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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
侵攻侍女とサーカス

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そして値踏みをされる。


「うちはなぁ、アンガス逃げた時もう空中ブランコは駄目だなって一度諦めたんだよ。あいつだって別んとこで何年も訓練してたから身に着けたんだぞ?それをお前たった一日であんだけできて今更変えるなんざ誰も許さねぇよ諦めろ」


アレスの言い方が少しねちっこい。

ジトリと据わった目でアラン隊長に詰め寄るアレスにステイルが「もう他の皆さんも御存知なのですか」と確認を取れば、片手をピンと伸ばして訓練中の団員達の方を示した。

目を向ければ、アレスに示されたのに気付いたように団員達もそっと目を逸らし訓練に入り始める。


アレス曰く、昨日アラン隊長は見事に同情破りをしまくってたらい回しにされた際、アラン隊長にほぼ初見で追いつかれた人がこの場にいる人達も含めて殆どらしい。

だからアラン隊長がここで空中ブランコがを最初に練習した時は、この場の皆さんもわりと本気で口頭で説明監督したと。そして見事期待に応えてアンガスさんの技を口頭で理解できた分はほぼ完ぺきにマスターしたアラン隊長は、全員一致で空中ブランコ担当に決まったと。

もともと人気が高い演目の空中ブランコは、アンガスさんの時もたった一人で演目を貫いたほどだ。

私もサーカスといえばで空中ブランコはすぐに思いつくくらいだし、目玉演目を手放せないサーカス団の気持ちもわかる。


「これでアンガスもいりゃあ、やっと二人のできたんだけどな」

「いやだからジャンヌさんを」

「ジャンヌは他の演目だっつってんだろ。うちだって金かかってんだからアラン一人で目立てる演目よりジャンヌで客満足させる演目もう一個増やす方が良いんだよ!!」

腕を組んで肩を落とすアレスに、アラン隊長が何度目かの交渉を告げれば、とうとうアレスの黄色の目がとんがり出した。

途中から声まで荒げ出す彼が、右手の親指と人差し指で輪っかを作ればやっと色々理解する。


つまり女性キャストが足りない今、アラン隊長一人で客を沸かせられる空中ブランコよりも他の演目に私を使いたいということだ。

なんとなく雰囲気や身体つきから肉体労働担当しますというイメージだったアレスだけれど、やはり流石幹部というかちゃんとサーカスの採算についても考えているんだなぁと思う。

そう考えると、いきなりぶっつけ明日に本番しかもサーカス初心者五人に演目参加まで決定されたアレスにはわりと深刻な状況なのだろう。少なくともアラン隊長は一人で空中ブランコを成功させることができるから、私は女性キャストが必要なところに回されるのも仕方ない。

わかりました、と。ここは私から了承を伝える。アラン隊長と一緒に空中ブランコなんて花形をできないのは残念だけれど、大事なのはサーカス団の採算と成功だ。それが結果としてオリウィエルにも、そしてラルクにも繋がる。


「私にできることであればどの演目でも構いません。けれど時間はないので、アランさん以外の方ですと正直上手く連携できるかも不安です」

何でもやりますと、そこは受け止めながらでも不安もこっちから言わせてもらう。

アラン隊長と一緒なら安心とは思ったけれど、これから始めましての方と明日本番で上手くやれるかは自信もない。ステイルも言ってくれていたように、やっぱり知っている人じゃないと安心できない。それに、……最悪の展開として実は組んだ人がラルク側の人だった場合、私がどう頑張ろうと失敗する可能性は高い。

アレスもこちらの意見は鑑みてくれるつもりらしく、腕を組んでから少し唸った。さっきも私にやらせようと考えた演目はあったらしいけれど、きっとそれはやっぱりペアになる前任者がいるのだろう。


「僕から提案があります。アレだけでしたら、ジャンヌさん一人も可能ではないでしょうか」

そう言って顔の位置まで手を上げたのはステイルだ。

アレ?とステイルが手で示した先に私達は同時に顔を向ける。私一人、という単語にちょっぴり不安もよぎったけれど、指示された先の意味を理解すれば腑に落ちた。確かにあれならば、今の私一人でもなんとかなるかもしれない。


具体的な演技方法はわからないけれど、取り合えず怪我はせずに済みそうだ。

当事者である私から「良いわね」と言えば、アレスも頭を掻きながら「まぁ……あれなら」と籠りながらも肯定を返してくれた。同じような器具が荷車の中にあるから先にそちらで練習してからと聞けば、早速練習してみたくなる。

流石ステイル、早々に的確配所してくれた。これなら演目一つ稼げるしラルクの条件もなんとかなる気がする!

