第十七話
いよいよ海軍の艦艇にメスを入れます。
いやぁわくわくしますね。
「今日はみんなご苦労だ。これから海軍の艦艇についての会合を開催する」
今、艦政本部・藤田部長が会合開催についての挨拶をしている。
俺は用意をしている資料を確認しつつ、本部長の挨拶を聞いていた。
「まず10月に海上警備隊が発足し、我々が保持していた旧式の軍艦の一部を海上警備隊に譲渡する事が決定している」
海上警備隊発足により、海軍は峯風級以前の駆逐艦25隻、天龍型軽巡洋艦2隻を海上警備隊所属に転籍させた。
これらは海上警備隊用にすべく、各鎮守府にて順次改装中である。
その為、駆逐艦の新規配備についての話しも含まれる。
「(しかし、この編成案を出したらまた反発されるんだろうなぁ……)」
と、若干憂鬱気味になりながら本部長の挨拶を聞き流す。
これからの建艦のプランも立てた。艦を作る上ので技術構築のプランもある。
これをどこまで受け入れられるかの説明が肝となる……か。
「それでは今後の建造について、統合作戦本部の三好大尉から説明してもらう」
俺は席を立ち全員の正面に立ち、敬礼をおこなう。
「統合作戦本部・三好です。まず現在保有している艦について確認させていただきたく思います」
俺は技術部士官に対し、現有艦名をあらかじめ記載してある大きな用紙を黒板の隣に貼り付けさせた。
・戦艦
金剛型:金剛・比叡・榛名・霧島
扶桑型:扶桑・山城
伊勢型:伊勢・日向
長門型:長門・陸奥
・重巡洋艦
古鷹型:古鷹・加古
青葉型:青葉・衣笠
妙高型:妙高・那智・足柄・羽黒
1万トン級:4隻建造中
・軽巡洋艦
球磨型:球磨・多摩・北上・大井・木曾
長良型:長良・五十鈴・名取・由良・鬼怒・阿武隈
川内型:川内・神通・那珂
夕張型:夕張
・駆逐艦
神風型:神風・朝風・春風・松風・旗風・追風・疾風・朝凪・夕凪
睦月型:睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・長月・菊月・三日月・望月・夕月
吹雪型
特I型:吹雪・白雪・初雪・深雪・叢雲・東雲・薄雲・白雲・磯波・浦波
特II型:綾波・敷波・朝霧・夕霧・他6隻建造中
特III型:4隻建造中
「ごらんの通り、海軍が現在編成できる戦闘艦は戦艦・10隻、重巡・8隻、軽巡・10隻、駆逐艦・35隻、計63隻となります。他にも補給艦等がありますが、はぶかさせて頂きます」
海軍高官や艦隊司令官達は、俺が提示した資料に頷いている。
「後、航空母艦として鳳翔・赤城・加賀の3隻と現在1隻を建造しています。よろしいでしょうか」
艦政本部長が頷くのを確認する。
「さて、我が国は日露戦争における日本海海戦に勝利し、帝国海軍は世界に名を知らしめました。そのおかげで帝国の建造技術は大幅に進歩し、ビック7とまで呼ばれる軍艦の開発に成功しております」
まず最初に日本の軍艦建造技術を持ち上げる。
それに満足そうに頷く海軍高官達。
だがここから巨砲主義から修正すべく言葉を紡ぐ。
「しかし、転機が訪れます。我が国でも研究がなされている航空機です。この航空機を活用した戦略が今後の主流となり、戦艦同士が主砲を撃ち合う機会は無くなっていきます」
「では君は今後、戦艦は不要と考えているのかね? 」
連合艦隊司令長官が厳しい顔をしながら問いかけてきた。
その他の艦隊司令官達の雰囲気も先の説明で一変している。
「いえ……矛盾しているとは思いますが、自分は戦艦は必要だと考えております」
「……よくわからんな。もう少し詳しく説明してもらえるかね」
俺の発言に困惑しているようだ。
艦隊司令官や参謀達はお互いの顔を見合わせながら困惑しているようだった。
