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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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Ⅲ155.騎士隊長は戸惑い、


「ッいや!なんでいつも勝手に決めるの?!お願いだからみんな追い返して!!」

「すまないっ……僕を嫌ってくれても良い、約束する絶対守るから少しの間……!」


団長テントへ突入したアランは、最初目にした光景が想像通り過ぎて逆に少し引いた。

外観から判断してもそれなりの広さはあるだろうとはわかっていたが、テントの中は物が酷く散乱していた。アランが入った時点で棚も椅子もひっくり返り、床は足の踏み場がなくなっていた。

騎士としてどんな環境でも戦闘や任務ができるように鍛えられているアランでも、足音を立てずに進むのは難しいほどの物量だった。まるで敢えての罠のように花瓶の破片が散らばり水が零れ花の束が散らばっている。


そして最奥の天蓋付きベッドでは、女性が仰向けに転がりジタバタを手足を振り回し、そして見慣れた青年がその上に覆い被さるようにして彼女を押さえようと苦戦していた。

何も知らない第三者が見れば、間違い無く女性が暴行されている現場である。


散乱物やラルクの影で女性の姿ははっきり見えなかったが、事情を把握しているアランは落ち着いて対応は決めた。

これも自分を引き寄せる為の罠の可能性もある。足下に細心の注意を払いつつ、気配を立てないように少しずつ現場へ接近した。男女の揉み合い現場など、騎士として人身売買組織にも突入するアランには珍しくないが、頭の隅では主犯が女性の方なんだということを二度ほど再確認した。


自分が歩み寄っても暫くは気付かず揉み合いを続けるラルクの横顔は、頬に爪痕が三本立っていた。

犯人が猫ではないことは、切れ味の中途半端な生々しい傷ですぐにアランも理解する。男女の揉み合いというよりも、痴情のもつれに見えてくる。

特殊能力が全て本人に都合が良いものではないことはアランも知っているが、支配下の相手とここまで諍いができるものなのかと少し驚いた。

「話を聞いてくれ!」と繰り返す様子から、あくまで彼女を説得する前に暴れられたから押さえつけているのだろうとは察した。暴れる彼女の手を押さえ、ベッドに押さえ込むラルクはアランがすぐ横に立っているのもオリウィエルに集中して気付かない。

先にアランの存在に気がついたのは、ベッドに押しやられたオリウィエルの方だった。


「!!!いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁあああああああアアアアアアアアッッ!!!!!!」


新たに支配下に置くことが叶ったアレスという味方を欲して視線を泳がせれば、すぐ横に立っていたアランへ流石に気がついた。

今まで自分とラルクしかいないと思っていた空間に見知らぬ男が存在していたことに、目を見開き悲鳴をあげた彼女はさっきまで爪を立てていた相手であるラルクへ逆に両手足でしがみ付いた。肌寒い季節の野外テントであるにも関わらず、殆ど下着同然の寝巻き姿だったことにアランもそこで気がついた。


ラルクも彼女の顔色と悲鳴にすぐ追ってアランの存在に気がついたが、彼女に両手足でしがみつかれ一瞬バランスを崩しそのままベッドへ潰れ倒れた。

細い女性相手とはいえ全体重を突然不安定なベッドの上で掛けられれば、当然すぐに侵入者への迎撃などできるわけがない。鞭を掴むことすらできず彼女へ崩れるラルクに、アランもすぐには動かなかった。

引き離すことも攻撃することも簡単だが、万が一のことも考えてオリウィエルに触れる危険は避けたい。ベッドに背中を預け文字通りラルクに絡みついている彼女を相手にそれは難しかった。

しかも、それからラルクが無理矢理彼女を引き剥がし自分に鞭を構えるまで、彼女は永遠と金切り声の悲鳴を上げ続けていた。

ラルクを相手に両手を使う必要もないアランは、正直に自分の耳を塞ぎながら一度ベッドから距離を取った。


「ッ入ってくるなと言った筈だ!!」

「いや、明らかに物騒な物音が聞こえたんで。ちょっと様子を見に来ただけだったんですけど」

ギラリと目を鋭く研ぎ澄ませベッドから転がるようにして降りたラルクに、アランも何かを言っていることは察しもついた。

しかしオリウィエルの悲鳴にかき消えて耳を塞ぐ手を緩めてもあまり聞こえない。

「出て行け!!」と怒鳴るラルクが鞭を振り回せば、最初はその場で全て跳ね避けた。後退しつつ足下をガッシャンガッシャンと踏み鳴らすアランと、自分を追いかけるように迫ってくるラルクが腕を大きく振る所為でさらに物が崩れ倒れる。

このまま一度穏便に撤退も考えたアランだが、そこから判断の切り替えも早かった。


明らかに自分の発言に聞く耳を持たず鞭を振るう青年は、特殊能力を受けている被害者であることを除いても話し合いできる状況ではない。しかもさっきの様子から見て、ここで一度退散してもまた怯える彼女の癇癪に付き合い続けるか「勝手に押し入ってきたお前達が悪い」と約束を反故にされるかもしれない。

何よりも、このまま再びあの揉み合いになれば、本当にどちらかが死ぬか重傷を負う事態に発展すると、アランは判断を決めた。

もともと自分が突入したのもその為だ。そして予想通りの縺れ具合だった。


ラルクが大きく鞭を振るいきった直後、真正面に立ったままのアランはその死角から回し蹴りを放った。背後に回り込む必要もなかった。

最低限加減した一撃に脳を揺らされたラルクは、その場で意識を失った。両手を耳に当てたままラルクを無力化したアランが、そこで初めて両手を使う。

崩れるように倒れたラルクを受け止め抱えあげれば、ちょうど金切り声のような悲鳴も止まった。視線を向ければ、さっきまで悲鳴を上げていた彼女が今は呆然と目を見開き固まっていた。