残るステイル……は、もう間違いなく器材さえあれば大丈夫だろうから、残るはアーサーだ。

カラム隊長は団長さんが決めてくれているらしいし、事情を話して早々に決定と練習をさせてもらわないといけない。


「ならアーサー一緒にやろうぜ。お前もあれくらいならなんとかなるだろ?」

「いやできるとは思いますけど、あんま目立つのはちょっと」

「大丈夫大丈夫。演目中は顔隠すのは良いって聞いたから。二人でやったら目立つのも半分で済むって!」

なっ!と、アラン隊長からの二次スカウトだ。

アーサーの肩に腕を回し、今度は何の問題もなくぐいぐいと自分の方に引き込む。相手がアーサーでやっているのがアラン隊長な分は平和で仲の良い光景だと第三者目線で思う。…………二人で半分、どころかこの二人だと二人で三倍目立ちそうな気もするけれど。

でも、アラン隊長に誘われるままに「それなら……」と控えめながらも頷いたアーサーに、ここは黙っていようと考える。

私達と違ってフィリップの特殊能力を受けていないアーサーだけどフリージア王国では一部に有名な聖騎士だし、うっかり他国の王族や貴族が客に混じっていたら大変なことになるし目立ちたくない気持ちはわかる。……いや、単に本人の性格の理由かもしれないけれど。

でも、サーカスといえば正体不明みたいな仮面とかのイメージもあるし大丈夫だろう。

空中ブランコなら目立ちはしても高い場所に遠目だからアーサーと気付かれる可能性も他の演目よりは比較低い。……最悪の場合はま優秀従者フィリップにお願いしよう。


それに、アーサーも興味がないというわけではない気がするし。


ふと、さっきアラン隊長が空中ブランコを見せてくれた時を思い出す。

空中ブランコ中は私もアラン隊長に夢中だったしわからないけれど、アレスが私の肩に腕を掛けた時。誰より先に声でハリソン副隊長に待ったをかけてくれたアーサーだけど、やっぱりいつもなら既に高台から降りてきても良いくらいだったと思う。むしろ、アラン隊長に続いて高台から飛び降りてもおかしくなかった。

きちんと空中ブランコを回収して元の位置に戻していたのは彼らしいけれど、……多分アラン隊長が使い終わった後にちょっと興味が湧いて手に取っていたんじゃないかしら。

あれだけすごい技をアラン隊長に見せて貰ったら、私と同じようにちょっとやってみたい欲が出るのは当然な気がする。アラン隊長と同じくらい運動神経ばっちりの騎士の才能の塊のアーサーだもの。

騎士とサーカスは全く違うけれど、身体を動かすという意味では興味が湧く部分は大きいだろう。


「あのなぁ、見ただけじゃ簡単に見えるだろうけど結構危ねぇからな?」

「大丈夫大丈夫。アーサーには見た以上に簡単ですから」

サーカスは甘くないと言わんばかりに声を低めるアレスに、アラン隊長がバシバシとアーサーの肩を叩いた。うん事実。事実だけれども!!

ちょっぴりサーカスに喧嘩を売る言葉に聞こえないかしらとヒヤヒヤするけれど、ステイルも同意するように大きく頷いていた。

アーサーに至ってはバシバシ叩かれながら視線がまた空中ブランコに向かっている。思ったよりもやっぱり楽しみらしい。

アラン隊長とアーサーの空中ブランコ……想像するだけですっごく格好良いだろうしすごく見てみたい。なるべく私の演目と順番が離れていれば良いなとこっそり思う。許されるならば客席で見たい。

続けてアレスが「フィリップは」と、次々決まる私達の演目に残されたステイルを心配して投げかける。けれど予想した通り全く心配のないステイルは「ああ、大丈夫です」とにこやかな笑顔でアレスに向き直った。


「僕のことは御心配なく。器材と段取りさえ団長と打ち合わせできれば、練習も大して必要ありません。今のところ〝密室から脱出する演目〟をお持ちの方はおられないようですし?」

良いなぁぁ~……。

こっそり、本当にこっそりステイルに思う。アレスが「そんなのいるわけねぇだろ」と眉を寄せる中、私達の中で一番サーカス向きの特殊能力のステイルが羨ましい。私の前世なんて〝瞬間移動〟なんてそのまま手品の題目であったくらいだ。いや〝人体消失マジック〟だっただろうか。どちらにせよ、ステイルがそれで失敗する方が難しい。