「はい。ご存知の方は少ないと思いますが、自分は今から100年後の日本からやってきました。皇紀で言うと2690年です。その時代の戦闘とは誘導ミサイルとい言う兵器が主となり、どんな艦砲より射程は長く、命中率もほぼ100%と言う兵器で戦闘をしておりました。大口径の主砲を備えた戦艦はどの国も保有すらしていない時代なのです。誘導ミサイルと言う兵器を実用化するにはまだまだ技術力は世界的にも足りておりません。しかし、航空機はすでに開発されています。これからものすごいスピードで開発が進み、主戦力としての地位を確立するのです」
「……ではこれから航空機はどのように進化するんだ? 少し具体的に教えて貰いたい」
しばしの沈黙の後にこう質問された。
質問をしてきた人物を見ると、山口中佐だった。
山口中佐は元々俺の事を知っており、誰よりも立ち直りが早かったようだ。
「史実であれば航空機は皇紀2600年に画期的に航空機が開発されます。最高時速530km弱・航続距離約2,200km・武装は20mm機銃2丁と12.7mm機銃を装備している性能を持っていました」
あちらこちらから感嘆の声があがる。
「すごい性能だ」とか「それがあればはるか遠くから一方的に攻撃できる」とか「本当にできるのか」とか。
俺は「しかし」と言う強い言葉でざわつきを押さえ、話しを続ける。
「この素晴らしい戦闘機にも欠点が多々ありました。それは空軍の方で解決させる予定ですので、今回は省きます。それを踏まえ、航続距離1000km、500kg爆弾及び250kg爆弾2発を装備、又は魚雷を搭載できる航空機を100機以上と言う集団運用をできるとすればどうお考えになりますか? 」
「……おおいに研究価値がありますね。そうなると空母が必要になりますか」
としきりに艦隊司令官や参謀達が話し始めるが、俺はその会話を止める。
「すいません、本来の内容にもどらさせて頂きたいのですがよろしいか」
長官がすまなさそうに頷き、俺は本来の内容に戻す。
「それで戦艦の必要性いついてになります。現在連合艦隊旗艦になっている長門を例に出させていただきます」
俺は黒板に向かい、長門の主砲の性能を書きながら話しを続ける。
「長門の主砲は四十五口径三年式41cm砲、最大射程30,300m、五式徹甲弾で砲弾重量約1,000kgとなっており、長門は連装砲4基を装備しております」
艦政本部長が大きく頷いている。第一艦隊司令と兼任している連合艦隊司令長官も納得の顔だ。
当然。この会議を開くに前に艦政本部に資料を取り寄せたのだから。
「現在長門の主砲発射間隔はおおよそ1分必要であり、1時間の投射量はおおよそ720発。砲弾重量は720,000kg、720tに及びます。つまり今後航空機の性能が上がり、500kg爆弾を装備できるようになっても1440機の航空機が必要となり、これは現実的ではありません。これだけではありませんが、戦艦の主砲とは対地への効果がもっとも高い動く砲台なのです」
あちこちから感嘆の声、あるいは唸る声が聞こえてくる。
感嘆の声は単純に弾薬の投射量を驚く声。
唸る声はおそらく艦隊決戦ができない不安ではないだろうか。
「ではもう艦隊決戦は無い……と言う事なのかね? 」
「機会は激減するでしょうが、完全に無くなる事はないと考えております。その為には戦艦の改修が必要となります。嶋田参謀長」
さすがに一ヶ月以上軍に籍を置くと、だいたいの高官は把握できていた。
元の時代にいた時も防衛大学で写真を見ていたが、大体は最後の階級の時だもんな。
若い時なんかわからないよ。
さて、気を取り直して続けないとな。
「それでは今後の艦の編成案の発表と提案を行いたいと思います」
※ご意見・ご感想をお願いします。
んが、ここも誤字が……