ラルクを挟むよりもこのまま相対した方が手っ取り早く会話ができそうだなと思い、彼女へと向き直ったアランだがそこからがまた難航だった。


「あのー、ラルクさんから聞いたと思いますけど、少しお話しできます?」

まずはあくまで言葉遣いも選んで呼びかけた。

ラルクを両腕に抱き上げたまま、他に安全地帯も床もない以上はと彼女の座り込むベッドへ歩み寄る。もうそこに寝かせるしか置き場もない。

しかし、アランからの静かな声掛けに彼女から返事はなかった。アランが一歩、二歩と近づいてくるごとに倍の動きでバタバタとベッドの端へと尻をついたまま後退る。自分から目を離さない彼女が、睨んでいるのではなくただただ怯えて目が離せないでいるようにしか見えない。


油断させる為の演技かとも考えたアランだが、それでは自分から距離を取っては意味が無い。

彼女のあまりの格好に、毛布か上着を羽織るように促そうかとも考えたアランだが全てが今はベッドから床に落ち花瓶の水や破片まみれでとても渡せる状態のものがなかった。新しいものが入っているのだろう棚も、今は倒れて取り出せない。


一歩ずつ歩み寄り、再びベッドの前に戻ったアランは隅に寄った彼女が大きく開けた範囲にそっとラルクを横たえさせた。

その間、彼女が飛びかかってくるかも警戒したが、変わらず隅に座り込んだまま固まるだけだ。自分の膝を抱え込み、ガタガタと震えながら顔を蒼白にする彼女は今も自分から一瞬も目を離さない。

この様子は、と。彼女の頭の先から足下まで確認しながらアランは首を捻りたくなった。どう見ても、今の彼女の全てが〝そう〟としか思えない。

だが、それを直接尋ねるようなことはできない。あくまで一定の距離は取ったまま、ベッドの端の彼女へもう一度呼びかける。

怯えさせないように、なるべく小さく落ち着かせた声を意識した。


「……えー、と。ラルクさんに襲われてるようにも見えましたけど?大丈夫ですか」

実際は目に見えてそうではないことはわかっているが、敢えて彼女の都合の良い判断を言ってみる。ここで被害者のふりをしてくれれば、自分もある程度彼女の腹の中を警戒できる。


しかし、オリウィエルはアランの話途中から首を横に小刻みに振り、大丈夫かの問いになった途端また固まった。

パクパクと口を何度も動かすが、まるで声が出ないように空っぽだった。それどころかまるで酸欠でも起こしたように蒼白の顔がさらに白くなっていく。

話したくても話せない。そう全身で訴えるように次第に目が再び潤み濡れていく彼女に、少なくとも舌はちゃんとあったよなとアランは考える。さっきラルクに叫んでいたことから考えても言葉がわからないわけでもない。


しかし、何か言いたげな彼女は口を開いても息の音だけで声ではなく震えを大きくしていくだけだ。まるで釣り上げた後の魚だった。

予想していた対談とは大きく異なった状況に頭を掻いてしまえば、途端に彼女から「ヒッ!!」と短い悲鳴が上がった。

深緑の頭を庇うように両手で抱え、代わりに抱えていた膝がくずれた。直後にアランもしまったと自分がやったことには気がついたが、それよりも彼女が本格的に泣き出したことに口を苦くする。

抱えた頭のまま俯き、さっきまでが忘れていたかのように大粒の涙をボロボロとこぼし震え出す彼女はどこをどう見てもこちらの隙をうかがっているようには見えない。


「ひっ……ぐっ……ぁ゛ぁ゛…………っ………ひっ……」

「………………」

まずい。と、アランもそこからは彼女に呼びかけることを一旦止めた。

とうとう無防備過ぎるままに泣き出した彼女は、もう話せる状況ではなくなってしまったと理解した。頭では彼女こそがラルクとアレスを操っている特殊能力者で、今回の黒幕で、しかもプライドの予知によれば今後の凶悪犯罪を起こし得る人物だと巡らせる。

だからこそ今も彼女へ容易に触れないし、接近しない。どこまでが彼女の特殊能力の事実かはプライドすらも確証を得ていないのだから。


しかし、騎士として自分の目でみた彼女を判断すれば、今すぐ彼女にベッドのシーツを剥がしてでも布を羽織らせたい。

掛ける言葉も、想定していたような言及や問い詰める言葉ではなく〝被害者〟への言葉ばかりが頭に浮かぶ。口は達者な方のアランだが、今は少しでも不用意な発言をしないように意識的に口を閉じるのがせいぜいだった。黒幕である彼女にであれば平然と言えた言葉も、今の彼女の前では独り言でも言いたくない。

「説明しろ」どころか「あー」や「えぇ~」という一音、溜息すら、今は相手を傷付ける言葉として騎士の自分が制止する。

騎士として、こういった相手とのやり取りも慣れているアランだが、今だけは自分よりも手慣れている相手を呼ぶことを決めた。



「……お~い、カラム。ちょっと入ってきてくれ」



まず最初に助けを求めたのは、三番隊騎士であるカラムにだった。

一番隊の自分よりも、そういった対応も慣れている上に個人的にも紳士的なカラムなら良いだろと指名した。


明日、ラス為書籍11巻発売致します!!

その為、明日は特別話になります。よろしくお願いします。

◉新作「純粋培養すぎる聖女の逆行」略して「ぴゅあ堕ち」がただいま連載中です!

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こちらも是非よろしくお願い致します!

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