私も演目が見つからなかったらステイルの助手役でお願いしようと思ったけれど、多分あのラルクの言いっぷりだとちゃんと主演張るぐらいの演目貢献しないと駄目だろう。

この世界にも奇術や手品とかの概念は存在するけれど、取り合えず今まで回った中にもそういう手品系の練習は目にしなかった。それらしい小道具はあったし、過去に全くいなかったわけではないのだろうけれど少なくとも今はいないのかなと考える。

詳しいことは団長との相談でと、一度切るステイルにアレスも疑いの眼差しのままくるりと背中を向けた。「団長んとこ戻るぞ」と言う彼に、さっきここが最後だと言っていたし早速これからラルクとの条件と演目相談だなと知る。


「団長と打ち合わせ終わったら早速演目やって見せろよ。すぐ見せれるもんだったらジャンヌはアレ持って宣伝回りにも行くからな」

う゛っ。

演目見せろ、は仕方がないとはいえ、早速それでお客さんの前かと物怖じしてしまう。

でも確かにアーサーとアラン隊長の空中ブランコは持ち歩けないし仕方がない。ステイルのだってタネはシンプルでも人に見せる用にはやっぱり手品に見えるように大道具が必要になる。

宣伝回りも最初からアレスが言っていたことだけれど、まさかの私だけ人前にも早速なのはやはり緊張する。ちゃんとどういうのやれば良いか出る前にステイルとアレスとも確認しなくちゃ。

大丈夫大丈夫大丈夫、と。手の平に人と書きたくなりながら自分に言い聞かす。式典だって人前に立つことだって目立つのだって普通より慣れている筈だ。


お邪魔しました、頑張ってくださいと。アラン隊長の元を一度後にして、訓練所を出る。

出口へ向かう途中でもう一度団員さん達を一人一人目で確認する。都合良くというか、皆こちらに顔を向けてくれたから顔を確認しやすかったけれど、残念ながら記憶に引っ掛かる人はいない。

最初入ってきた時は全然こちらに興味なしだった人達だけれど、今は何人かにこやかに手を振り返してきてくれた。やっぱりアラン隊長の知り合いと思われたのが印象として少し変わっ


「あの子、空中ブランコできるくらい動けるって本当か」

「アランの知り合いみたいだぞ。どっかで口説いたかそれとも元カノか?」

「いや動ける女なら同類の可能性もギリある」

「こっち側の女なんか久々だなぁ。アンガス達帰ってきてもあの子だけは欲しいな〜〜」

「取り敢えずアランに取られなくて助かったな。アレスのああいうところだけは偉いよ本当」

「俺ら、女演者待ちしてもう何年だ?」

「団長に今回こそ頼むぞ。若くて高くて細いとか最高か」

…………なんか、なんか聞こえるけども!!!

こそこそ話している声が微かに耳に届く中、なんだかにこやかどころか視線も熱いし私のことが言われている気がしてならない。

注目というよりも値踏みされている感覚に肩が強張れば、ステイルがそっと位置を彼らの視線から盾になる位置に移動してくれた。アーサーもぴたりとくっつきそうなくらい斜め背後から距離を縮めて歩いてくれる。「失礼します」と言われ、今度はアーサーが腕を伸ばし遠い方の私の肩をそっと自分の方に引き寄せてくれた。「あんま目ぇ合わせない方がいいですよ」と忠告までされ、やっぱり私の話だったらしいと察する。

悪口ではなかったようだけどにこやか笑顔の裏で値踏みはなかなか怖い。挟んでくれる二人のお陰ですごくほっとする。

さっきまで売られていく子牛の気分だったけれど今は山賊の中を歩いているような気分だ。学校の新入部員獲得戦争の感覚にも似ているかもしれない。さっきのアレスの言葉の意味をひしひしと感じ取る。

ここまで回って案内してもらった中でも、サーカス団に女性は少ないとはいえ演者も含めて何人かいる。……けれどその中で体育系の女性は私が思ったよりもレアケースなのかもしれない。


「…………やっぱ。ジャンヌは潜入中一人演目で」

「気が合うな。俺は最初からそうして欲しい」

ぼそぼそと資金距離でしか聞こえない声で言い合うアーサーとステイルに、私も顔が半分笑ったまま聞き従うことにした。


……まさか、これがまだ先ぶれのほんの一端とは思わなかった。


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