃがみ込んでしまう。テーブルの足よりも低くなった彼女に、レラが眉を垂らして呼びかけた。団員の中では「いやお前カラムとジャンヌに謝れよ」「もう謝った」と軽くも聞こえるアレスとのやりとりが続く中、オリウィエルは笑い声すらも自分への皮肉に聞こえてしまう。

突然団長に呼び出されるままアンジェリカとも途中で引き剥がされ単身で事情を聞いたレラも、今はなるべく力になりたいとは思うが同時にすごい子がまた入団してしまったなと思う。

ラルクの変貌もそうだが、二部も裏方として演目を目撃したことを思い出せばオリウィエルの特殊能力の凄まじさはよくわかる。


「なるほどな~通りでアレスさん演目中違うと思いました。あれもオリウィエルの特殊能力効果ですか?つまりアレスさんは恋するとああなるん……」

「ッやめろ!!俺のは良いんだよ!!一生忘れろ!!」

突然合点がいったように投げ掛ける下働きに、アレスの顔が一気に焦燥に歪む。

大声で発言を打ち消すアレスに、プライドは小首を傾げてしまう。自分とカラムの演目での騒動ならばわかるが、アレスの演目でも何かあったのかと疑問に思う。当時自分はカラムと共に籠もって練習をしていた為、アレスの本番を二部では見ていない。


観客として目撃していた側は、すぐに察しがついた。

レオンから視線を向けられれば、エリックもこっくりと頷いて半笑いで返した。ジェイルとマートも、当時のことを思い出して今のアレスを改めて凝視してしまう。舞台では兜や衣装、髪の色まで変えていたが、それ以外でもまるで別人だと思う。

セドリックも変化は理解していたが、その他にも違いと言われれば検索対象が多すぎて少し迷う。


『彼の様子、明らかに一部の舞台とは違いましたね。観客には変わらず好評でしたが、……今までも演目でバラつきが?』

『いや……あんなのは私も初めて見る。…………だがやはり思い当たらない』

セドリック達と共に観客席にいた団長も、すぐに当たりは付いた。当時、アレスの変化が大きすぎてラルクの不調が紛れてしまうほどの衝撃だった。「おお!」と声を上げ、原因がわかった今は嬉嬉として思い返す。


「まさかアレスの観客サービスを見れるとは思わなかった。いや~驚いたが実に良かった!また是非やってくれ!!」

「いやだ絶対!!」

くわっ!とアレスが大きく目を見開き、口を「い」の字に歪める。

顔がぶわりと赤くなる彼は、今でも洗脳中の時を思い出せば死にたくなる。団長を含め全員に背中を向け、顔を隠すと両手でガシガシガシと掻き毟った。「あ゛ーークソ!忘れてぇ!!」と怒鳴りながら目を絞る。

今までの公演で、客にサービスなどしたこともない。団長にいくら言われようとも、そういうことは生理的に無理だった。……オリウィエルからの願いがなければ。


『こ、公演はちゃんと成功して欲しいよ?お金、もうないんでしょ?』


「〜〜〜っっ……」

団長にも以前から客へのサービスを求められていた上で、更に洗脳をかけたオリウィエルから〝公演は成功して欲しい〟と言われたことであの時は自分の恥を上回ってしまった。

ジャンヌとカラムを失敗させようという意思と共に、他の演目はその分成功させなければと考えた結果が、今まで一度もしなかった投げキスや手振りだった。

今まで愛想の一つもなかった氷の魔術師によるそれは、常連の目にも今までになく観客を沸かせ好評だった。

まさか団長に教えこまれながら逃げていた観客技術をこんな理由で使うことになるなど思いもしなかった。


「いいじゃ~んすれば!お客さん喜んでくれたらまた次も来てくれるしぃ。もういっそ公演の度にかけて貰えば??」

「ふざけんな次なんざ二度とねぇぞ」

とんでもない提案をするアンジェリカへ断りながら、そこで改めてアレスは振りかえる。アンジェリカではない、元凶であるオリウィエルの方にだ。

次わざとまた同じ手を使ってきたら今度こそ容赦しない、と。意志を込めて睨もうとしたが、既に彼女はテーブルの下に縮こまっていた。

猛獣達の尻尾でその場にいることはわかったが、今まさに彼女のことを話しているのに隠れやがってと一人舌を打つ。テーブルの下で「ごめんなさいごめんなさい」と小声で繰り返すオリウィエルをレラが介護していることはまだ知らない。

周囲の団員もオリウィエルの異変には気付いても大して気にしない。それよりも今はアレスの面白い愛想サービスの話題をと彼を弄る方向に話題が進んでいった。


「……受け入れンの早ぇな」

「同感だ。団長の意向なのもあるだろうが」

「ラルクも許して貰えているようなのは嬉しいけれど……」

ぽつりと呟いたアーサーの感想に、ステイルに続きプライドも頷いてしまう。

先ほどまで団長達のやり取りをできる限り口出しせずに見守っていたプライド達だが、あまりにも平和に状況が進んでいることに逆に顔が強張る。普通はもっと怒号が加わりオリウィエル反対派と賛成派で分かれてもおかしくない事態だ。ラルク一人についても、操られたからといって許せない者がいても無理がない。これだけの大所帯の中で、誰もそういう意見が出ないことは逆に異様にも感じられた。

