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それからの事、浩一は休日になると博美の家の周りを歩いていた。博美がとても気になるからだ。このままでは博美の身に何かがありそうで不安だ。
「どう?」
見回りをしているのは浩一だけではない。千沙と理沙もしている。2人も博美が気になってしょうがない。同級生の理沙は特に気にしている。
「全くわからんわ」
と、博美の家からある声が聞こえた。何やら怒っている声がして、その後、博美が泣いている声が聞こえる。明らかに何かをされている声だ。
「あっ、この声や!」
浩一と一緒にいた近田はその声に聞き覚えがあった。これは再婚した夫の声だ。何回かあった事があるので、知っている。
「ほんま?」
「うん」
浩一もその怒号を聞いていた。何かされているようだ。これは早く家に入って、その理由を探らないと。
「一体何やろ。気になるわ」
「入ってみよや」
浩一と近田は博美の家に向かった。その理由を探るためだ。博美の両親はその事を全く知らない。
「ごめんくださーい!」
その声で、博美の両親はハッとなった。また苦情をもらいそうで不安だな。自分たちが息子を虐待しているのは、誰にも秘密にしようと思っていたのに。まさかバレるとは。
「はーい!」
近田の声とともに、怒号が消えた。
「止んだわ」
博美の父は玄関を開けた。そこには浩一と近田がいる。どうしたんだろうか?
「最近、家の中で音がするんですけど、何かあるんですか?」
「いや、何もないで」
だが、博美の父は何も知らないような表情だ。明らかにおかしい。これは博美の父の声だ。よくわかっている。なのに、どうして何もないと言うんだろう。
「そうですか・・・」
そこに、博美の母がやって来た。博美の母は怖い表情だ。
「どないしたん?」
「博美くんの顔のアザが気になりまして」
浩一は気になっていた。その理由を知りたかった。ひょっとして、両親が虐待をしているんじゃないかと思った。
「そう、ですか・・・」
近田はあきらめようと思った。だが、とても気になる。あきらめきれない。
「ど、どうしたんですか?」
博美の母は戸惑っている。わかってしまったのでは?
「いや、本当に何もないて・・・」
博美の母は何もないと言っている。だが、明らかに怪しい。嘘をついているように見える。
「そうですか・・・。ありがとうございました」
「いえいえ」
2人はため息をついた。やっぱりわからなかった。わかりたかったのに。どうすればその理由がわかるんだろうか? 博美に聞くしかないんだろうか?
「やっぱりわからんかった」
「そっか・・・」
近田はため息をついた。どうすればいいんだろう。毎日そうだ。何とか博美が真実を話してくれないと進まない。
「博美くんを問い詰めてみよや」
浩一の意見に、近田は納得した。そうすれば、何か真実を言ってくれるんじゃないかな?
「そやね」
浩一は再び玄関に向かった。とりあえず、今日のお昼、お好み焼き屋に誘おう。そして、一緒に食べよう。そうすれば、何か重要な事を言ってくれるかもしれないな。
浩一は玄関をノックした。すると、博美がやって来た。また浩一だ。今度は何だろう。どうしてまた来たんだろうか? やはり自分が気になるから、またやって来たんだろうか?
「博美くん、来週日曜日の昼、お好み焼き食べん?」
「えっ、どないしたん?」
それを聞いて、博美は驚き、戸惑っている。どうして誘うんだろうか? 先輩の誘いには断れない。行くしかないな。
「ええから」
結局、浩一はその理由を話そうとしない。でも、何か重要な事のように見える。行かなければ。
「わ、わかったて・・・」
「俺の家の前で待っとるからな」
「うん」
浩一は去っていった。どうしてお好み焼きに誘ったんだろうか? 2人でお好み焼きを食べたいと思ったんだろうか? それとも、部活に関する何か重要な話だろうか?
来週日曜日の11時30分ぐらい、浩一は博美を待っていた。今日は一緒にお好み焼き屋に行く予定だ。その中で、博美が何をされているのか、聞く予定だ。
「もうすぐやな・・・」
と、そこに博美がやって来た。博美は服がボロボロだ。どうしてこんなにボロボロなんだろうか? もっとまともな服はなかったんだろうか? こんなボロボロな物ばかりしかないんだろうか?
「あっ、博美くん!」
浩一は手を振った。すると、博美は手を振り返した。
「坂井先輩・・・」
2人は待ち合わせ場所で一緒になった。これからお好み焼き屋に行こう。
「行こか?」
「うん」
2人はお好み焼き屋に向かった。




