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【アニメ2期決定!】悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。〜ラスボスチートと王女の権威で救える人は救いたい〜  作者: 天壱
嘲り王女と結合

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Ⅱ524.貿易王子は思考し、


「レオン様。フリージア王国からも荷が届いております」


朝食を終え、口元を布巾で拭ったところだった。

従者からの報告に、僕もすぐに何が届いたかは理解した。フリージア王国、という響きを聞いただけで胸が浮き立つ。

僕の部屋へ運んでおくように指示をし、早速荷物の開封へと席を立った。予定通りの到着だ。


廊下を歩く間も、僕宛ての荷物が届いたと報告を受ける度に僕の部屋か従者達で先に安全確認後にかを指示する。

ある程度は指示をせずとも処理をしてくれるけれど、それでも頻繁に届く僕宛ての品は彼らだけで決断できる量ではない。城の人間達にとって朝から忙しくも重大な仕事の一つだ。単純に献上品のやり取りだけならこうはならないのだろうなと思う。

貿易国としてもともと荷が毎日届く身ではある。貿易国として名が知れ渡れば渡るほど、輸入品候補の品が送り付けられる量も多い。無機物なら試すのも簡単だけれど、食料品が一番大変だなと思う。

酒類はヴァルと有効利用することができているけれど、他の食品類は一口だけ試して有無を決めたらあとは腐敗する前に処理しないといけない。

我が国を通し、海の向こうやフリージア王国のような大国へ売りつけて欲しい国は毎日絶えない。父上も交易関連は僕に一任してくれることが増えたから、父上宛ての品でも実際は僕の手元へ運ばれる品も多い。


「レオン様。本日分の書状もお部屋にお届けしておきました」

そして書状。

従者に一声返し、執務室へと戻れば机の上には三種類束ねて分けられた手紙の山。壁際には荷物がいくつも積み上げられていた。

基本的には外交関連が殆どだけれど、民からの手紙も多い。書状の数だけは父上より僕の方が上回っているかもしれない。

年齢が年齢だからか、それともアネモネ王国の名が貿易やフリージア王国の式典や社交界を通して広まったからか。各国からの女性関連の書状も多い。

一応差出人は控えているけれど、未だに全部に目を通そうという気にはなれない。届いた手紙も最初から中身を改めた従者に外交関連か、交際関連か、それともの三種類に大きく分類して貰っている。

そして分けられた分類で最も枚数は少なく、僕が一番最初に目を通すのが民からの手紙だ。


国で困ったことがあれば、何か助けが必要であればいつでも城の門は開いていると民には伝えて回っているお陰で、最近は少しずつだけれど本当にそういう手紙も手元に届く。

流石に直接城の門を叩いて会いに来てくれる民はいないけれど、こうして手紙でも勇気を振り絞ってくれたことは前進だ。

ヴァルからも昔「王族サマに直談判できるような肝の庶民がいるとも思えねぇがな?」と言われてしまったことがある。助けを差し伸べると言っても、直接城の門を叩ける人は少ないとその時に気付いた。あれだけ城下に降りる度話しても、そういう意見が無いということはそれだけ我が国に不満がないということかなと、少し驕りそうになっていたからあれは良い薬だったなと思う。きっとヴァル自身はそんなことをしてくれたつもりはないのだろうけれど。


今はこうして時々、国の生活について手紙を守衛に預けてくれる民がいた。

井戸が欲しい、港際は錆び付きが酷い、輸入品をもっとアネモネ王国にも卸して欲しいといった要望書だ。中にはわざわざ手紙でアネモネ王国が住み良い国だということだけ書いてくれるものもあった。他国からのどんな賞賛よりも女性からの甘い愛の詩よりもずっと心が温められた。


そして民からの直接僕宛ての品。貴族でもない平民からの品は特に安全性を考慮して、必ず城の人間の手で確認された上で僕の部屋へ届けられる。

こっちの方は手紙よりもずっと前から僕の元へ届けられることも多かった。視察で訪れた店からの礼の品や、民が畑でとれたという野菜、海で珍しい魚介がとれたとわざわざ朝一番に届けてくれた品もある。

自慢の酒だ、パンだとただ僕に味わって欲しいと届けてくれる品全て、断らずに僕の元へ届けて貰うようにしている。高価な輸入品よりもずっと僕にとっては味わうのも包みを開くのも楽しみな品だ。一目見るだけでも民の笑顔や暮らしが浮かぶようだから。


「……これが、例の品かな」

僕の机の中央。そこにきちんと左右幅もそろえた状態で置かれた箱は、さっき朝食後に報告されたフリージアからの品だ。

手紙も読みたいし他の品も確認したいけれど、やっぱり今一番確認したいのはこれだった。厳重に梱包された箱を開き中身を確認すれば、いくつかの中で見覚えもある形状の品が姿を表した。

