第十九話
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小休止が終わり会議が再開された。
「では続きまして、次の戦争の決戦兵器となる航空母艦についてとなります」
技術部員に現在の空母の状況と艦形図を貼り付け説明を開始する。
「現在保有している空母は3隻、赤城・加賀・鳳翔となります。まだ空母は発展途上であり、数々の試行錯誤がなされている状態です」
「よし、前置きはいい。これから空母はどのようになっていくのかね? 」
艦政本部長めぇ……
「…… はっ、空母は今後、現在のような多段甲板ではなく、この図のように単層甲板が主流となります。この飛行甲板の下は多段式の格納庫となり、飛行甲板へのエレベーターをこのように前部と後部に設け、発着艦をスムーズにおこなうようにします。これは現在鳳翔や1万トン級空母がこの形式です」
何人かが頷いている。
今のところ技術的にはこの全通甲板が新しい感じだからね。
「ふむ、たしかに洋上の滑走路だなこりゃ」
どこから声が聞こえる。
たしかに洋上に浮かぶ滑走路だ。
「この形式は、艦自体が風上へ全力走行する事で航空機の浮力を稼ぎ発艦を助けます。また、着艦も真後ろから艦に近づく為、視認がしやすく着艦しやすいのが特徴です」
「なるほど、たしかにこれであれば航空機の運用は進みますな。しかし、大尉はその先を見ていると思うのだが?」
俺は発言をした士官の方を向き、頷く。
「はい、その通りです山口中佐。この資料を見ながら説明をいたします」
黒板脇にまたもや図面を貼り付ける。
貼り付けた図面には、ニミッツ級の航空母艦の側面・上面図が書かれていた。
「なんだね?この変な形の甲板は」
「今説明させて頂きます、松本中尉。この形の甲板形式は1950年以降に発案されたアングルド・デッキと呼ばれる飛行甲板形式です」
松本中尉は俺に名前を呼ばれた事を驚いてたな。
中尉は空母龍驤の設計に携わった人物だ。
だからこのアングルドデッキの形を「変」と形容したのだろう。
まー、松本中尉は参謀本部の大尉に、設計部の一中尉の名前なんて知らないと思っていたんだろう。
「このアングルド・デッキは艦の中心線から9度角度をつけ、着艦用の専用甲板をつける事により着艦をより安全に行う為に考案されました」
俺は上部からの甲板図を指揮棒で指し示しながら説明を続けると、突然どこかを叩く音が鳴り響く。
「なるほど! そうすれば着艦と発艦が同時にできるわけだ!」
声の主は先ほどの松本中尉。みんなが中尉に注目すると「すみません」と縮こまってしまった。
そりゃまー。高官がいる中で、一介の中尉が突然騒ぐなんて顰蹙ものだし、ここは一つフォローをしておかないといけないか。
「松本中尉の言う通り、イギリス海軍はこのアングルド・デッキを採用する事で、着艦と発艦が同時に行える運用を想定しておりました。このように着艦後に艦橋前部のエレベータ2機を使い格納庫へ収納し・整備と補給を受け、再度艦橋前部のエレベーターを使い前部甲板から発艦を実施しると言う運用が考えられていました」
松本中尉を見ると、俺の説明により萎縮は消え、このアンクルド・デッキの性能にほれ込んでいるようだった。
しかし、この運用方法は日の目を見る事はなかった。
理由は艦載機が高速化・大型化した事と、アメリカは空母を航空機の基地とは考えず、キャリアー=運搬機とみなしていた事も理由にあげられる。
つまり甲板上も格納庫の一部として考えていたのだ。
甲板上も格納庫と考えれば、艦内の格納庫に全ての艦載機を入れる必要はなくなる。
しかし甲板上に艦載機を置いておけば、着艦時にトラブルの原因とるなる。
そのトラブルの確立を大幅に減らすのが、このアングルド・デッキと言う形式だったようだ。
因みにアメリカ海軍、原子力空母・ニミッツ級の1隻当たりの作戦可能機数は約70機。
しかし、格納庫へ収納できる機数はそのうちの40機程度だと言う話しだ。
うんちくが長くなったが、このことは説明をしない。
しても仕方がないからだ。
「しかし、このアンクルド・デッキを採用するには、ある技術の確立が必要となります」
俺の言葉に緊張する技術者達。
「その技術はカタパルト、射出機です」
「大尉、カタパルトならすでに我が艦艇に装備されていて、実際に使用しておりますが……」
艦政本部の士官がそう呟く。
「えぇ、火薬式カタパルトの事ですね。火薬式カタパルトは、全通甲板の空母には不向きな方式なのです。それに火薬式カタパルトでは連続しての射出には向きません。航空母艦を運用するにあたって必要な性能は、連続して安定的に射出できる事が必要です」
俺はここでいったん言葉をくぎり、艦政本部・民間技術者の見渡す。
「そのカタパルトは、蒸気を使用します」
ここから蒸気カタパルトの基本的な概要を技術者達に説明した。
蒸気カタパルトの技術はアメリカ海軍しかもっておらず、開発は困難と思う。
しかし、かの酸素魚雷の実用化を成し遂げた熱意がある技術者達がいるのだ、きっと実用化してくれると信じて、この技術の仕様を説明する。
「なるほど、それで大尉は先ほど重油缶と蒸気タービンの性能向上を指示していたのかね? 」
艦政本部の士官がそのように問うてくる。
「はい、基本的なエンジンの性能向上はもとより、これからは航空機が主戦として地位をえます。それに航空機はこれからもっと早く・大きくなっていきます。その為のカタパルト装置が必要になってくるはずです。基本性能の向上は、応用が利くのです」
「よし、この案は了承する」
艦政本部長の一言でカタパルト技術開発(蒸気缶及びタービン開発)が決定された。
「所でその図の空母だが、どのくらいの大きさになるんだね? 」
「はっ、このニミッツ級と呼ばれる航空母艦は、全長330m・船体幅41m・発着甲板幅が76.8mとなっております」
その数字を聞いてどよめく会議室。
「そんな巨大な艦を作れる造船所はないぞ……」
「作るのです。新たなドックを」
俺はどこからか聞こえてきた言葉にぶつける。
「もちろん空母の為だけにドックをつくるわけではありません。戦争の為に軍艦を、戦争が終われば民間船を作ることになります。けっして無駄ではありません」
「なるほど……ドックの建造を申請してみよう」
「ありがとございます、本部長」
俺は一礼をし、航空母艦への道筋をつけたのだった。
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