誰も団長に反対意見を出さない。説明こそ求めても、それだけだ。さっきまで食事に手もつかず緊張を張り巡らせていたのが空しくなる。

むしろ一番事態を重く受け止めているのが事件を起こした張本人であることに、プライドはなんともいえない気持ちになった。


ゲームでは早々に死亡した設定の団長だが、むしろ殺してしまったことがオリウィエルにとって最大の過ちだったのではないかと静かに考える。

もし団長を殺さなかったら、最終的には彼が力業で全員仲良しルートに連れて行ってくれたのではないかと考え、…………首を横に振る。今の彼女ならばそうだろうが、ここから性格が捻くれれば団長にも手に負えるとは思えない。

屈んで覗いていても演技しているようには見えない怯えた女性はゲームのラスボスとは別人だ。まだグレシルの方が面影があったと思う。

今のオリウィエルでぎりぎり許される程度でも、ゲームのラスボスのオリウィエルの非道さこそ絶対こんな軽く流せるものではないという確信がある。具体的に全ては思い出せずとも、キミヒカのラスボスがそういうものであることは自分が一番よく知っている。

少なくとも、現段階でもゲームならばラルクに団長を殺させ、ラルクを人質にアレスを立場的に支配して従わせている女だ。

そこまで考えていれば、おもむろに目の前に皿が差し出された。顔を上げれば、カラムだ。プライド達と同じくさっきまで大皿にも手を伸ばそうとすらしなかった彼が、小皿にとり分けるべくプライドへの皿から手に取った。


「恐らくラルクさんとアレスさん本人が先に了承したのも大きいでしょう。彼らが騒ぎ立てれば団長の命令でもこうはならなかったかと」

「あとここのサーカス団自体わりと問題起こす人多かったみたいなんで、慣れもあるかもしれませんね」

カラムが皿に盛った料理を、アランが受け取り毒味を手早く済ましてから配布する。団員達が食べているところで安全性は保証されているが、それでも万が一のことはある。ただでさえここはラジヤ帝国だ。

団員達も団長やアレス達に注目して全く視界にすらいれない。先輩二人の動きを見習ってアーサーもステイルの分をよそおうとしたが、カラムの手の方が早かった。「すみません……」と細い声で先輩二人に謝罪をしながら、せめてアランとカラムの分だけでも自分がよそう。


よそい初めてくれる彼らに礼を言いながら、プライドとステイルはアランへ顔を向ける。

「問題?」と気になった部分をそのまま返せば、アランは毒味用のフォークをまた変えながら苦笑した。

当時、自分が入ってすぐに団員達の話に耳を傾けていたアランはアレスやオリウィエル達だけでなく元の辞めていった団員の愚痴も耳にしていた。


「入団してすぐ他の団員の女とデキて二人で出て行ったとか、金盗んで逃げてまた路頭に迷って戻ってくるとか、客半殺ししたとか出て行く前に憂さ晴らしで大道具壊していったとか。むしろ戻ってくるだけマシみたいな印象でした」

おぉ……と、これにはプライドも唖然とする。カラムも一秒手が止まった。

アランと同じく団員達の話は色々と収集したカラムだが、そういった問題を起こして出て行った人間の愚痴はあまり聞かなかった。もともと入団して探るのは現団員と、そしてオリウィエルや団長、サーカス団全体についてのことだったのだから。


今回も団長の意志の元、無理な準備期間で開演を余儀なくされていた団員達だが、既にいくらかの難航は経験済みの猛者なのだとステイル達は理解する。

アランとカラムと違い、演者になるまでは団員全員と大して関わることもできなかったことを思い返せば団員達にとっても自分達も現れてすぐ消えるのという感覚だったのだろうと考える。

アーサーが料理の皿をアランとカラムの前に置き終われば、そこでカラムからアーサーの分の皿が直接手渡された。毒味が必要ないアーサーの皿はこんもりと肉も大きく盛られていた。

今回は、サーカス団員の食事とはいえ支払いはレオン達の為自分達に取り分けるのにもそこまで遠慮はない。なにより、団員達と同じく自分達も空腹なのは変わらない。

全体から遅れて食事を始めるプライド達をよそに、小腹を埋めた者から団員達は白熱していく。


「ていうかぁ、それでさっき私だけ仲間はずれにしたんだぁ?先に言ってくれればいいじゃーん」

アンジェリカからの苦情に、アレスが馬鹿言えと返す前にカラムが無言で首を横に振るのをプライドは見た。カラムもなかなかアンジェリカを理解したようだと、上目で見つめながら思う。

団長がレラを連れる際同行したアンジェリカだが、結局ラルクとアレスに強制的に剥がされた。問題を起こしたアレスがラルクと仲良く現れたことも驚いたが、それ以上にラルクが以前のように自分に話しかけてきたことにアンジェリカも本心では虚を突かれた。

「後で説明するから!!」とラルクに言われ、団長にも謝られ仕方なく一度離脱したが事情がわかった上でやはり不満に思う。しかし、あそこでレラに説明した通りにアンジェリカにも話し団長に危害を加えたと少しでも勘づかれれば、間違い無く状況は今よりもこじれていたとカラムは確信する。

ラルクは操られていた、そしてそのラルクが団長を追い出した。ライオンの件を抜いてもそれだけでアンジェリカは容赦しないと鮮明に想像できた。


Ⅲ147.159

Ⅲ55

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「ていうかぁ、それでさっき私だけ仲間はずれにしたんだぁ?先に言ってくれればいいじゃーん」 オリウィエルからの苦情に、アレスが馬鹿言えと返す前にカラムが無言で首を横に振るのをプライドは見た。カラムもなか…
“2部で様子のおかしかった演者”って、アレスだったんですね⁈ てっきりラルクとばかり思ってました〜 確かにアレスの投げキスは希少かも…笑笑
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