両手で挟むように持ち、箱から取り出し机に置き直す。何度みても飽きないそれは、包みを剥がせば以前買い取り飾った品と寸分狂いない煌めきを放っていた。

同封された書状を摘まんでから、僕は一度椅子に落ち着く。



〝ネイト・フランクリン〟



記載されたその名を最初に目で通せば、フリージアで紹介された狐色の瞳の少年を思い出す。

初めて会った時は悲しい目をしていたけれど、最後に会った時には周囲にいる子どもと同じ普通の少年だった。

彼による発明が納品日の翌日である今日、無事我が国の使者の手でフリージア王国から届けられていた。箱の中には発注通り合計五個の品が一つ一つ傷がつかないよう詰め込まれている。本当に二週間で五個用意してくれたんだなと改めて思う。

プライドのお陰で得られた取引だったけれど、本当に凄い子を紹介されちゃったなと今でも思う。本当なら二週間に発明一つでも早いと手を叩かれる速さなのに。疑ったわけではないけれど、二日に一つ発明ができちゃうのが本当だと目の前で証拠を突き付けられたことに一人笑ってしまう。


同封された書状に目を通せば、カラムが五つ回収した品をフリージアの城で受け取ったこと。そして彼からの報告でも問題なくネイトは僕からの試験用紙に全問回答ができていたとのことだった。

良かった、これでもう履修科目が何だったか忘れたなんて報告が来たら困ってしまう。もう学校では選択授業が決まっている頃なんだから。


 

『カラム隊長にお任せしたいと思うのですが』



ステイル王子からの依頼も、本当に良い話だったなと思う。

もともとはアネモネ王国の使者か騎士を直接ネイトの元へ派遣するつもりだったけれど、やはりカラム以上の人材はいない。

彼がネイトに心を預けられている様子を僕も見たし、彼もカラムからならば家に訪れられても安心だろう。我が国の騎士や使者が信用できないわけではないけれど、伯父である男に酷い目に遭わされた彼にとっては見知らぬ大人に家に来られることは嫌な想いになるかもしれなかったから。

一度〝そういう〟目に遭えば、同じ種類の人間から同じ眼差しを受けることに過敏になるのは当然だと、身をもって僕も知っている。ただでさえ彼はまだ十三の子どもだ。


講師をやっていたカラムならネイトの扱いも慣れたものだろう。

彼の人となりを考えても、知り合いだからといって不正を行うようにも思えない。……実際、この書状にもカラムから「ただし、ネイト自身の名前の綴りは間違えていた」という報告が記載されている。むしろ彼はそういう不正を許さない類いの人間だろう。


「他の三つは良いとして、……これはどう売ろうかな」

一つ一つ、彼が用意してくれた発明を包みごと取り出して確認をしながらやっぱり一番目につくのはこの品だ。

スイッチ一つ押すだけで鮮明な姿絵が一瞬で生じる発明。他の三つと比べ、二個発注したこれは特に誰の興味も引くだろう。

姿絵なんて何日も何日も時間と労力をかけて完成させるものを、たった一瞬でできてしまうなんて夢のような品だ。

大きさは額縁には足りない封筒程度の大きさだけれど、手元に持っていられるというのは大きな利点だ。これなら特殊能力に興味が薄い国にも別大陸にも性能だけで売れるだろう。自分の大事な時間を切り取り残したい気持ちは貧富も立場も関係ない。


来週船を出す際に交易先に見せるか。ちょうどフリージア王国に興味を持つなかなかの大国だった。もしくは逆に我が国へ来るように、一斉に目ぼしい国へ招待状を送るのも良いかもしれない。

フリージア王国の発明を五品、しかも目玉商品はと情報を小出しにするだけでもきっと一斉に集まるだろう。ただでさえ市場に出にくいフリージア王国の発明を逃したくない国は多い。大国フリージア王国よりも、交易を直接行っている我が国の方が各国も集まりやすいだろう。

それともいっそ大規模な商い場所へ行って出してみるのも面白いかもしれない。ちょうど良いオークションも今度ある。上手くいけばこの発明を発端にアネモネ王国でも新たな交易先を開拓できる。きっと四種それぞれ出しても、この発明が一番値が競りあがる。

単純な利益を考えるなら後者二つか。ネイトも高く売って欲しいという希望だった。……高くなり過ぎてもきっとご両親が困るんじゃないかと思うけれど。


ネイトの発明速度から鑑みれば、最初は定量で売り捌いて少しずつ希少性を上げ各国へ値段を吊り上げる手法も良い。この発明なら噂が広がればもっと欲しがる人間も増える。でも、一気に欲しがる人間が増えると、その内ネイトが発明数を増やしたいと言い出す可能性もある。

フリージア王国にもネイトの発明の噂が広がる日はきっとくる。そう考えるとやっぱり一気に商品情報を拡散させるよりも、最初は「ある〝らしい〟」程度の噂で留めるように売る方が良いか。

こんな品が売りに出された、特殊能力による発明らしいと。伝説の品、となれば希少性も価値も思うがままだ。


「〝稀代の天才発明家〟と〝若き天才による革命〟……どっちが興味を誘うかなぁ」


売り出し文句をぼんやりと今から考える。


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― 新着の感想 ―
[良い点] レオン王子って、キャッチコピーも自分で考えてたんですね!!
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